【兵庫区】年末の買い出しはここ!神戸の台所・湊川「東山商店街」の下町民パワーに卒倒しそうな件

「B面の神戸」とも呼ばれ、ステレオタイプな“オシャレな港町”像が全く通用しない神戸市兵庫区のド下町オールド歓楽街「新開地」のアーケード商店街を越えて山手幹線を跨いで湊川商店街へと抜けていくと、その先にさらに続いているのが「東山商店街」である。

明治末期に埋め立てられた天井川に寄り添うように長年この地に栄えてきた、神戸市内でも屈指の歴史を誇る下町の台所…戦後の闇市がルーツとも言われるが、それ以前からあるようにも思えるほどに勢いと活気に満ち溢れる、年がら年中沢山の買い物客でごった返す商店街だが、特に年の暮れの買い出しラッシュに訪れるととんでもない混雑に襲われる。

凄まじい熱気に包まれた下町の台所「東山商店街」

そんな東山商店街のアーケードに一歩足を踏み込んでみよう。その視界に広がるのは夥しい数の店舗と陳列された品物の数々、そして店の看板からアーケードの屋根から飛び込むゴッテゴテの色彩、これでもかという視覚的情報量とそこを往来する買い物客の多さにのっけから圧倒される。

東山商店街をはじめとして、周辺の商店街や市場をひっくるめて「神戸新鮮市場」と総称している一帯であるが、その体感的な熱気は同じ神戸市内でも他の追随を許さないレベルである。生田川地域の「大安亭市場」なんかは結構ガツーンな感じにも思えたけども、ここはそれ以上だな。

で、案の定買い物客には高齢者が多いのと、よく見りゃ杖を突いて歩いていたり、手押し車だったり車椅子だったりと体の不自由な方々の姿もよく見られる。傍目には人混みが激しくて歩きづらいようにも思えるが、昭和の下町を生きた庶民の生活空間としては今どきなショッピングモールなんかよりも最終的にこれが理想形なのかも知れない。

たまたま年末の買い出しシーズン(12月30日)に東山商店街を訪れる機会があったのだが、商店街の通路は人だらけで歩く事もままならない、見ての通りの状況である。押し合いへし合いの買い物戦争があちこちで繰り広げられる。大阪で言う黒門市場、京都で言う錦市場に値する年末恒例の風物詩として関西ローカルのテレビニュースなんぞで放映されることも多い商店街だが、ここに限っては観光色皆無。ほぼ現地人オンリーである。

途中から商店街の道幅も急に狭くなる。もうギッチギチ過ぎて大変です。ちなみに先の写真は年末のものですが、この写真を撮影したのは年末ではありません。夏場の平日のものです。つまり年中人だらけという事。神戸もあの震災以来めっきり寂れて人口減ってて景気も悪いですとは言うけれども、この場所だけは例外のようだ。

あまりに雑多過ぎる商店街の光景に、むしろここは日本国内なのか?と錯覚に陥るほどのテンションを感じる。隣の韓国に旅行に訪れた際、ソウルや釜山各地の商店街も訪れたが、あの雰囲気にやたらソックリなのよな。韓国人旅行者が関西に親近感を持つ理由が少し理解できた気がする。

東山商店街の途中にある広場。ここだけアーケードの屋根が放射状に広がり大きな傘のようになっている。その下では買い物客や暇そうな地元民の爺さん婆さんの溜まり場になっていた。この横っちょが丁度市営住宅が立ち並ぶ一角で、当地もまた福祉の街の色彩が強い。

東山商店街自体は全長400メートル程度のアーケード街に過ぎないが、湊川商店街など他の商店街も加えて見る事になるので、ここに辿り着くまでに圧倒されてしまう。訪問の際はしっかり時間を確保しとかんと、後悔しまっせ。

やたらめったら文字情報が多すぎる東山商店街の店舗たち

そんじょそこらの普通の商店街ではない東山商店街にある店舗の数々、商売人も最初から本気を出しまくってくる。例えばこの肉屋、商品よりも店先にベタベタ貼りまくられた真っ黄色のポップ色紙が客の視覚を圧倒する。「今日のお肉は何にしようかしら…?」と悠長に構えて見ていられない勢いだ。色紙一枚あたりの文字量も非常に多い。

肉屋も本気なら八百屋も本気である。「幸福の黄色いハンカチ」ならぬ黄色い張り紙攻撃。場所柄、各業種ごとに競合店も多いので安売りしなければ客が付かないのは道理であるが、見た目のビジュアルでも勝たなければ太刀打ち出来ないのであろう。

しかし関西の下町の八百屋さんってなんでキャベツのことを「キャ別」と書くんでしょうか。何が別やねん。

東山商店街の買い物客の胃袋を満たすド下町フードの数々

夥しい数の買い物客が訪れる東山商店街にはあれこれお安く飲み食いできる店も充実しまくっている。柄杓で掬って出してくれる超絶オールドスタイルなひやしあめとレモン水がそれぞれ一杯50円の「鼻知場商店」なんかはかなりソウルフード感漂ってませんでしょうか。隣のおかず屋も渋いね。

何気ない豆腐屋でも店先で豆乳スタンドを置いてあるところが関西的な気の利かせ方。下町全開の商店街では数少ないヘルシー志向フードである。しかも一杯90円也。こちら東山商店街ユーザーにとっては意識と値段のクソ高いスタバのソイラテなんぞ百万年早いのである。

コナモン部門では隣接する市場「マルシン」にある「クレープハウスくれよん」もなかなかキョーレツな佇まいをしておられます。本業はクレープ屋なのになぜかそれよりも「たこ焼・お好み焼・そば焼」をプッシュしまくっている件。終始こんな勢いでは買い物を終わらせる前に余裕で小腹が膨れてしまうだろう。

さらに店先で持ち帰り用の焼きそばを販売する「お好み焼てんてん」。手相占いも兼業でコナモン焼いておられます。店の外側の目立つ位置に「となりの人間国宝さん」ステッカーが貼られている。地元のテレビ露出は常連のようだが…

そんな「てんてん」の店先のお持ち帰りコーナー、ブタそば焼200円、オムそば焼300円でっせ…安すぎませんかこれ。しかも正月前ともあって何故かおせち料理の具材らしきものがついでに売られている件。まあなんともアバウトでございますわね。ちなみに神戸では“焼きそば”とは中華料理屋の出す料理で、こうしたコナモン屋で出しているのはひっくり返して「そば焼」と称する独特の習慣がある。しかし写真の通り、“焼そば”なのか“そば焼”なのか、どちらが正しいかなどいちいちこだわるタチではない。

神戸にもある串カツ文化「稲田串かつ店」

しかし数ある商店街フードを押しのけて一際存在感を放っているのが、東山商店街の最奥部に店を構えるこちら「稲田串かつ店」であろう。一本90円オンリーで串カツ各種を提供しているが、観光客が“るるぶ”片手に行列するような大阪は新世界あたりのそれとは全く様子が違い、子供から老人まで関係なく食っている、ちょっと特殊な空間だ。

上半身が隠れる暖簾一つ跨いでピットインという気の短いスタイル、取った串は二度漬け禁止のソースを漬けたら一歩引いて食らい、垂れるソースは足元のダンボールに垂らすのが流儀。年末の時期にはこの大盛況ぶり。営業開始の朝10時から酒を持ち込んで出来上がってるオッサンまで居るようだ。(店内ではソフトドリンクの販売はあるが酒は売ってない)

よく見りゃ稲田串かつ店だけに限らず、このようなスタイルで営業している串カツ屋が他にもあった。大阪特有のものに思われがちな串カツという食文化は、神戸は東山商店街で独特な進化を遂げているようだ。

稲田串かつ店の先を抜けた所でアーケード街が途切れ、目の前には新湊川が流れているのだが、その左手側を見るとさらに「マルシン」と称するビル型市場がズドーンと奥に向かって伸びているのだ。まだまだ先があるんかい…

こちらマルシンも同様に生活感漂いまくりのローカルな市場空間が広がっている。ひとまず東山商店街を抜けてマルシンを抜けて、また一周して…という回遊魚のようなお買い回りコースを辿る事ができる。キリがありません。このへんで締めときます。


The following two tabs change content below.
DEEP案内シリーズ管理人。大阪ベイエリアの貧民窟育ち。独自のひん曲がった視点で街歩きを続けております。2008年より上京。関西に留まらず全国、海外に取材対象を薄く広く伸ばして来ました。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。
トップへ戻る
Copy Protected by Chetan's WP-Copyprotect.