【港区】港湾労働者の街だった大阪ベイエリア下町のアーケード街「八幡屋商店街」

大阪市内中心部を東西に横切る地下鉄中央線に乗ると阿波座を出てから大阪港までが総じて地上区間となるが、コスモスクエア行きの電車に乗ると朝潮橋駅を出てすぐの左手の車窓から古臭い佇まいのアーケード商店街が姿を現す。

ここはかつて港湾労働者の街として栄え、西成に次ぐガラの悪さを誇っていた「大阪市港区」で指折りの商店街の一つ「八幡屋商店街」の入口である。地下鉄朝潮橋駅から徒歩5分の距離にある。

そこは90年代に誕生し今でも日本一の巨大水槽がある世界的有名水族館として名を馳せる「海遊館」および「天保山ハーバービレッジ」に遠方からやってくるラブラブカップルやリア充ファミリー軍団には地下鉄の車窓から眺めるばかりで全く無縁な大阪ベイエリアド下町ゾーンの濃密な生活空間。同じ港区でも東京都港区とは全く世界が違っている。

港湾労働者の街、大阪市港区の中心繁華街だった場所

商店街の入口には長らく「天光」「平和」の二軒のパチンコ屋がまるで寺の山門の一対の仁王像の如くそびえ立ち、地下鉄の車窓から街を見下ろす余所者に向けてここが素人向けの街ではない事をアピールしていた。これは2006年頃に撮影した在りし日の姿である。日が暮れると両側のパチンコ屋が負けじとギラギラとネオンサインを光らせていた。ちょっとしたリトルラスベガス状態である。

しかし10年位前に「天光」が廃業し、その数年後に向かいの「平和」も無くなった。今となってはこの商店街の入口は左右どちらもただのコインパーキングである。昔はこの先の路地を左に折れたところに暴力団事務所があったのだが、だいぶ前に解散してしまっている。

神戸の山口組も港湾労働者の人夫出しから始まったように、港湾労働者の街はヤクザと関わりが深かった。昔は西成の釜ヶ崎に次いでガラの悪い地域だったという事を、この土地に長く住む古い世代の人間から聞いた事がある。

そして他の大阪ベイエリアにある下町と同じく、産業構造の空洞化と高齢化によってみるみる活気が失われ、老人だらけの福祉の街に姿を変えている。アーケードだけはやたら立派だが、今では時代の変化を完全に拒んだかのような佇まいである。

昔よりかなり寂れていて、介護福祉関係の店舗にあちこち変わっている所なんかが切実だが、周辺住民にとってはここしか買い物が出来る場所がないので、商店街の通路はチャリンコだらけで通りづらいのがデフォである。

相変わらず大手チェーン店が入り込む余地もないくらいにインディーズ系の激安衣料店が幅を利かせているガチな下町っぷり。八幡屋周辺に住んでいる限りは「しまむら」も「ユニクロ」もさっぱり無縁である。

チャリンコ路上駐輪密度がMAXになるのがいつも「スーパーナショナルやはたや店」前。港区内、弁天町界隈を除いて全体的にスーパーマーケット枯渇地帯であり、そこに唯一営業しているのが「スーパーナショナル」なのである。昔も今も八幡屋住民はスーパーナショナルが無ければ生活が出来ない。物理的に孤島状態となっている南港ポートタウンほど極端ではないが、感覚的には都会の中の僻地である。

八幡屋商店街唯一の集客店舗であるスーパーナショナルのおこぼれ的需要に応えているかのような、すぐ右隣の屋号すら見当たらない野良食料品店。売り方が東南アジア的過ぎますけれども、このへんの商店街では何ら違和感もない。

八幡屋市場と港中央市場、そしてホルモン焼き

八幡屋商店街自体は長さ200メートル少々しかないアーケード街だが、ここに付属して「八幡屋市場」「港中央市場」という土着市場が連なっている。昔ながらの個人商店ばかりしかなく、店主の高齢化もあって年々店の数が減り続けている。

八幡屋市場の中に足を踏み入れる。寂れた市場マニア的にはくすぐられる光景なのだろうが、ここにも立派なアーケードが取り付けられていて、アーケードの維持費を確保するのがさぞかし大変そうに思える。

さらにもう一つの「港中央市場」。その名の通り、昔は大阪市港区における代表的な活気ある市場の一つだった場所だがここも軒並みシャッターが降りたままの店だらけ。街の人口も減る一方である。

港中央市場の外れの区画に出てきた。市場の組合事務所なんぞもあったりする一角だが、昔はこの付近までもっと様々な店が営業して賑やかだった記憶がある。

そんな場所に大阪土着民のソウルフード「ホルモン焼き」をひたすら焼いているだけの土着感溢れる、「ホルモン七福神」という屋号の店が一軒ぽつんと存在していた。大正区や此花区にはまだこの手のホルモン焼きを出す店が残っているが、港区ではこの店舗が最後の一軒だったのではないかと記憶している。2009年頃に廃業したとみられる。

八幡屋商店街近くに海の生き物が描かれた立体駐車場がデーンとそびえているのが目につく。大昔、この土地に日活ロマンポルノを上映する大人向けの映画館や色々如何わしい店が集まる総合レジャービルがあったと記憶している。港区はその区域を殆ど焼け野原に変えた大阪大空襲さえなければ、もしかしたらもっと華やかな歓楽街に発展していたのかも知れない。

手打ちうどん王将という至宝の店

Y字型にアーケード街が広がる八幡屋商店街のど真ん中に店を構える明石焼「一番堂」と隣の「手打ちうどん王将」、八幡屋土着民の胃袋を長年満たしてきた老舗の炭水化物補給スポットである。この地域の人間にとって王将といえば餃子の王将ではなくうどんの王将なのである。

大阪湾を隔てた向こうのうどん県の食文化の影響を受ける大阪人もまたうどん摂取率が高いのは言うまでもないが、「王将」で食えるのは「うどん+かやくめしorちらし寿司orいなり寿司」というド鉄板大阪人的“炭水化物オン炭水化物”定食の数々。どれも500円そこそこで食える。やっすー!

狭い店内はカウンター席が殆どでテーブル席はわずかしかない。大手チェーン店やショッピングモールがある暮らしに無縁なこの地域では数少ない飲食店の一つであり昼飯時には地元民で混雑する。店内は昭和風情そのもので全く代わり映えもない。

狭い店に不釣合いな程にでかいお椀にガツーンと盛られ湯気がもうもうと湧き上がり登場する「肉うどん」(530円)。関西で「肉」と言えばすなわち牛肉を指すわけで、牛肉がトッピングされているが、なぜか肉質がやたらと良く、旨味の強い脂が関西風うどんだしに絶妙な絡み方をする。これもソウルフード言うてええんちゃうかな。あとカレーうどんも美味いです。


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DEEP案内シリーズ管理人。大阪ベイエリアの貧民窟育ち。独自のひん曲がった視点で街歩きを続けております。2008年より上京。関西に留まらず全国、海外に取材対象を薄く広く伸ばして来ました。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。
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