昭和の面影色濃く残る神戸の中心市街地「湊川公園」とその周辺の下町商店街を歩く

京阪神三都市中、外国人観光客に不人気で一人負けしていると陰気臭い話題には事欠かない神戸市…しかしそんな街だからこそ残る良さというものもある。神戸市街地のうち最も歴史の古い新開地から湊川のあたりは味わい深い土着的下町の商店街が縦横無尽に広がっていて、我々のような下町探索好きを飽きさせない。

今回やってきたのは神戸のオールド歓楽街・新開地の目と鼻の先にある街「湊川」である。ここは神戸市営地下鉄山手線湊川公園駅および神戸電鉄湊川駅が交差し、神戸市兵庫区の行政中心として、また湊川商店街を代表とする下町アーケード街が広がる生活感の濃ゆい一帯が広がっている。

神戸電鉄線の始点は新開地ではなくこちら湊川駅になります

まずこの場所を訪れるためには新開地駅から労務者が徘徊する酒臭いアーケード商店街やその隣の福原町の如何わしい一帯なんぞをヨロヨロ千鳥足で歩いてもなんとなく来る事ができるが、マイナー感漂う神戸電鉄の駅をひと目拝むのも一興である。代わり映えのしない、なんとも陰気臭い駅舎である。

実は神戸電鉄線の区間はここ湊川駅までで、新開地駅とのひと駅分だけが「神戸高速鉄道線」扱いとなっていて運賃が余分に取られる仕組みなのは地元民しか知る事のない“不都合な真実”。隣の神鉄長田駅からここまで来ると運賃は170円だが、たった400メートルしか離れていない終点の新開地駅まで行くと280円に跳ね上がる。そんな神戸高速鉄道にお怒りの神戸市民の声もチラホラあるが、一向に改善の兆しがない。

そんな神戸高速鉄道の二重運賃システムがネックになってしまっているのか、駅構内も利用者がてんで少なく閑散としているのが特徴である。こう見えてもかつては三宮が発展する以前、神戸で一番の繁華街だったと言われていた地域なのに、見る影もない。

神鉄湊川駅構内には昭和臭プンプン漂う看板を掲げている「神鉄横丁」なるアルコール臭い一角が存在する。湊川駅周辺にはここだけに限らず「ミナエンタウン」だの何だの雰囲気の濃ゆい飲み屋街が豊富にある。ミナエンタウンは別の機会に紹介することにして…

こちら神鉄横丁もまたイマドキな世代には全く相手にされなさそうな旧態依然とした飲食店で占められている。我々から見ると貴重な昭和レトロの宝庫と言える空間だが、観光客にもそっぽを向かれる場所でしかなく前途は厳しそうだ。で、こんな飲食街の真上に広がっているのが…

神戸市兵庫区の中心、天井川を埋め立てて作られた「湊川公園」へ

「湊川公園」という、神戸市兵庫区の中心に位置する都市公園だ。明治44(1911)年開園という非常に古い歴史のある公園であるが、そもそもここは天井川であり水害が絶えなかった旧湊川の埋め立て工事によって作られたという稀有な経緯を持つ。山手幹線を跨いで新開地商店街入口まで連なる、南北に長い公園である。

そこには楠木正成公の騎馬像が厳しげに鎮座している。動物園や博物館こそないが、大阪で言うならここは間違いなく「天王寺公園」に値する場所と言っても良い。ちなみに昭和43(1968)年までは「神戸タワー」と称する展望塔もこの公園にはあった。まさしく大阪の通天閣を意識した造りであったというが、今では跡形もなくなっている。

…というのもこの公園、神戸における日雇い労働者の街「新開地」の生活圏内にあって、天王寺公園よろしく園内で昼間っからタバコや酒をかっ喰らいながら将棋に勤しむ地元のご老人の溜まり場となっているのである。

そんな庶民的ムード全開な都市公園に隣接する形で神戸屈指の台所・湊川商店街が隣接しており神戸下町民の衣食住が渾然一体となった空間がここぞとばかりに展開する様が見られるのが素晴らしいのである。個人的には間違いなく神戸で一番好きな場所かも知れません。

湊川公園に隣接して神戸市兵庫区役所や湊川商店街に附属するモール「神戸パークタウン」などがあり、車で役所や商店街にやってくる買い物客のための駐車場まで完備されている。観光色ゼロ、ひたすら地元民のための場所となっている。

地下鉄湊川公園駅真上の「公園東商店街」

さらに湊川商店街の入口に接する山手幹線側に出ると、片側三車線の幅広道路の両側に「公園東商店街」というアーケード街もある。地下鉄湊川公園駅の真上にあるためか買い物客や通行人の姿で賑わっている。相変わらず下町感全開でございますけれども…

特にこちら「洋食の赤ちゃん」の店先にやたらめったらと地元民が行列しまくっている姿を拝む事ができよう。ガッツリ盛りのチキンカツやオムライスが名物料理である。店の名前とは裏腹に赤ちゃん連れのママには非常に入りづらい店構え。

しかもこの洋食屋の前が横断歩道になっているにも関わらず隣のマクドナルドと合わせて利用客がチャリンコを容赦なく置きまくるものだからご覧の通りのゴチャゴチャっぷりに唖然とする事必至だろう。これがマジモンの神戸下町クオリティですよ。大阪とええ勝負しとる。

カツ丼と天ぷらが美味いらしい、渋い佇まいの老舗大衆食堂「お食事処 江戸家」も興味を惹かれる。しかも貸衣装店を兼業しているあたりが唯一無二感半端ない。「赤ちゃん」が混んでて入れなかったらここが二番手か。

他にも公園東商店街沿いには年季の入った食い物屋や持ち帰りのあられ専門店だの昭和臭溢れる名店が揃っている。オシャレなイメージがまかり通っている神戸だが、そのイメージを完全に破壊するオツな下町。横浜で言ったら横浜橋とか松原商店街みたいな位置付けですかね。

下町らしく駅前一等地からジャンジャンバリバリけたたましいパチンコ屋がくたびれた昭和の繁華街ぶりを盛り立てている。

新開地エリアに隣接するせいか労務者向け立ち食いうどん屋みたいなのも多いところがご愛嬌である。福原町の裏名所もすぐそこ。オッサン連中の“飲む打つ買う”が捗る街でございます。


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DEEP案内シリーズ管理人。大阪ベイエリアの貧民窟育ち。独自のひん曲がった視点で街歩きを続けております。2008年より上京。関西に留まらず全国、海外に取材対象を薄く広く伸ばして来ました。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。
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