近年、都心回帰とやらでタワーマンションが増えたりして富裕層の割合が高くなってきているとは言うが、それでも大阪市は「貧民の首都」である。生活保護率は全国平均の3倍(49.5パーミル/2020年)、東京都23区中、大阪市同様に公営住宅がやたらめったら多く生活保護受給者が多い足立区ですらその3分の2程度の数値なので、いかに大阪市にビンボー人が多く暮らしているか、役所の示した数字が如実に物語っているわけだ。
特に大阪市の場合は高度経済成長期に地方の労働者を大量に受け入れ、その時の住民が一斉に福祉の必要がある高齢者と化していたり、釜ヶ崎という全国最大級のドヤ街があるという理由が大きい。しかし大阪市内にはその成り立ちからガチな貧民街としての歴史を辿ってきた地域がある。現在の日本橋の堺筋沿いにあった「長町」と呼ばれる木賃宿と貧民窟が連なるスラム地帯の存在だ。
そんな長町スラムの件に関しては別の記事にまとめているが、今回紹介するのは、長町があった日本橋地域と釜ヶ崎ドヤ街の中間地点とも言える、浪速区恵美須西三丁目に所在し、見た目にも超絶ボロボロに古びてしまっていた、とある「市営住宅」についてである。ここは大阪市内に無尽蔵に乱立するそのへんの市営住宅とは性質がかなり異なっていて、そもそも厳密には市営住宅という扱いではない。名前からして「大阪市立馬淵生活館」という、非常に異質な福祉施設だ。