【なにわのベタ踏み坂】大阪ベイエリア屈指のパノラマビューが拝める「なみはや大橋」を歩いて渡る

大阪ベイエリアにはびっくりするほど巨大な橋がいくつもある。尻無川、木津川、安治川といった川の河口にあり、港湾関係施設や工場が集まる都合上、大型船舶を通す必要性から高さの有る橋を架けなければならないからだ。阪神高速4号湾岸線となっている天保山大橋や港大橋は別として、歩行者でも往来可能なものもある。

今回はその中の一つ「なみはや大橋」を紹介する。大阪市港区海岸通と大正区鶴町を結ぶ全長1740メートルの橋だが、最大の高さは47メートル(海面からの高さは45メートル)、勾配は6.9%と結構な急角度となっている。この橋を渡る市バス路線もあり、バスの車窓からこの橋の上の景色を眺める事も可能。

なみはや大橋の入口にサントリー創業の地

しかしこの橋をわざわざ「歩いて」登ってみたい気持ちに駆られない訳がなかろう。親切にもなみはや大橋には歩道が完備されている。地下鉄大阪港駅が最寄りで、そこから10分少々歩けば橋の入口に辿り着く。

ちなみになみはや大橋のたもとには大阪土着企業・サントリーの酒製造工場(サントリースピリッツ株式会社)が鎮座している。明治末期に販売を始め同社をメジャーな存在にした「赤玉ポートワイン」(現・赤玉スイートワイン)の製造を今も続けている歴史ある工場である。風向きによっては若干酔えるんですが、アル中の多い大阪ベイエリアのお土地柄では雇用も生まれるし酒も飲めるしいい事づくしか。

やってみなはれみとくんなはれ (新潮文庫)

サントリーの成功秘話を物語る、山口瞳・開高健著「やってみなはれみとくんなはれ」

サントリーは赤玉ポートワインのヒットで得た利益を元に日本初の国産ウイスキーの開発製造などを手掛けるようになり、国内屈指の飲料メーカーに成長した。このサントリー大阪工場こそが実質的な同社創業の地なのだが、常々環境の悪い大阪ベイエリアだとイメージ的によろしくないのか、全くその旨をアピールしていない。

“なにわのベタ踏み坂”と言われるなみはや大橋

で、なみはや大橋の歩道をだんだん登っていき、ふと振り返るとこの光景である。急坂っぷりが何となくおわかり頂けるだろうか。大阪ベイエリアに多数生息するクソガキDQN集団なんぞはこの急坂をチャリで全力疾走して肝試しをする事請け合いなのだが、今まで死亡事故とか起きてないんすかね。

このなみはや大橋、阪神大震災発生直後の1995年2月から供用開始され、2014年4月に無料化されるまでは大阪市道路公社の管理する有料道路だった。大正区側に料金所を設け普通車100円、原付等は10円というケチ臭い額の通行料を徴収していたが、同社の解散に伴って無料開放されている。なお歩行者とチャリは通行無料なのは変わらない。

さらに橋を登っていくと途中で「への字型」に折れる関係上、橋の頂上手前で急カーブが待ち受けている。この車道は車道で、真夜中にはDQNカーが集まって暴走行為を行っている事請け合いなのだろうが、昼間来る限りは何という事もない。ただ高所恐怖症の人間には、この時点で無理なロケーションだろう。

「なにわのベタ踏み坂」と一部で言われている件、その元祖であるテレビCMのロケで使われた「江島大橋」(鳥取県境港市・島根県松江市)よりも、このなみはや大橋の方が急勾配で見た目がやばいと話題になり、所謂“インスタ映え”的なノリで訪れる観光客がいるらしい。そりゃ原付バイクならフルスロットルかまして登らねばならんだろうが普通車で「ベタ踏み」はオーバーだろ。

なみはや大橋の頂上から眺める絶景

橋のたもとから延々と登っていく事、約10分。ようやく最大高さ47メートル、なみはや大橋の頂上付近まで辿り着くと…あらまあ凄い。360度パノラマベイサイドビューが視界に満遍なく飛び込んで来るのね。昭和45(1970)年に完成した真っ赤なボディのトラス橋「港大橋」も全景バッチリ。

なみはや大橋の歩道部分が東側についている関係上、港大橋などがある海側の景色は見づらくなるが、こちら側だけでも大阪市街地全体が見渡せる絶好の眺めが確保できるので、充分満足である。

北東側には梅田や船場などの都心、オフィス街のビル群が、中程には大阪ドームなどが見えるが、手前の足元はおしなべて工業地帯しか見えない。

もう少し北寄りに視線を移すとユニバーサルシティのホテル群や北摂の山々が見渡せるが、手前の足元には港区八幡屋・港晴・池島などに点在する市営住宅群がわさーっと広がっていて軒並み貧乏臭い街並みが一望できる。

弁天町駅前オーク200の超高層ビルに並ぶ、54階建て200メートル超を誇る港区屈指のタワーマンション「クロスタワー大阪ベイ」、2006年の竣工当時は日本最高層のタワマンだったが、しょぼくれた港湾労働者の街である港区の人口が僅かに回復した要因にもなっている。

さらに視線を東側に持っていくと、同じ大正区内を結ぶ「千歳橋」の向こうに日本一の超高層ビルとして記録現役の「あべのハルカス」がそびえ、その先には奈良県との境をなす生駒山地が望める。

その右手にあるのが、なみはや大橋の対岸側となる大正区鶴町地域。ただでさえ地下鉄駅が離れている交通不便なエリアの中でも陸の孤島と化している大正区の最果て。

橋を降りた先の鶴浜埋立地に「IKEA鶴浜」と「東京インテリア家具大阪本店」が相次いで進出した事で他地域からの買い物客の往来が増えている。しかし自家用車がなくチャリンコにしか乗れず市営住宅で暮らすしかない貧困層にはあまり縁のない店舗である。

で、ここでも足元に目をやると「大阪水上警察署」からのメッセージが。「盗難暴力はすぐ警察へ届けよう」…なんですかここは、海賊でも出没するんですか…

ちなみに大阪市内には先程目にした千歳橋、それと千本松大橋、木津川大橋といった橋が歩行者利用可能で、いずれも市内を見渡せるベイサイドビューが楽しめる。全部、大正区に架かってる橋ですね…


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DEEP案内シリーズ管理人。大阪ベイエリアの貧民窟育ち。独自のひん曲がった視点で街歩きを続けております。2008年より上京。関西に留まらず全国、海外に取材対象を薄く広く伸ばして来ました。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。
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