【15個100円】非戦災地域の渋い下町・此花区伝法にある「大阪一安いたこ焼き屋」に突撃【激安やで】

「たこ焼き」…これほどまでに大阪人のアイデンティティを示すものは他に存在しない。戦前に西成・玉出の「会津屋」創業者である遠藤留吉(福島県会津坂下町出身)が考案した料理が発祥だというが、一般大衆のソウルフードとして定着したのは専ら戦後になってからの事である。

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物価への敏感さとケチ具合では日本一のレベルを誇るネイティブ大阪人にとって「たこ焼きの価格」は常々ホットな話題である。東京を拠点とする「築地銀だこ」を敵視するのも大阪人の性であるし(同店は群馬県発祥ですけどね…)、8個580円という価格にも拒否感を示すわけだが、逆に「大阪で一番安いたこ焼き屋」はどこかという点が今更気になりだした。

それは2018年現在、大阪市此花区の阪神なんば線「伝法」駅から近いエリアにある店舗が「15個100円」という激安価格でたこ焼きを売っているという。早速訪れてみたが、件の店は駅から少々離れており、伝法駅前の閑散ぶりに唖然とするしかない。淀川が近いせいか川風が吹き荒んでいて、冬場はこたえる。

大手ゼネコン「鴻池組」発祥の地らしいです

此花区の「伝法」と聞いて何か思い浮かべるのも、この土地を知らなければ難しいだろう。大阪市内唯一の漁港が残っている事は以前伝えたが、大手ゼネコン「鴻池組」発祥の地という地味な自慢要素がある地域だ。

伝法駅から東に向けて歩くと右手に現れるレトロモダン建築。鴻池組発祥の地であることを今に記す「旧鴻池本店」の建物である。明治43(1910)年に建てられたものだが、幸いにも大阪大空襲を免れ、その後の阪神大震災や今年2018年6月に発生した大阪府北部地震にも耐えている。

大阪発展の原点を記す「澪標住吉神社」

旧鴻池本店の真向かいにはこれまた風格漂う佇まいの「澪標住吉神社」が。古くは難波津の入口だった島の一つだった当地、その後大阪城を建てた豊臣秀吉の時代に「伝法口」と呼ばれ海の玄関口として栄えていた歴史を今に留める、非常に由緒正しい神社である。

そんな海の玄関口に置かれていた標識を「澪標」といい、これが大阪市章として使われている事は誰もが知る通り。今の時代「大阪」と聞いてやれ犯罪地帯だ生活保護受給者日本一だ炭水化物しか食わない貧乏人の街だのロクなイメージを持たれませんが、この場所はまさに大阪が日本屈指の大都市として栄えた原点の一つであると言える。

非戦災地域・伝法の渋すぎる下町風景

澪標住吉神社の鳥居の前を通り過ぎるとその先の街並みもこれまたゲロ渋すぎてつい唸り声を上げたくなる。先の旧鴻池本店の例を見る通り此花区伝法・高見界隈は非戦災地域であり、今も住宅地のそこかしこに戦前の街並みが残っている。

千鳥橋の四貫島商店街方向から南北に伸びる道に入ると、シャッターを下ろしたままの廃れた商店がちらほら残る風景が現れる。伝法の街は駅前よりもこの通り沿いが市民生活の動線として機能している模様だが、通行人は皆一様にチャリンコでピューっと通り過ぎていくのみ。

相変わらずアル中親父の溜まり場になっているような土着酒場と公明党ポスターばっかりしか見かけないのがなんとも大阪的なんですが…

隣の高見二丁目に入っても非戦災建築っぽい建物が結構見られる。なにやら気になる店の廃墟が。「バーガーショップナカムラ」だと…廃業してかなりの年月が過ぎている模様。店のシャッターの回りには安全第一のトラ柵で覆われ、建物の自然崩壊による人的被害の可能性を想定しているのだろう。

まだ此花区の土着民にとってマクドナルドだの何だののファーストフード文明が開かれる前の時代から、まるでその地にずっと存在し続けていたかのような凄まじい佇まいである。とりあえずハンバーガーに手足と髪の毛つけてみました的なやっつけキャラがまた渋い。目ん玉くらいは付けてあげようよ…

此花区伝法界隈にはホルモン焼きを出す肉屋が二軒ある

この伝法・高見界隈、同じく大阪ベイエリアに属する隣の港区やそのまた隣の大正区などと共通しているのが、工場勤めや港湾労働者が多いという土地柄である。したがって「じゃりン子チエ」の世界を地で行く“ホルモン焼き”を出す店舗が二軒もある。そのうち一軒は森巣橋寄りにある「リキホルモン店」という肉屋でしたが、タイミング悪く店先でホルモンを焼いていなかったので、すみません、次に行きます。

もう一軒は先に上げた澪標住吉神社近くにある「仲宗根商店」である。もうその名前からして出落ちであるが、大阪の「ホルモン焼き」という土着料理は戦前に移り住んできた沖縄出身者によって作られたソウルフードで、もっぱら大正区ばかりが知られているが、実は此花区にもあるんですな。

この仲宗根商店は地元民にかなり絶大な人気を誇るホルモン焼きの持ち帰りができる肉屋である。チャリンコに乗ってやってくる地元民がひっきりなしにいる。本業の肉屋よりもホルモンを焼く方が忙しいくらいで、店の周囲にはのっけから食欲をそそる匂いが充満している。

15個100円の「大阪一安いたこ焼き」と、こちら仲宗根商店のホルモン焼きを購入してそのへんの公園で酒を一杯煽りながら食って帰るのが本日のコースである。

客の殆どがホルモン焼き目当てで来るが、精肉が陳列されているケースを見ると豚足、ミミガー、蒸し豚などなど、他にも沖縄名産品のポーク缶やサータアンダギー等、ウチナー向け食材も豊富に揃っている。ここは此花区にある知られざるもう一つの「リトル沖縄」である。

15個100円のたこ焼きを売る伝説的店舗「甘栄堂」

仲宗根商店がある通りから東側の筋に入ると、我々が最初から目標としていた「大阪一安いたこ焼き」を売るたこ焼き屋がある。ここもやはり地元民の客がチャリンコで乗り付けてはたこ焼きを買いに並んでいる。大阪人なら誰もが幼少期を思い浮かべるであろう原風景の一つである。

店の外観を観る限り「たこ焼」としか書かれていない大雑把さも大阪土着的だが、この店には「甘栄堂」というれっきとした屋号がある。今のプレハブ風味の店舗に変わるまではバラック風味な店舗で商売されていたそうで、2009年頃のストリートビューを見ると味わい深い旧店舗の佇まいが拝める。ただこの店、住所を見れば伝法ではなく高見二丁目にあり、記事のタイトルが厳密には合っていないようだが気にするな。

店内はご覧の通り狭く、イートイン用のテーブルと椅子が一式置いてあるが持ち帰り客が殆どなので誰も意に介さない。こんな場所柄なのに「店内禁煙」なのはかえって珍しくも思える。関ジャニ∞の横山裕が此花区出身なのはよく知られているが、学生の頃にこの甘栄堂のたこ焼きをおやつに食っていたというエピソードがある。やはりジャニーズタレントは生い立ちが濃ゆいメンツが多い気がするんですが…

甘栄堂の向かいにある「公認日乃出市場」のズタボロぶりもキテますね…未だに数店舗が現役で営業していて、四貫島商店街まで出るのがかったるい地元の老人住民からの僅かな需要で成り立っているものと見られる。

で、早速買って帰った15個100円の甘栄堂のたこ焼き。一粒一粒が小さくてフニャフニャした感じの見た目だが、大阪ベイエリア下町の貧民窟育ちの当方が幼少期に食っていた近所の屋台の薄幸そうなおばちゃんが出していたたこ焼きはまさしく「この感じ」が正しい。

中身のタコが入っているかどうか判別しづらい程小さくとも、この値段で文句を言うヤツはもう餓え死にでもするしかない。消費税が8%から10%に上がりそうなご時世に一個あたり6.66円というのがまた泣かせますね。もはや趣味か福祉事業でなければ成立しないレベルである。

ついでに仲宗根商店のホルモンも食っておこう。プニプニフワフワの噛みごたえ、噛めば噛むほど味が出る、これがソウルフードっちゅうもんやで、というしかないお味。なおかつ泡盛があると最強かも知れませんがそのへんの公園で飲み食いしていたら完全に「ダメな大人」ですよねそれ。

ちなみに以前は関目高殿駅近く(旭区高殿)にあった「ピア」が16個100円(1個あたり6.25円)で大阪一安いたこ焼き屋として有名だったが、残念ながらだいぶ前に廃業してしまっている。大阪最安のたこ焼きを喰らうならば、阪神なんば線伝法駅で降りましょう。


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DEEP案内シリーズ管理人。大阪ベイエリアの貧民窟育ち。独自のひん曲がった視点で街歩きを続けております。2008年より上京。関西に留まらず全国、海外に取材対象を薄く広く伸ばして来ました。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。
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