【和歌山市】一見寂れていますけれども…和歌山市民の台所「七曲市場」を見物する

日本全国47都道府県、どの県庁所在地にも存在する「県民の台所」と呼べる場所。これが大阪だと黒門市場、兵庫だと神戸の東山商店街、京都は錦市場、といった感じで挙がるものだが、ことさら“近畿のオマケ”扱いされる和歌山県でどこと言われると…

こちら和歌山市の「七曲市場」(七曲商店街)がそういう場所なのらしい。ちょっと噂を耳にして、はるばる阪和道ぶっ飛ばしてやってきましたけれども…ぶらくり丁だとか、和歌山駅・和歌山市駅といった主要部分から外れた一画に存在していた。

住所で言うと和歌山市東長町、和歌山城の西方750メートルの住宅地にぽつんとこの市場がある。さすがに和歌山のような地の果てまでやってくると、“駅を中心に街が栄える”という古来からの決まり事がさっぱり通用しないようなのだが、なぜこの場所に古い市場が残っているか、気になりますよね。

現存する和歌山県最古の市場・七曲市場を見る

この市場の歴史を遡ると明治44(1911)年に始まり、「宇野栄座」という芝居小屋が当地付近に開業し、これが娯楽のない時代にえらく繁盛したとされる。この芝居小屋に集まる客をアテにした食料品店が営業するようになったのが始まりで、大正7(1918)年12月には和歌山県初の公設市場として成立した4つの市場の一つ「湊公設市場」が発足。これが七曲市場の前身である。

それが戦時中の和歌山空襲で壊滅した後、昭和24(1949)年にバラック建ての急ごしらえの市場として再興、昭和32(1957)年7月には「七曲商店街協同組合」が創立され、それから現在に至る、という流れらしい。芝居小屋があった頃からとうに100年超えの物件ですけれども、そう言われると迫力ありますよね。

市場の入口向かい側にはちゃんと商店街の客専用にこしらえられた立体駐車場まである始末。ちょっと造りは古いけれども、こうした駐車場まで維持できるのなら大したものである。

そんな七曲市場の中に足を踏み入れると…案の定だが寂れっぷりの容赦なさを見せつけるかのようであるが、天井いっぱいに覆われたアーケードも含めて、なんとも独特な空間を作っている。かつては百軒を超える店舗数を誇っていたそうだが、現在では十数軒程度しか残っていない。

ただ、地方によくある寂れた市場だと一蹴してしまうのには、いささか判断が早いように思う。肉屋とか八百屋とか魚屋とかが結構こんな場所でも元気良く営業しているのである。どちらかというと地元のご老人方が集まる朝っぱらの方が賑やからしいですが、我々の訪れた昼過ぎでもまあまあ買い物客の姿がありました。

恐らく戦後の商店街協同組合成立の頃から変わり映えもない古いアーケードと店舗の立ち並ぶ建物のまま、今の時代に生き続けている市場の一つである。商店は全て個人経営、ちょっとしたスーパーマーケット的なものすらない。

同じ和歌山市内だと他にこのようなレトロ風情満載な場所は和歌浦の明光商店街くらいですかね…そもそも和歌山に来るだけでも大変なので、どこにどのくらいの物件が生き残っているのか実地調査するのも難しい。和歌山県にゆかりのある方、情報お待ちしております。

鶏肉専門の「とり久」の前には串に刺さった焼き鳥がずらりと陳列されているのが見られる。本当に寂れた商店街ならこうはいかない。車で買い付けに来る地元民の多さを裏付けている。

ちょっと「天王寺駅前阪和商店街」やら「鶴橋商店街」を思わせる、古びた佇まいの食料品店もあり。菓子類からカップ麺、調味料まで幅広い品揃え。さぞかし地元のご老人には有り難い存在か。

その隣の“ほっかほっか弁当”屋は既に廃業しているものと思われる。まあなんとも店構えが80年代的やねん。とり肉弁当520円はともかく「うなぎ弁当」が650円というのは今どき中国産使っててもその価格設定は無理でしょう。

健康が気掛かりなお年寄りの暮らしには欠かせない、街の薬局も健在。一見寂れているようにしか見えないながらも、最低限のインフラは一通り残っているのだから侮れない。逆に大阪から見ると和歌山くらい距離があるからこそ、辛うじて廃れる事がないのか。

薬局の隣のスペースに掲げられた「七曲商店街協同組合事務所」の看板もやたら年季が入っていて、より一層の貫禄を見せつけてくるのだ。「七回曲がらなければ外に出られないから七曲」だとか色々その名前の由来はあるそうだが、昭和の時代までは買い物客でごった返して、狭い路地の中をグルグル曲がる羽目になっていた程だとか。

正直空き店舗だらけで寂しいのは否めないが、これだけの規模の商店街がせっかく残っているのなら、食欲をそそる食い物屋の一つ二つくらいは残って欲しかった気がする。まあ、無い物ねだりもアレですので、惣菜でも買って帰るくらいですかね。

ただ、ここ七曲市場では年に一回「わかやま夜市」なるイベントが夜に開催され、和歌山日台交流協会の主催で台湾の夜市を再現して台湾スイーツなんぞが食える屋台などが出店して、その時ばかりは賑やかさを増すというのだ。そのタイミングでここに来るの、地元民じゃなければ至難の業ですけれども…


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DEEP案内シリーズ管理人。大阪ベイエリアの貧民窟育ち。独自のひん曲がった視点で街歩きを続けております。2008年より上京。関西に留まらず全国、海外に取材対象を薄く広く伸ばして来ました。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。
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