ボロボロの橋脚、公団住宅を貫く駅舎!これぞ昭和遺産!「姫路モノレール」軌道跡を歩く

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モノレールの軌道跡を追いかけていたらいつの間にか辿り着いてしまう姫路市民の憩いの場「手柄山中央公園」。ここもレトロな回転展望台とか手柄山遊園といったものがあってオモロイのだが、まずはモノレール展示室があるという「手柄山交流ステーション」に行きましょう。

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案内看板に従い公園内を進むとごつい赤煉瓦壁の建物が現れる。これがモノレール手柄山駅として使われていた。写真左側のカマボコ型の穴からモノレールの車両が出入りしていて「モノレールのりば」の大看板がデデーンと掲げられていたのだ。

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廃駅状態だった手柄山駅を改修し2011年4月に手柄山交流ステーションがオープン。それ以前は隣の大将軍駅同様、中には入れなかった訳だ。そう考えると気持ち的にもざわざわしますよね…

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んで、中に入ってみると「姫路市立水族館」と同じエントランスなので一瞬戸惑う。モノレールを見に来たのに水族館のチケットを買わなければ入れないのか…とキョドっていると警備員のおっちゃんに親切に案内された。モノレール展示室を見るだけなら入館料は無料らしい。水族館には目もくれずそばの階段から二階へ。

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そして念願の手柄山駅跡、現在の「モノレール展示室」とのご対面。あらまあ…随分と綺麗な廃駅になってしまいましたね…

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だが、往時の最先端を行く新交通システムだった姫路モノレールの車両は元からあったホームや軌道と共に同じ場所に展示されているのだ。モノレール休止から37年間お蔵入りにされていた幻の車両が今ここに…

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モノレール車両は扉が開放されており、展示室の営業時間中は自由に見学する事もできる。これは素晴らしい。遠慮無く乗車させてもらう事にした。

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37年間放置され続けていたというモノレール車両だが、綺麗に清掃されて元通りに修復されている。今は亡き大阪弁天町の交通科学博物館を彷彿とさせるノリだ。あまりPRが行き渡っていないのか他に客が全然居ないというのが意外なのだが…

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余裕のスペースで配置された全席ボックス席の車両は僅か1.6キロのミニ路線とは思えない贅沢ぶり。車窓から見えるのは姫路銘菓「御座候」の広告。

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半世紀前には未来の交通システムともてはやされていたモノレールの運転席も今見るとアナログ感全開でもはやアンティーク級。アメリカの航空機メーカー、ロッキード社の日本法人「ロッキード・モノレール」製のモノレールで、日本全国探しても同社製のものはこの姫路市営モノレールと神奈川県川崎市にあった小田急向ヶ丘遊園モノレールの2つしかなく、どちらも廃業しているし、ロッキード・モノレール自体も早々と解散している。

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そもそも姫路市営モノレールが出来たのは昭和41(1966)年に開催された「姫路大博覧会」に合わせた観客輸送の為だった。この手柄山中央公園がメイン会場になっていたのだ。その開催期間は4月3日から6月5日までの僅か2ヶ月間。しかし用地買収の難航や台風や集中豪雨で工期が遅れ肝心の博覧会には間に合わず、開業は5月17日。博覧会の足として機能したのは僅か1ヶ月足らずに過ぎなかった。

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姫路駅、大将軍駅、手柄山駅の三駅、1.6キロの区間が先行開業という形になったが、当初の姫路モノレールの延伸計画では市内環状線の建設、さらに飾磨・広畑方面への延伸、そして兵庫県を縦断し日本海側まで伸ばして鳥取までモノレールを引き伸ばす荒唐無稽なプロジェクトが存在していたらしい…どんだけやねん…

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昭和41(1966)年、大阪万博の4年前に華々しく開催された「姫路大博覧会」の会場ジオラマ模型をはじめ、鉄ヲタ垂涎のロッキード社モノレール部品の数々が惜しげも無く展示されまくっている。

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1時間に3本しか発着せず、なおかつ1.6キロの路線で運賃が100円(当時の国鉄初乗り運賃が20円)という高額で、姫路大博覧会終了後はパタンと客足が途絶えてみるみるうちに収益悪化。お役所仕事ならではの読みの甘さは昔も今も変わらない。

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モノレール建設を推し進めた当時の石見元秀市長は戦後に選挙で選ばれてからインフラ整備に力を入れて街の復興を進めた功績もある一方で、ワンマン行政が行き過ぎた挙句「負の遺産」を作り上げた張本人であると糾弾され、石見氏は博覧会があった翌年の選挙で落選。それ以来モノレールの存在は姫路市政に長い間暗い影を落としていたのだ。

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せめて観光資源にとポジティブシンキングに転じて手柄山交流ステーションをオープンさせたという流れらしいが、それならもう少しお客さん来てくれるといいですよね…って、今の姫路市長はその石見氏のご子息らしいんですが。

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最後に手柄山中央公園の高台から姫路市街を見下ろすと、今も残るモノレールの橋脚が古代遺跡のように佇んでいるのが見えるだろう。モノレールの運営が失敗せずに、当初の予定通りに市内各所に延伸したり鳥取まで伸びたりしてたらどうなっていたのだろう、とても非現実的で考えが及ばないんですが…


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