【京都市】スターハウスもあるぞ!近鉄京都線桃山御陵前駅近くのヴィンテージ市営住宅「桃陵団地」

京都と言えば歴史の感じられる寺社や街並みを巡る事ばかりがメジャーになっている観光都市だが、その一方で見落とされがちになっているのが「意外と団地が多いですよね」という事。イカニモな観光客が酒蔵のある街並みを闊歩する伏見区にもそんな団地の一つがある。しかも結構なヴィンテージ物件が…

で、やってきたのはまたしても近鉄京都線桃山御陵前駅。前回は駅前のガード下に伸びる古びた飲食街を紹介したばかりだが、実はこの駅から少し山側に向けて歩いていくと、なかなか目を見張りたくなる“市営住宅”が林立する一画があるのだ。

まずは駅前の大手筋通を東へ。のっけからドドーンと通りを跨いでそびえる「御香宮神社」の朱塗りの大鳥居が存在感を顕にしている。伏見の総鎮守たる神社で創建年代も古く、伏見城を築城した徳川家康の命によって建てられた重要文化財指定の本殿があったり、幕末期にあった戊辰戦争における「鳥羽・伏見の戦い」の舞台ともなった、という事で歴史マニアが涎を垂らしっぱなしのスポットですわね。

そんな由緒正しい神社のすぐ隣にありながら、モロな和風建築っぷりから仏教寺院かと勘違いしそうな佇まいの建物。実は仏教でも国家神道でもなくキリスト教。よくよく見れば十字架のマークがあって「桃山キリスト教会」という施設である事に気づく。景観に配慮した結果、宮大工が設計した建物となったそうで、これも京都ならではの光景というべきでしょうか。さすがですね…

伏見奉行所跡に鎮座するヴィンテージ市営住宅「桃陵団地」

御香宮神社の門前にも程近い、まさしく伏見区の中心的存在と呼んでも良いこの一画に「桃陵団地」という市営住宅が広がっている。ここは鳥羽・伏見の戦いで焼け落ちた伏見奉行所跡に戦後の昭和34(1959)年に建てられた、京都市内でも屈指の古さを誇る市営住宅である。

伏見区片桐町、西奉行町、東奉行町といった住所にかなりの数の中層住居棟が立ち並んでいる。近鉄や京阪の駅からも近く生活もしやすそうな立地にあり、さぞかし不動産業者が目をつけそうな土地だが、けれどもここは市営住宅。もっぱら低所得者層の福祉のために使われている。

昭和34(1959)年築ということは、なんと築年数60年目に到達する超絶ヴィンテージ物件ということになる。だが、その建物の多数が現存しているというのが桃陵団地の特徴である。無骨な佇まいの給水塔も団地のレトロっぷりに拍車をかけている。

それでも一部の建物は、酒処伏見という土地柄を反映してか酒蔵風味の住居棟に建て替えられている。すぐ近所に有名な酒造メーカーが多数あるわけで、なけなしの年金もしくはナマポをもらいながらアルコールに浸って自堕落に暮らしたい御老人にとっての終の棲家としては捗る事請け合いである。

幕末期に新撰組や会津藩が立てこもり薩長軍とドンパチした上に焼失した奉行所跡は明治に入り陸軍の土地として使われるも、第二次大戦後に米軍に接収され昭和33(1958)年に日本に返還された後、この市営住宅が建てられたという流れになる。当時の京都市内では最大規模を誇る団地だったという。

スターハウスが6棟も残っている

この桃陵団地で見どころと言えるのが、このような「スターハウス」がまだまだ結構な数残っている事。全国的にスターハウスが珍しい存在になっている事は別の機会にも触れたが、桃陵団地には5,6,7,10,36,37号棟の計6棟が現存している。当方が個人的に「団地の見本市だ」と評している枚方の香里団地よりも多い。

しかしこうした住居棟を見ても、さすがに築年数が行き過ぎていることもあるせいか空き部屋がやたらと目立っている。市営住宅という性質からこれ以上の居住者を募ることも難しいのだろうが、京都に出てきて大学に通う学生だってたいがい貧乏してるんだから部屋を貸してやればいいのに、そうもいかないのか。

夏暑く冬の寒さが堪える盆地にある京都市内で構造的に窓が多く部屋が冷えやすそうなスターハウスに住むというのは、電気代・燃料代にシビアな市営住宅住まいの高齢者にとっては厳しくはなかろうか。

この通り、桃陵団地のそこかしこに見られるスターハウスと給水塔の組み合わせ、団地好きでインスタ蝿好きな方々にはさぞかし写真の撮り甲斐がありそうな物件であろう。

団地の至る所に置かれた住民向けの注意書き看板もいい加減ボロボロに錆びて読みづらくなっている。市営住宅のまま60年も経った土地というのはよほどのものを感じさせる。これだけ団地が並んでいるのに、ひきこもった高齢者ばかりのせいか生活感があまり無いというのも特徴的だ。

なお、桃陵団地の中には伏見奉行所時代や陸軍時代の遺構もあちこち残っているのだが、記事が長くなりすぎるので今回は割愛した。現地訪問の際は団地の隅々まで注意深く見てみると良い。ここもまた非常に“京都らしい”団地なのである。

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DEEP案内シリーズ管理人。大阪ベイエリアの貧民窟育ち。独自のひん曲がった視点で街歩きを続けております。2008年より上京。関西に留まらず全国、海外に取材対象を薄く広く伸ばして来ました。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。
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