【残念な珍建築】フィリップ・スタルクが手掛けた谷町九丁目の珍ビル「バロンヴェール」を見物する

地下鉄谷町九丁目駅に近い谷町筋沿いに緑一色で窓も取り付いていない気持ちの悪い建物がポツンとあるので一体何だろうと思っていたのだが、どうやらバブル期にこの土地に興味を示したフランスのデザイナー、フィリップ・スタルク氏が手がけた物件らしい。

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その名も「バロンヴェール」(ウエムラバロンヴェールビル)。1992年に建設された地上8階地下1階建てのテナントビルである。フィリップ・スタルク氏は日本でも数多くの珍建築を手がけていて最も有名なのが東京・浅草のウンコビルもとい「アサヒビールスーパードライホール・フラムドール」、さらに白金台にある「ユーネックス・ナニナニ」も同氏によるデザインだ。

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しかし浅草や白金台のような華やかさのない大阪の地味な寺町の一角にこんなビルがあるんだから違和感バリバリなのである。表側の壁には「インテリジェントビル テナント募集」と記されている。

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緑色の巨大な壁がビルの本体となるが、その背後を見るとコンクリート打ちっぱなしの構造体が隣り合っていた。これもビルの一部だろうか。何よりも外から見ても窓らしい窓が全然見当たらないというのが不気味極まりない。

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ただ1階部分だけは谷町筋に面して入口が設けられている店舗がある。どこがインテリジェントビルなのか意味不明だが入居している店舗の業態も何やら怪しい。

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ちょっと怪しげな看板を掲げる1階の店舗。美味しいお料理とお姉さん達が出てくる店のようですが、よくわかりません。

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建物の真下から見上げる。緑色の外壁は屋上までひたすら平坦に続いている。建設中で仮囲いがしてあるビルに見えなくもない。あと建物の中央に開口部らしきものが見えるが、下から見た限りは分かりづらい。一応、明かり取りの窓のようなものがついていると思われる。

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建物右側にビルへの入口がある。デザイン的には白金台のユーネックス・ナニナニを踏襲しているような印象を受けるが、同じデザイナーが作った珍建築でも場所が違うと入居するテナントの種類も随分変わる。どうやらここは完全にそっち目的のビルと化しているらしい。残念な珍建築ですね。

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のっけから個室ビデオ店の看板がデーンと貼り出されていて、素人には入りづらい雰囲気を醸し出している。ビルの玄関を観察してみると頻繁にオッサン連中や従業員と思しきお姉さんの出入りがある。

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何より怪しいのが玄関前に置かれた各階テナント一覧。明らかにまともな店舗には見えない。何かを意味する怪しげなマークが店名の代わりについているかと思いきや、ただ一文字「ぷ」とだけ書かれた店もある。これらを見て一体何の店なのか理解するなんて無理無理かたつむり。

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上階に続くエレベーターの前。外からの明かりは一切届かない闇の世界。この上で一体何が繰り広げられているのか、店の中に入った人間にしか分からない。当ビルユーザーの間では通称「かまぼこビル」と呼ばれているらしい。

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このいかがわしい珍建築、せっかくだから裏側も見たいと思ったが回りこむ為の通路が封鎖されていて見ての通り荒れている。裏側が寺の墓地になっているのだ。ひとまず近くの路地まで迂回する。

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怪しさ全開のビルの真裏には整然と続く寺町の風景がある。南側の生玉町や夕陽丘もそうだが、上町台地に沿って大規模な寺町が形成されている大阪市内有数の歴史探索ゾーン。しかし同時にラブホ街やら怪しい物件も密集していて雰囲気が独特。

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かまぼこビルこと「バロン・ベール」の裏側が見られるのはここだ。久成寺。山門の向こうからあの緑色の壁が見える。

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日本的な寺町が立ち並ぶ風景、フィリップ・スタルク氏がこの土地を気に入ったきっかけがそこにあったらしい。だからと言ってこんな変な建物を置いてしまう発想自体もバブル期の勢いが無ければあり得なかっただろう。

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で、久成寺の墓地に入ると目の前に珍建築の全貌が拝める形となっている。むしろこのビル自体が巨大な一つの墓標のように思えてならない。かたや死者の眠る地、かたや生者の盛り場。

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久成寺墓地の中だけは昔のままの風情が残されていた。背後は全て谷町筋に面するオフィスビル。なかなか強烈なギャップだ。

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墓地に隣り合って古い石垣が組まれているのも見える。一つの珍建築ビルの周囲に実に多面的な都市の顔が垣間見える、奇妙な空間となっていた。


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DEEP案内シリーズ管理人。大阪ベイエリアの貧民窟育ち。独自のひん曲がった視点で街歩きを続けております。2008年より上京。関西に留まらず全国、海外に取材対象を薄く広く伸ばして来ました。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。
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