【大阪市無駄物件図鑑】実質破綻した大阪市バブルの塔「WTCコスモタワー」が大阪府咲洲庁舎になるまで

大阪南港「コスモスクエア」。国際都市大阪の地位を確固たるものにしようと、大阪ベイエリアの3つの人工島を開発して世界でも稀に見る臨海副都心計画が2兆2千億円もの巨費を投じて進められた。その「テクノポート大阪」プロジェクトをもとに、この場所にコスモスクエアの中心的ランドマークタワーが築かれた。


それが「大阪ワールドトレードセンタービルディング」、通称「WTCコスモタワー」(現・大阪府咲洲庁舎)だ。西日本最大の高さ256メートル、地上55階建ての超高層オフィスビルは総工費1193億円を投じバブル崩壊後の1995年に完成した。当初は大阪市の第三セクターが経営していた。

超高層256メートルの「大阪市バブルの塔」が大阪府咲洲庁舎になるまでの茨の道

隣接する「アジア太平洋トレードセンター」と同様、国際貿易の拠点としてオフィスを誘致する計画だったが、やはりバブル期の地価下落と南港への交通の不便さ、賃料の高さなどが理由でテナントが埋まらず、結果、大阪市の関連部署がこぞって「穴埋め」に入居する事態に。そのことからWTCコスモタワーは「大阪市役所第二庁舎」と揶揄されるに至った。

WTC社は2003年6月に債務超過で、同じ大阪市の第三セクターであるATC(アジア太平洋トレードセンター)社とMDC(湊町開発センター)の3社合同で計580億円の債務超過を抱え、特定調停を申請、実質的な破綻状態となった。

翌2004年に社長に民間人である前伊藤忠都市開発社長を起用して経営再建を図った。すると2005年には初めて黒字を計上したという。前伊藤忠副社長が社長に就任した兄弟船のATCと全く同じ構図である。その後は入居率が8割後半にまで上がり、ほぼ経営健全化しているということらしい。

しかしこれにもカラクリがあって、この当時WTCに入っている大阪市関連のテナントは、なんと2倍以上の賃料を支払って入居していたというのだから呆れる。WTC救済のために大阪市が「過剰支出」している実情はある意味赤字隠しでもあり、大阪市民を欺いた行為であるとも言えよう。で、結局入居していたテナントには「パチスロ専門店」まであったりして、めちゃくちゃですがな。

WTCコスモタワーへは、最寄りのニュートラム「トレードセンター前」駅からATC内を潜り抜けて、徒歩3分程度かかる。途中の連絡通路も含めて造りがやたらバブリーだが、ここを行き来している通行人は今となっては大阪府庁の職員ばかりである。

地下鉄中央線コスモスクエア駅からも徒歩10分もあれば充分行けるため、朝夕のラッシュ時間帯にはコスモスクエア駅とWTCビルを行き来する大勢のスーツを着たサラリーマン、というか府庁の職員が通勤行列をしている様子を見ることができよう。

WTCビルの1階に入る。そこでビルの中に入っているオフィスの一覧表を見ることが出来る。実に7割から8割が大阪市の部署と関連団体で占めているのだ。これが「大阪市役所第二庁舎」と呼ばれていた所以である。

その向こうには豪勢なエレベーターホール。各階へ向かう超高性能エレベーターがズラリと並んでいる。まさに近未来都市の風貌をそのままにしたかのような総ガラス張り、床には総大理石の超豪華「大阪市役所第二庁舎」。低・中・高・超高層階用の4種類のエレベーターが合計24基稼働中である。

日本一の国際貿易ビルには100円ショップとパチスロ

ATC側からの連絡通路を抜けると、1~3階がまるごと吹き抜けになった巨大アトリウムに出てくる。以前は「フェスパ」と呼ばれていた場所だ。まさに「コスモタワー」の名称をそのまま体現したかのようだ。夜になれば、光ファイバーが埋め込まれた床から、まるでちりばめられた星のような照明が幻想的な空間を作り出す。

現在この場所は大阪府咲洲庁舎として使われ、お役所関連の部署が中心に入居する「お堅い」エリアになっているのだが、それが10年前では中途半端なデートスポット的佇まいで、普通にゲーセンとかマクドナルドとかが入っていたのである。

おまけに100均ショップやパチスロ専門店まであるというグダグダぶり。これが日本一の国際貿易ビルとして建てられた箱物だったなんて未だに信じられません。

高さ256メートルの超高層ビルから大阪湾が一望できる

一階アトリウムの一角から有料展望台への入口がある。WTCコスモタワー時代の入場料は大人800円だが、大阪府咲洲庁舎展望台となった現在は700円に値下がりしている。高いが登る価値はある。さすがこれだけの贅(税?)を尽くした建物のことだけはある。

以前は雨の日割引なんてのもやってましたが、今はどうなんでしょう。でも普通の観光客はこんな辺鄙な人工島まで来ることなく、新しく出来た「あべのハルカス」の展望台に登るのが関の山であろう。

高さ252メートルの展望台からは、晴れた日には西日本最高クラスの夜景が拝める。以前はガラ空き過ぎて、盛りのついたカップルが如何わしくイチャつき倒している姿が見られるような場所だったが、アジア系外国人観光客の増加や、すぐ近くの大阪港国際フェリーターミナルからやってくる中国人や韓国人の姿で賑やかになっているようだ。

しかしケチで貧乏人な方々向けにはオフィス棟からタダで絶好の風景を楽しむこともできる。オフィス棟は52階の高さまで登る事ができるが、超高性能エレベーターで、地上から天空の世界へは1分も掛からない。

47階の男子トイレに入ると、そこからはご覧のような大阪の景色を堪能することができる。大阪ベイエリアを一望しながらお小水をぶちまける、この爽快さは、日本広しと言えどもWTCコスモタワーでしか味わえない感覚だ。

大阪市バブルの塔時代にあった45階の穴場スポット

以前ここの45階には大阪市の関連施設「大阪港広報サテライト」が存在していた。社団法人大阪港振興協会の事務所と、大阪港と友好国の港の関わりを展示しているスペースがある。ハッキリ言わせてもらえば「天下り役人の暇潰しスペース」ですな。

無論誰一人来客のいない虚しすぎる展示スペース。見るだけならタダでっせ。で、その隣には喫茶店がある。

この喫茶店が穴場中の穴場で、もちろん役所仕事なので平日の7時40分から17時までという営業時間だが、コーヒーから軽食まで、全てのメニューが安い。コーヒー220円、トースト150円、ドライカレー400円、ハンバーグ定食480円。WTC内のレストランの相場で考えると4割引程度の値段ではないだろうか。

お昼には青い作業服を着た大阪市職員の皆様がお食事にやって参ります。なるほど「職員食堂」だったわけだ。もちろんハンバーグの味は値段以上にお値打ちのジューシーでお腹一杯になれる逸品です。

大阪府咲洲庁舎になってしまいました…

さらに2009年に二次破綻となった「株式会社大阪ワールドトレードセンタービルディング」、その後に橋下徹大阪府知事時代の2010年にビルは約80億円で大阪府に売却され「大阪府咲洲庁舎」として再スタートを切っている。WTCコスモタワー時代にあった大阪市の水道局、建設局、港湾局といった部署は全て向かいにあるATC・ITM棟に移転している。

昔ゲームセンターだったテナントは現在大阪府庁の「建築振興課」になってしまっていた…

それ以後も民間テナントを募集していたりしたが入居物件はほぼ皆無でズッコケ状態が続いていたが、ようやく「中国人観光客向けにホテル開業」の一報が。2020年には咲洲庁舎のオフィス区画として使われている7~17階部分がホテルとして生まれ変わる予定らしい。


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DEEP案内シリーズ管理人。大阪ベイエリアの貧民窟育ち。独自のひん曲がった視点で街歩きを続けております。2008年より上京。関西に留まらず全国、海外に取材対象を薄く広く伸ばして来ました。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。
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