世界中から観光客が串カツを食べにやってくるどド定番観光地と化した「新世界」の一角に、なんともミステリアスな空間が残っている。
通天閣の前に広がる串カツ屋だらけの飲食街を抜け、スパワールドの大階段から振り返り右手側に視線をやると、何やら不自然な空き地があることに気が付く。しかも火事で全焼したままの建物が解体すらされず何十年も野放しにされているのだ。
「大阪国技館跡」とされるこの土地、傍らの案内板にも記されているが、かつては東京と並ぶ東西二大相撲興行の拠点でもあった場所である。しかし昭和2(1927)年に東西相撲の合併で「大坂相撲協会」は解散、「大日本相撲協会」(現在の日本相撲協会)に一本化され、その後は東京の両国国技館が相撲興行の中心となり、大阪国技館は戦前期に解体されてしまっている。
戦後のドサクサもあって、この土地の所有者や権利関係はどうなっているのかは今なお不明だが、そこに建つ、火事で焼け残ったのにそのままにされている建物の存在は不気味で仕方がない。実はこの建物の上から白骨死体が発見されていたのだ。2005年3月の話。
この廃ビルのまん前に「スパワールド」のホテル施設がある。ここに泊まっていたとある客が、何気なく自分のカメラを取り出し外の風景を撮影したのだが、その中の一枚にこの廃ビルがあったのだ。
火事で焼け残ったまま不自然な形で放置された建物に、興味が行ったのだろう。なにげなく撮影した廃ビルの屋上の画像を見ると、そこには全身が白骨化した死体が映っていた…という笑えない展開に。
客は驚いてスパワールドの従業員に通報、その後に警察が駆けつけた、という顛末だそうだ。遺体の状況から五、六年は放置されていたらしい。大阪屈指の観光地にこの廃墟ビルはあるというのに、何故いつまでもそのままにされていたのだろうか。これぞ都会の死角である。
気になったので、この廃墟ビルのすぐ裏手の路地に回ってみることにする。そこも廃墟同然の佇まいを残していた。
一体この場所では誰がどんな暮らしを送っていたのだろう。大阪を代表する観光地のど真ん中でありえない光景が、その日常の中に組み込まれている。
2018年現在、驚くことにこの廃墟ビルは現存している。土地の権利関係云々で、どうにもできんのですかね。
周りの木々が成長してきてすっかり外観が見づらくなってしまった。歳月の重さを感じずにはいられない。
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