フンデルトヴァッサーの遺作、世界一派手なゴミ処理場「大阪市環境局舞洲工場」に出入り自由な日がある

大阪市此花区

大阪市此花区にある人工島「舞洲」。ここはかつて2008年大阪五輪誘致を前提とした開発が続けられ、同じ人工島の「夢洲」「咲洲(南港)」なども含めて豪華絢爛なハコモノ施設が乱造されて大阪市の財政を圧迫させる要因になった訳だが、その代表格とも言えるのが、ウィーンの芸術家フリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサーに6600万円でデザイン設計を依頼し、総事業費609億円という莫大な予算を投じて2001年に建設された「世界一派手なゴミ処理場」こと大阪市環境局(完成当時は大阪市環境事業局)舞洲工場である。

そのあまりの派手な外観に、近隣にあるユニバーサル・スタジオ・ジャパンと間違えてやってくる観光客もいると言われるゴミ処理場、内部見学も受け付けていて、一応ながら僅かに観光客を集めている場所でもあるのだが、見学に際して「7日前以上の事前申込」など色々面倒臭い条件が重なっていて他地方からの見物には殊の外ハードルが高い。

実はこの舞洲工場、普段なら申し込まなければ見学できない面倒な所を、年に何度か開催している「オープンデー」の日に行くと事前予約なしでササッと見学できるらしい。これは行かなアカンやろ、という事で現地へ。初めて目にしてから十年越しの念願が叶いそうです。血を流したような模様の巨大煙突も相変わらず大阪ベイエリアのランドマークになっておる訳ですが。

舞洲工場オープンデーの開催時間は午前10時から午後4時まで(入場は午後3時で締め切り)。舞洲自体が鉄道不毛地帯にあるので、来るならバスかタクシーかという話になる。バスの場合は西九条、桜島、コスモスクエアの三駅からそれぞれ出ているが本数が多いのが桜島駅から出ているバス。まあ、自家用車かレンタカーが確実だ。受付で大雑把な住所氏名を記入して見学者用の首から提げる名札をもらって入場。

さすが609億円掛けただけあって、内部までしっかりフンデルトヴァッサーデザインですね。本場ウィーンにあるフンデルトヴァッサーヴィレッジのトイレとは違い、舞洲工場の場合、トイレの中は普通である。


エレベーターに乗ってまずは5階から見学コースが始まり、3階、2階に降りて退館という形になる。直線を嫌うフンデルトヴァッサーの思想が廊下のグニャグニャぶりに反映されており、やはり館内は本場ウィーンにあるクンストハウスに印象が似通っている。

そして見学コースもやたら凝っている。のっけからお子様達が寝そべっているプラネタリウム的な演出が施されたフロアがあって、ここでお子様向けに「POMくん」という謎のマスコットキャラクターが現れて色々とゴミ処理場の説明をするのだ。

POMくんの映像が流れるコーナーは他にも数カ所あり、POMくんの他に出てくる相方の漫才師のような2人のキャラがボケとツッコミを担当しているようで間の抜けた大阪弁でやりとりするのが非常に寒々しい。

年平均17000人の見学者がいて隠れた観光スポット扱いになっているとか一部では聞くゴミ処理場だが、先述の通り事前予約が必要だったり場所が辺鄙だったりと、普段からそんなにお客が来ているのかどうかと思うのだが、まるで遊園地のアトラクションのような演出もあったりして金の掛け方が凄いなあと感心させられる事請け合い。

5階の見学通路の奥に向かう途中にこの建物のデザインを担当したフンデルトヴァッサー氏の絵画や、同氏が手掛けた世界中の作品の写真などが展示されている。2001年にこのゴミ処理場が完成したが、本人はその前年、2000年に死去している。つまり舞洲工場や隣の舞洲スラッジセンター(汚泥処理施設)はいずれも「フンデルトヴァッサーの遺作」という事になっているのだ。

5階見学通路の最奥部にあるのは幅約44メートル、奥行き約17メートル、深さ約21メートル、容量15000立方メートルという途方もなく巨大な「ごみピット」をガラス張りの窓から見られるというダイナミックな見学設備。いやはやこれは素晴らしい。

ごみピットにはゴミ収集車(パッカー車)が積んできた可燃ごみがずんずん積まれていき、それらが巨大クレーンで掴まれて焼却炉に通じる穴に投下されていく。クレーンの爪は最大限に広げた状態で直径6.3メートルになり、一掴みできるゴミの量はパッカー車6台分にもなる。

此花区 舞洲

分厚いガラスで遮られているとはいえ、大量のゴミから発せられていると思しきガスの匂いがかすかに鼻腔を掠める。あまりに巨大過ぎて訳がわからんが、運転は24時間、2階の中央制御室から遠隔で監視しながら全自動で行っている。この舞洲工場では1日900トンのゴミを処理できる。国内最大級である事は言うまでもない。

此花区 舞洲

ごみピットに投入されるゴミは3階見学通路から見られる「プラットホーム」にある9つの投入口にゴミ収集車がバックで突っ込んで直接ゴミを投入する形で積み込まれていく。これだけ巨大な舞洲工場だが、ゴミの処理を担当している地区は大阪市内の中でも此花区と福島区の2区しかないらしい。

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