外国人観光客が殺到するドヤ街釜ヶ崎のすぐ隣、民泊から変死体が発見される街「西成区花園北」を歩く

大阪市西成区

大阪市西成区に所在するドヤ街「釜ヶ崎」、行政的には「あいりん地区」とも呼ばれている簡易宿泊所が密集するこの一帯は概ねJR線、地下鉄堺筋線、南海本線に囲まれたエリアを指してそう呼ばれる事が多いが、南海本線を挟んだ西側の「西成区花園北」もまたドヤ街釜ヶ崎に隣接するエリアでもあり、やはり同様に労務者やホームレスが生活圏としている。

という訳で今回の散策の舞台の始まり、国道26号線と43号線が交わる「花園北」交差点の歩道橋の上でございます。ここから東側が新今宮駅や天王寺方面、南東方向にドヤ街釜ヶ崎があり、西側にある出城、長橋、いわゆる「三開」と呼ばれる北開・中開・南開といった地域、北側~北西側にかけては浪速区の皮革産業地帯である大国町や芦原橋といった非常に濃密過ぎるエリアに囲まれている。そう言えば昔、中開にオウム真理教が進出して道場を構えていたが、今もあるんですかね?

この花園北という地域もそうだが、釜ヶ崎のドヤ街から大国町あたりのワンルームマンションまで、急激に増加する外国人観光客を相手にした安ホテルや民泊が大量に開業していて、ちょっとしたカオス状態になっている。歩道橋の下に目を配ると、大きなトランクを引きずって歩くアジア系外国人観光客がずらりと交差点角にあるホテルに入っていった。

かつては人生の落伍者、身寄りのない天涯孤独な独身男性、生活が破綻して行き場を失った人々にとってのセーフティーネット、最後に行き着く場所として存在していたこの釜ヶ崎という土地も、増えゆく外国人観光客を前にその役割を変えつつある。

ドヤ街釜ヶ崎の目前に立地する南海新今宮駅からは関西空港に直結する電車が頻繁に発着する。外国人観光客にとって、日本に入国した直後に電車一本でアクセスできる非常に便利な土地でもある。駅のホームも地元民や労務者以上に外国人だらけ。年がら年中「YOUは何しに日本へ?」状態。


「西成区花園北」に属するこの一帯も、南海新今宮駅を降りてすぐ西側にある交通至便なエリアという事で、あれよあれよと「民泊」が開業しまくっている。今の大阪は日本で最もインバウンド景気の恩恵を受けている都市の一つではないだろうか。

この通り、かなり見た目に高密度過ぎてヤバめな高層マンション型簡易宿泊所もあって、玄関前に置かれた自転車の数も半端ない。今も釜ヶ崎は日雇い労働者の街である事を如実に示している。

道端には平然と立ち小便しているオッサンもいるし、悪評高い「泥棒市」が毎日早朝に開かれる事で有名な南海電車の高架下もすぐそばである。釜ヶ崎という地域は外国のスラム街と比べてもはるかに治安もマシだし、外国人観光客にとってはちょっとした人間サファリパーク状態で、エキサイティングなニッポン体験が出来る格好の旅行先である。

しかし、インバウンド景気に湧く大阪市内、商売繁盛でよろしおまっせ、と手放しで喜んでばかりもいられない物騒な事件が2018年2月に起きた。

西成の民泊がバラバラ死体遺棄事件の現場になってしまった件

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頭部発見の民泊、監禁容疑で家宅捜索 女性行方不明事件

兵庫県三田市在住の27歳女性が行方不明となり、監禁容疑で22日に逮捕された米国籍の26歳の男が予約していた西成区花園北にある民泊の一室から、スーツケースに入った女性のものと思われる遺体の一部(頭部)が発見された事が報じられた。

容疑者の男は18日までは東成区中道にある無届けのヤミ民泊に滞在していて、容疑者と女性が近くの森ノ宮駅で待ち合わせの上、民泊に女性を連れ込んだ上で監禁現場としていた。その後容疑者は奈良県内の民泊に滞在先を変えていたが、張り込んでいた警察官によって身柄を確保されている。

この容疑者、米国籍と言っても名前が「Bayraktar Evgeny Vasilievich」(バイラクタル・エフゲニー・ヴァシリエヴィチ)というので明らかにトルコや旧ユーゴスラビア、もしくはロシアあたりにルーツのあるもので、アメリカだけに移民なんだろうが、インバウンド景気でホイホイ外国人を呼び込むのは良しとしても、その分入国管理が甘くなっていないのだろうか。

それで、行方不明だった女性のものとみられる頭部が入っていたスーツケースが見つかった民泊施設というのが、花園北一丁目、花園公園の右隣にあるこの建物。報道時は外観がすっかり塗り直されていて見た目が変わっているが、たまたま外観写真を収めていた2017年4月当時はこの通り。「三光建設花園案内所」と看板が掲げられていて、一見不動産屋の所有物件のようだが、飯場のような趣きもある。

この建物は「TEMA GUEST HOUSE」という外国人観光客向けの民泊として使われていて、Airbnbにもページがある。宿泊客の口コミも概ね高評価。

宿泊費用は一泊1,500円、一週間借りても9,450円、月36,000円という破格ぶり。完全に西成のドヤ価格であるが、こういうお安い宿が交通便の良い場所にたんまりある事も大阪の外国人観光客の増加に拍車を掛けているようにも思える。地価の高い東京では同じようにはいかない。山谷のように最寄り駅から10分以上掛かる似たようなドヤが一泊2,300円以上というのが基準価格なのだから、全くもってお安い釜ヶ崎価格。

得てして事故物件として「大島てる」の火の玉が添えられてしまった不運の民泊施設のすぐ隣にある「花園公園」も場所柄だけにホームレスの出入りを防ぐ頑丈な鉄のフェンスでその全面が囲まれており他所の人間が自由に使う事はできない。まるで刑務所のような趣きのある物々しい公園だ。

近所の公園も軒並みホームレスが小屋を建てて住み着いてしまうために、地域の子供の遊び場を守るべく行政も必死こいているのがこのエリアの特徴である。西成区のマスコットキャラクター「スーパーポンポコジャガピーにしなりくん」も安全パトロール中ですよ。

ちなみにドヤ街釜ヶ崎に隣接する西成区花園北には「いまみや小中一貫校」として新たに改編された「大阪市立今宮小・中学校」の校舎もある。東淀川区の「むくのき学園」、東住吉区の「やたなか小中一貫校」と並ぶ特認校として、特別に大阪市内全域から入学可能な学校の一つとなっている。

旧今宮中学校時代には俳優の赤井英和、ボクシング亀田三兄弟の父である亀田史郎、歌手でタレントの柏原芳恵や立花理佐といった錚々たる有名人も輩出している「名門校」である。よもやこんな場所にあろうとは…

なお、いまみや小中一貫校の開校に伴って、近所にあった、まさにドヤ街のど真ん中に立地する「萩之茶屋小学校」が2015年3月末日をもって閉校している。

この界隈には他にも外国人を相手にした安宿や不動産ビジネスが活況を呈していて、このような看板を掲げた賃貸マンションがあちこちに存在している。これまで釜ヶ崎エリアには生活保護を受給する入居者の生活保護費を家賃に宛てる「福祉マンション」に転業する簡易宿泊所が多かったが、近年は外国人観光客相手の商売がメインとなりつつある。

西成区花園北には徒歩圏内にスーパー玉出が二軒ある。そのうちの一軒は国道26号沿いにある「花園店」、もう一軒がJR線沿いにある、福祉マンションと一体化した「新今宮店」。どちらも年中無休24時間営業。得体の知れない激安惣菜が買い放題、ギラギラと下品なパチンコ屋のような内装は「ドン・キホーテ」と並ぶ日本の珍妙なスーパーマーケットとして外国人観光客の人気を呼ぶ。

スーパー玉出新今宮店の向かいにも、明らかに同社の系列であると思しき、ひまわりマークの不動産屋が営業していて「敷金保証金ゼロ」を大々的にアピールしている。お安く移住してお安く暮らせる、旅行者も地元民も日本人も外国人も、どんな訳あり人種でも来る者を拒まない懐の深い街、それが西成なのである。


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