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和歌山・雑賀崎の生ける廃墟ホテル「七津別館 七洋園」に泊まったら想像以上の昭和空間だった (全3ページ)

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和歌山県の観光と聞いて今時では何を思い浮かべるかというと、南紀白浜、那智勝浦といった県の南側ばかりで、それはやはり南紀白浜空港の存在に依る所も大きいのだろう。鉄道は依然として在来線しかなく関西の他の都市からも離れた地理上、やはり和歌山県自体取り残された印象が強い。

和歌山市 雑賀崎

そんな和歌山県の中でも「昭和の行き遅れた観光地」を地で行くのが和歌山市南部にある「和歌浦」と呼ばれる地区である。古くは万葉集にも詠まれた由緒正しい景勝地で、豊臣秀吉が築城の際「和歌浦」と城下町の「岡山」の地名をくっつけて「和歌山」という地名を名付けたという説が有力とされている。つまり和歌山県の県名発祥地でもある。和歌浦の中でも特に雑賀崎あたりの西側に奥まった一帯を「奥和歌浦」と呼び、今回我々がやってきたのはそこ。

和歌山市 雑賀崎

和歌山県の歴史においても相当重要なはずの地域がこの和歌浦なのだが、この土地が観光名所として栄えたのは昭和の中頃までの事。明治時代から1950年代までは新婚旅行のメッカとされ観光開発も盛んに行われていたが交通機関の発達で次第に南紀白浜や九州(特に皇太子夫妻が新婚旅行先に訪問した宮崎の日南海岸)あたりにお株を奪われ、70年代以降は衰退の一途を辿るようになった。和歌山港一帯の工業化による景観破壊に加えそもそも温泉資源が無い事、観光地としての陳腐化が衰退に追い打ちを掛けたというのだ。

和歌山市 雑賀崎

今もなお奥和歌浦・雑賀崎の観光名所として開園している「番所庭園」。三方を断崖絶壁に囲まれた番所ノ鼻に美しい日本庭園がこしらえられ、晴れた日にはご覧の通りの開放的な眺望にありつける。晴れた日には紀淡海峡がパノラマ状態で拝めて、対岸の淡路島もそりゃ良く見える。入場料600円必要ですが。

和歌山市 雑賀崎

受付のところに「科捜研の女」だとか「水戸黄門」のロケ地らしく俳優の写真やら記念品が誇らしげに飾られてるんですが、確かに悪者が追いつめられて最後に罪を白状させる場所には適していそうなロケーションだ。白浜の三段壁には観光客がうじゃうじゃ居たがここは誰もいませんね…

和歌山市 雑賀崎

観光地としても相当崖っぷちに追いつめられた感がある和歌浦だが、番所庭園の敷地からも何やら廃墟ホテルっぽいものが見えますね…このアングルからではどう贔屓目に見ても廃墟なんですが、あの建物は何だというと結論から申し上げると「現役で営業しているホテル」なんです。

和歌山市 雑賀崎

そんな気になるホテルの入口までやってきました。見るからにくたびれた佇まいで地上三階建てになってます。建物には「七洋園」の文字。正式名称は「七津別館 七洋園」と呼ぶそうだが、実は今回奥和歌浦・雑賀崎に足を運んだのは、この七洋園に泊まる為である。ともかくここについては以前からネット上でも妙な噂や評判があれこれ立っていて興味深い。

和歌山市 雑賀崎

一例を挙げるとトリップアドバイザーの口コミ欄にあまりに辛辣なコメントが連なっているところとか…

和歌山市 雑賀崎

Google先生ですら「心霊」だの「廃墟」だのかなり厳し目の検索候補を挙げてくるあたり、のっけから試されている気がしてなりません。

和歌山市 雑賀崎

通常、こうした昭和の行き遅れた系旅館というのはネットの旅行サイトを使うような今時の「綺麗好きな」客層が訪れるきっかけすらないものだが、七洋園が何故このような状態になるかというと、フツーに「ヤフートラベル」だとか「るるぶトラベル」だとか各種予約サイトで「ネット上で」宿泊予約できてしまう上に、和歌山市観光協会の公式HPにもきちんと掲載されているれっきとした旅館だから、どんな場所なのか下調べもせずうっかり予約しちゃう客が結構いるのである。

和歌山市 雑賀崎

で、夜の奥和歌浦・雑賀崎にやって参りました。和歌山市街地からは南西に約5キロ離れており車で片道20分。真っ暗な中に朧げな照明を浮かべてそびえる幻想的な旅館の全貌を目にして早くも腕に鳥肌が立ち、背筋に寒気が走り始めました。三階部分は使っていないらしく全消灯しているので、この写真からでは二階建てにしか見えません。

和歌山市 雑賀崎

「七洋園」と書かれた真っ赤なネオン看板のみを拡大。フォントが渋いわ色も不気味だわで雰囲気を盛り立ててくれます。ここを新婚旅行先に選ぶ酔狂なカップルがいたらそれこそ最高の経験になること請け合いであろう。この土地が新婚旅行のメッカだったというのはもう半世紀以上前の話なのだ。

和歌山市 雑賀崎

昼間に建物を見た時には本当に営業しているのか疑わしい感じがしたが、夜はこうして明かりもついているし「歓迎」の看板もベタ過ぎて素晴らしい。全然歓迎されてる雰囲気ないんですが…一応入口は自動ドアになっているが中に入ると物凄いガラガラ音と共にドアが開く。古い、全てが古い…フロントに居た宿主の親父さんに快く迎えられ、そのまま二階の客室に案内される。宿代は前金精算で一人5,500円。素泊まりかつ温泉でもないこの年式の宿にしてはそれなりにお高い。

和歌山市 雑賀崎

ネット上で散々な評判を聞いた後に先入観バリバリでやってきたので、案内された部屋が割とまともだったのには安心した。せいぜいハエが飛んでいたり虫が多いようなので殺虫剤が部屋に置いてあったり、布団のサイズが昔仕様でやたらと小さく、図体のでかい人間は足がはみ出してしまうくらいが問題点か。

和歌山市 雑賀崎

客室にあるトイレと風呂はこれ。やはり昭和40年代以前のタイルビッシリ系ですね。和歌山県は下水道普及率がダントツに低く、ここもそのせいか浄化槽あたりから逆流してくると思われるガスが充満して臭い。風呂場の湯はボイラーがとろ臭いせいか30秒くらい待たないとお湯にならない。

和歌山市 雑賀崎

窓際に面した小部屋にはお決まりの椅子とテーブル…しかしテーブルが80年代の麻雀ゲームの筐体だったりするところが渋い。古びた純喫茶でもこういうのたまーに見かけますが、試しに電源コードをコンセントにぶっ刺してプレイを試みたものの、音だけしか鳴らずモニターが完全に死亡していてプレイ不能だった。

和歌山市 雑賀崎

さらに客室内にはテレビや冷蔵庫(1982年製のめっちゃ古いやつ)もあるし、エアコンも問題なく使える。正直に言うと別府のあそことか、佐世保のあそことかに抵抗無く泊まれる人間ならまず不満は出ないレベルだ。夜も遅いのでひとまず寝てから翌朝館内を探検することにした。

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DEEP案内シリーズ管理人。大阪ベイエリアの貧民窟育ち。独自のひん曲がった視点で街歩きを続けております。2008年より上京。関西に留まらず全国、海外に取材対象を薄く広く伸ばして来ました。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。首都圏を中心に飛ぶような売り上げを記録し増刷決定。
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