【大阪ベイエリア負の遺産】海上に浮かぶ謎のガラスドームは総工費176億円…「なにわの海の時空館」

大阪市住之江区

当記事は2007年以前に制作された「大阪民国ダメポツアー」の記事を移転、さらに加筆されたものです。文章が拙い上に当時の大阪市の行政への不満から毒舌ぶりが際立っていますが何卒ご了承下さい。なお「なにわの海の時空館」は2013年3月10日の営業を最後に閉鎖され、今となっては無用の長物もいいところ、大阪ベイエリア乱開発の負の遺産としての姿を晒しております。

大阪ベイエリアに遊びにくる観光客は多く、天保山とUSJだけはいつも賑やかな大阪だが、同時にこの場所は大阪市の臨海副都心プロジェクト「テクノポート大阪」計画で、2兆円とも言われる莫大な予算を投じて乱開発されたエリアである。

90年代後半から大阪市は三セク・外郭団体運営のこうした豪華施設をボコボコ乱発し、その多くは大阪市からの天下り役人を受け入れるために機能してきたが全く収益性を成さず、莫大な赤字を残して次々と破綻していった。

大阪市 住之江区 コスモスクエア

特に3つの人工島、咲洲(南港)、舞洲、夢洲は、バブル期のノリで次々ぶっ建てた豪華巨大ハコモノの赤字遺産銀座であり、とりわけ大阪港で異彩を放つ建築物の一つがあのガラスドームだ。

あの建物は「なにわの海の時空館」という、大阪市の外郭団体が運営する海洋博物館である。大阪港は古来から貿易の盛んな港であった。だからその歴史と世界の海洋交易にまつわる色んな展示物を並べた博物館を作ろう!そんな訳で、大阪市港湾局が総工費176億円を掛けて2000年に建設。財団法人大阪港振興協会が当初は運営していた。

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世界的に著名なフランスの建築家、ポール・アンドリュー氏のデザインで、4208枚もの大きなガラス板で構成され作られた奇抜な建物で、直径70メートル、高さは35メートル。2002年には英国構造技術者協会から特別賞を受賞しているとか。

それはいいが、造るモン造っておいて、開業以来客足は伸びず、年間60万人の入場者予測に対し、初年度ですら20万人、01年度で14万5千人という惨憺たる状況。ちなみに「時空館」は2006年4月より外部から指定管理者として吉本興業に管理運営をやらせているという。

2005年1月の取材以来、時空館には訪れていなかったのだが、最近どうかな?と思い再び取材を行うことにした。少しは運営状況に変化は出てきたのだろうかと。

大阪市 住之江区 コスモスクエア


「海の時空館」へ向かうには、ベイエリアダメポ遺産の墓場、大阪南港「咲洲」の玄関口である「コスモスクエア駅」を降りる。

かつて大阪港~コスモスクエア~中ふ頭間はOTSという三セク路線として、大阪市交通局とは別会社の路線だったので、230円も余分に払わなくてはならなかったが、それも2005年7月1日から廃止され、大阪市交通局に一本化された。

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運賃がバカ高いだけで、副都心として企業の誘致にことごとく失敗してしまい、大阪市が管理する「塩漬け」空き地ばかりが痛々しく残っていたコスモスクエア駅前は、OTS廃止による運賃値下げ後には民間に土地を譲渡し、好き勝手にマンションや大学キャンパスなどを開発させており、ようやく街らしい姿を作ろうとしていた。

そのコスモスクエア駅前とは反対側に出ると、すぐまん前には大阪港の海が広がる。見晴らしのいい歩道橋の上から眺めると、対岸にはいまだ開発中の夢洲や舞洲が見える。

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歩道橋を降りるとそこは岸壁沿いに綺麗に整備された遊歩道が広がっている。コスモスクエア海浜緑地(シーサイドコスモ)と名づけられた場所の遊歩道はおよそ800メートルもの長さを誇る。ジョギングしたりする市民の姿がちらほらあるものの、この遊歩道自体もあまりに過剰すぎる豪華さだ。

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潮風が吹く遊歩道でしばしゆったりした時間を楽しむもよし。都心なのに人も少なく、気軽に贅沢な時間が味わえる場所である。税金を払う大阪市民の身になれば、誰も使いもしないのにこんなもの作りやがってと怒りたくもなるだろうが。

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コスモスクエア北岸壁、遊歩道の突き当たりがぽっかりと半月状に食い込んだ湾になっており、まるでコーヒーフロートの上に乗っかったアイスクリームのように顔を出している、巨大なガラスドーム。こいつが「なにわの海の時空館」の本体である。

だが、直接はあのガラスドームの中に入れないので、入場の際は手前にある建物に行く必要がある。

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いつ来ても人影がまばらなのは言うまでもなく…入場券を購入(600円、大阪周遊パスに無料クーポンあり、一日乗車券提示で540円)してエレベーターで地下に入り、長さ60メートルの海底トンネルをくぐってから入るという仕組みになっている。

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時空館への入場券となるのが、この「時空通寶」と書かれたメダル。こんなトコまで凝ってるのう、と感心させられるのだが、これは入口改札を通る時に使う必要があるため、手元には無くなってしまうのだ…ああ、無情…

2005年1月の来場時には入口にメダル自動販売機が置いてあったが、それが廃止されてしまっていた。

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入場ゲートをくぐって、まん前のエレベーターから降りていくと、そこは海底トンネル。

青い照明で薄暗く灯されたトンネルの中は深海をイメージさせる。4つほど光が見える穴が天井にぽっかり開いていて、そこからなんと海の中を眺めることができるのだが、海流が淀んでいるのでまず綺麗に見えることはない。

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海底が見えるガラス窓からはたまに魚が泳いでいる姿も見られるが、基本的には海藻類がわっさわっさ揺れているだけだ。とにかく立派すぎて笑えるが、そこを行き来する客の姿は全く居ない。まるで貸切状態だ。

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トンネルを突き当たると、そのままエスカレーターで本体の1階部分へと続いている。エレベーターの進む先を見上げると正面に見える物体が「時空館」のシンボル的存在、まさに時空を超えて復元された菱垣廻船「浪華丸」だ。

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だが、菱垣廻船は後回しにして、まずは案内係にエレベーターでそのまま4階に上がるように言われる。取材班である我々以外に客が居ないから、何人か居る係員はみんなこっちばかり見るのでなんとも恥ずかしい。シースルーエレベーターの中でも菱垣廻船のチョンマゲの兄ちゃんに会釈されてしまった。

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そして4階に上ってくると、さきほどの菱垣廻船がいかに巨大であるかがよくわかる。あの巨大な船は「時空館」建設時に、ガラスドームと同じようにクレーンで吊り下げられて据え付けられたものだ。これだけ巨大な物体が全て海の上から運ばれているところはさすがに海洋博物館らしい成り立ちではあるのだが。巨大過ぎる菱垣廻船はどうやってもカメラのレンズには収まりきらなかった。

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内側から見ても圧巻の建造物である。海遊館みたいに、きちんと流行っていれば、いくら立派なハコモノを造っても別に何も文句はないのにね。立地の悪さとコンセプトの不明確さが災いして、開業以来ずっと赤字。

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