大阪市鶴見区中央環状線沿い、日曜朝のカオスな光景「中国人朝市」見物(2007年版)

大阪市鶴見区

このレポートは大阪市鶴見区の「中国人朝市」について2004年~2007年当時に取材した写真を元に書かれた古いレポートです。10年以上前とは違い現在では違法DVDを販売する屋台や路上の不法占拠といった状況は無くなりつつあります、あと文章が拙くなっておりますがご了承下さい。なお、2013年に再訪した時のレポートもこちらにございます

大阪市の東の端、鶴見区。1990年に開催された「花の万博」で整備された鶴見緑地をはじめ、大阪市内では比較的閑静で、それでいて都心からも近い住宅街である。

そんな鶴見区の一角、大阪中央環状線と近畿自動車道が南北に走る、大阪東部の道路交通の動脈に、いつしか日曜の早朝だけ、不思議な光景が見られるようになったのは、入管法が改正された1990年代からだ。

大阪中央環状線の側道にギッシリ並ぶ違法駐車の列。歩道上には謎の屋台料理や出店が現れ、それを目当てに大勢の人間がやってくる。その場は即興の市場と化す。

いくら出店禁止の看板を立てて注意を促しても、まるで効果がない。よく見ると、出店の店主も、買い物にやってくる人々も、それらは全て中国人。いつもその道を通りがかる人、周辺住民、この謎の中国人朝市がなぜこの場所で行われるようになったのか、みんな事情を知らないでいた。

中国人朝市会場となるのは、鶴見区安田・茨田大宮、大東市諸福の大阪中央環状線沿いの歩道、200メートル程度のエリア。この通りに唯一あるディスカウントスーパーが朝市の中心地だ。名前こそ日本語のスーパーだが売ってあるものは中国人向け食材ばかり。シャンツァイやら、板豆腐やら、中国人にはお馴染みでも日本人は見た事もないものばかり置かれている。他にも10キロ2000円の米とか、激安商品も数々。

鶴見区に隣接する門真市にある広大な府営住宅「門真団地」。そこが中国残留孤児の受け入れ先になった。中国からの移住者が増えるにつれ、中国人朝市は自然発生的に増えだした。中国残留孤児は、現在の中国東北部の黒龍江省などにあたる旧満州の出身者がほとんどである。


終戦後そのまま中国から帰国できなかった日本人孤児が中国人家族の養子として育てられた、そういうケースであるというのが通例なのだが、戦後半世紀以上が経過していて、中国残留日本人の実態把握が難しいことを利用して、中国残留孤児に成りすました中国人が日本に密入国する口実にも使われている問題もある。

鶴見の中国人朝市は、まさに中国本土で見かける朝市と全く同じ様相を呈していた。この路上肉屋、食品衛生法などどこ吹く風だ。冷凍された豚肉が所狭しと並ぶ。一番強烈なのが豚さんの頭がまるごと晒し首になっているところだ。

豚の内臓だと思うがどれがどれやら…中国四千年の食の歴史は凄まじい。足のついたものは机と椅子以外は全部食べるというのが、中華料理の真髄である。

肉屋の主人が中華包丁を取り出して、地面にダンボールとまな板を敷いた上で肉を置いてバンバン叩きつけていた。とても、この日本の国で行われている光景とは思えない。

中国人朝市では魚まで売られている。これも中国直輸入だろうか。真夏でもこのままの状態で売られているという。よく腹を壊さないものだと感心する。

彼ら中国人露天商は、早ければ夜明け前、4時半頃から屋台の設営を始める。朝6時半にもなれば、歩道は歩けないほどの中国人買い物客で埋め尽くされる。最も人が集まる8時頃をピークに、昼前には露天商も撤収するという。

付近は違法駐車地獄、騒音と臭いで周辺住民への被害は計り知れない。平時でもゴミや悪臭が残るだけではなく、挙句の果てには他人の敷地にウンコをしていくような不逞の輩もいるのだそうだ。そして、露天商は日本のルールなんぞ無視した、無許可販売のオンパレードだ。

めくるめく中国製品の数々。よく見てみると日本では販売許可が必要な酒やタバコが平然と置かれている。

さらには人の家の軒先まで使って商売をする中国人までいる。

午前7時でこの大盛況。中国人の朝は早い。売っているものは何も食品ばかりではない。CD・DVD、それから国際電話のカード、さらには仕事の仲介業者までいる。

これらのDVDロムなんか、見るからに正規製品であるはずがない。世界一のコピー商品天国、それが中国。さらには偽ブランドかばんまで販売をする業者までいるという。

まさに「なんでもあり」の中国人朝市。朝っぱらから喧騒にまみれて少し腹が減ったであろう。大丈夫、ちゃんと屋台料理も売っている。

中華揚げパン「油条」はこの大きさで1個100円という激安価格。中国人の朝の食卓には欠かせない一品。粥や「豆漿」と呼ばれる豆乳に浸して食べる。

他にも豆腐脳など、中国の朝食メニューが屋台料理で出されている。これが案外いい臭いだったりするのだが…やはり何の食い物かわからぬものに手は出せない(笑)そもそもこの人たちには日本語自体が通じないのだから、不思議でたまらない気分だ。

気がつけば、もう歩けない程の中国人密集地帯に変わっていた。そこらじゅうで屋台料理を食べる人間がいるので、捨てられた食べかすが腐敗しているのか、嫌な臭いが混ざっている。歩道全体がこのような状態になるから、通勤通学でこの道を使う住民はみんな車道にはみ出て通り抜けている。路上駐車とマナーの悪い中国人買物客にキレた人間が怒鳴り声を上げるシーンに度々出くわした。まさに一触即発の事態だ。

トラブルの巣窟と化す中国人朝市を見回りに、警察が常時待機している。とはいえ、時折控えめに駐車違反の買物客に注意する程度で物腰の低い対応だったので、対応の悪い警察に住民の不満が募っていたそうだ。

中国人朝市には「法輪功」のメンバーまで居るようだ。大陸では政治弾圧を受けている団体として有名である。なお、これらの写真は2004年秋に取材したものである。

当時は平気で中国人にカメラを向けて撮ったが、よく自分でもできたもんだと感心する。というのも、結構血の気の荒い人間も少なくないので、カメラを出すと中国人に絡まれることもある。ご注意を。最も屋台の数が増えたのは2005年夏だが、違法駐車や迷惑行為が深刻化し、近隣住民の苦情が相次いだため、警察の見回りが強化された。2006年4月の改正道路交通法施行が決定的になり、違法駐車への取り締まりが徹底され、朝市は急激に縮小傾向にある。

傍目から見て珍妙な、日本らしからぬ風景の朝市。ゲリラ的営業に実演屋台料理。本場中国そのまんまのリアルチャイナマーケットは一見魅力的で、メディアを通じてコアな観光客をある程度呼び込むことにも繋がったのだが、やはり現地に住む人々にとってはたまったもんじゃないという事情を知る事にもなった。

勝手に道路を占拠されて、路上駐車やりたい放題されて、道には食い散らかしの残飯やゴミまでほったらかしにされたら、誰でも怒る。

最初の取材から2年4ヶ月経った2007年3月。再び中国人朝市を訪ねた。

2006年の「ザ・ワイド」による全国ネット放送で中国人朝市が「かなり否定的に」報道され、大きな波紋を呼んだことが警察や行政の重い腰を挙げることに繋がったそうで、地元の鶴見警察署の巡回が増えて、路上駐車の取り締まりも厳しくなったことで、警察が撤収する頃を見計らって遅めの時間に店を開く商店主が増えたと聞いていた。

朝10時半である。とっくに朝市の時間にしては遅いのだが、現場の模様は2年前とはまるで違っていた。まず中国人の数が少ない。朝市の規模もはるかに縮小していたのだ。「ふくちあんラーメン」の敷地は中国人が店を広げないように店入口の全面をトラロープで防護。

その向こうの、かつては「食べ放題・バイキング」の店だった建物が、なんと中国人マーケットに変わっていた。どうも話し合いの末、商店主が店を買い取ったのだろうか。豚さん生首から揚げパンから、カップ麺の店まで、建物の中に好き勝手に店が入っている。

あと、これまでゲリラ朝市を展開していた歩道上は半分以上トラ柵で囲ってあり、中国人露天商の占拠を防いでいる。まるで天王寺公園の青空カラオケみたいな風景で笑えるが、こうするしか手段はない。中国人にも読めるように注意書きが書かれている。

あれだけ堂々と海賊版DVDやコピーブランド品の数々を売りまくっていた商店主達はどこへ行ったのだろうか。中国人の身になれば、見知らぬ外国にやってきて、恥を恥とも思わず商売に明け暮れる図太い根性は感心させられもするのだが…

中国人朝市で長らく巡回をしている警察官のおじさんに、この地域の現状を聞くことが出来た。やはり、ここ2年で急速に規模が縮小したとのこと。屋台は最盛期の2005年夏と比較しても10分の1に減ったという。

そこらじゅうに食べかすを撒き散らすわ、ゴミを放置するわ、生魚までほったらかしにして帰るわ、辺りに小便・ウンコを垂れるわ…周辺からの苦情が凄まじかったと。

迷惑を省みずに商売を続けることをいつまでも地元住民の感情が許すものではない。現在、露天商などは時間をずらすなどしてさらにゲリラ的戦略のもとに出店を続けているらしい。店舗フロアに入居している店だけが、細々と中国人朝市の痕跡を残すのみとなっていた。

このまま消滅を迎えるか、また別の場所が朝市会場と化すのか、それはわからない。
ただ言える事は、大阪には間違いなく中国人移住者が増えているということだ。

>2013年、中国人朝市再訪レポートに続く

参考記事
@nifty:デイリーポータルZ:潜入!中国朝市 in 大阪
YouTube – 中国人不法朝市報道


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