神戸の台所・湊川商店街の昭和遺産!皆様のショッピングセンター「ミナイチ」が2019年3月末に解体されます

神戸最強の下町ゾーンと言っても過言ではない、神戸市内屈指の商店街密集地帯「湊川商店街」とその周辺を巡るレポート、とうとう五連チャンとなってしまいましたけれども、その最後を飾るのがこちら。

湊川商店街と東山商店街の結節点にそびえる、その名も「ミナイチ」という市場である。ここは神戸で最初の公設市場として大正7(1918)年に開設されたのをルーツを持つ、100年もの歴史を誇る古株市場。戦災で市場が焼失した後に「湊川市場」として再開したが、昭和45(1970)年に10階建ての「市営松本住宅」と一体化した今の「湊川協同組合ビル」となり、カタカナ四文字の「ミナイチ」の愛称がついた。

また市営住宅かいな…といつもの展開にあんぐりでございますけれども、万博イヤーにまで遡れば、それこそ時代の先を行く住環境を提供する、庶民の憧れの的だった「団地」というものも、半世紀きっちり経つかどうかの今となっては他に行く宛もない高齢者の終の棲家と化しているのがオチである。

圧倒的な“70年代”感!昔のまんまですやん、ミナイチ

このミナイチ(湊川協同組合)は周辺商店街と同じく「神戸新鮮市場」と称される区画の一部を成しているのだが、いかんせん築年数が古いせいか、年がら年中買い物客が殺到するこの商店街にありながら、人の流れがなんだか淀んでいる。

とは言っても建物の外側に面する八百屋なんぞはかなり勢いのあるお野菜陳列っぷりで、相変わらずの下町テンション全開感を楽しむ事ができよう。とりあえず八百屋の脇からミナイチの一階部分に入ってみましょう。

一階には昔の公設市場らしさそのまんまに、八百屋に魚屋に肉屋に天ぷら屋だの惣菜屋だのがあればキムチ屋なんぞもありますよといった感じで、そこにうどん屋やラーメン屋といった飲食店も混じっている。

とある八百屋の店先には「本日のやけくそ」と称して大量に袋詰めされた椎茸が投げ売りされていました。こういった“やけくそ”は嫌いじゃないですよ…ええ…

特にミナイチ一階で「うどん職人」だの「ラーメン職人」だの書いている食い物屋が何軒かあるが、これは地元のNPO法人が運営している「就労支援事業」らしく、下町らしい場所柄なんでしょうが、なんだか身につまされますね。

「職人街道」と書かれたTシャツを来ている方々があちこちに見られますが、食い物屋の関係者でしょうか。しかしうどんやラーメン、丼モノ各種、どの店でもMAX500円で食えますねんで。やっぱり安いよね…と思いつつ、見た目にもそんなに流行っていないのが残念である。

そこかしこに垣間見える「50年前のセンス」よ…

それよりミナイチが特筆すべきなのは、やはり昭和45(1970)年に完成した当時の佇まいがそのまんまの形で残っている事。この天井からぶら下がっている案内板とか見て下さいよ。古めかしいにも程がある。

市場の入口にあるこうした看板までいちいち味わい深い。逆にこれだけのものが半世紀近く経っていても、いっぺんもリニューアルせずに残っていたという事に感心する。

おまけにエレベーター横の注意書きプレートまで「乳母車もどうぞ」だもんな。今どき乳母車はないでっしゃろ。この呼び方をする世代も平成の終わりとなった今ではもはや絶滅危惧種か。

地下売り場へ繋がる階段の周りもこの通りのタイムスリップ感を放っている。いささか古くなりすぎたせいか若干寂れてしまっている。東山商店街の人だかりと比べると、随分静かになったものだ。

さらにもう一箇所の階段の周りも…なかなかキテますよね。防火扉の周りに八百屋とかがダンボール積みまくっていますが、市場のどこかで火事が起きたらアウトですよねこんなんじゃ。

ミナイチ地下一階もキテますキテます

そして目の前の階段をトコトコ下って地下一階へ。うーん、この矢印がくどいくらいのアプローチもたまらん…

そんな地下への階段を降りきったら手打ちうどん・そば「江戸」の看板がデデーン。素晴らしい展開である。ウエルカム・トゥ・70’sな感じです。あと付け的に小さく「ぉ」と付いていて店名変更したのか何だか知りませんけれども、「なかじま お江戸」というそば屋があります。

この地下一階も負けず劣らず雑然とした佇まいである。そこにもお好み焼き屋だの安定の炭水化物補給スポットが軒を連ねていて下町民の胃袋の需要を満たしている。サイドメニューに「牛すじ」推しなのが“ぼっかけ”食文化旺盛な神戸っぽいです。

そそられる佇まいの洋食と中華の店「明石軒」も創業40年の古株店舗である。ちゃんぽんもヤキメシもハンバーグもオムライスもここ一軒で全部いける。地下の飲食店はこの二軒と先述の蕎麦屋くらいしか営業していなかった。

定食屋「ありま」は既に廃業の模様。チャウチャウちゃうんちゃう?的に申し上げますけども、ありゃま、ありま、ありまへんねん…

飲食店が並ぶ通路の向かい側にはこれまた雑然と置かれた中古家電の数々が地下売り場の大半の面積を陣取っている。昔はもう少し別の店が入っていたのかも知れませんけれども、低所得者層の住まう市営住宅の真下にある市場なのだから、リサイクルショップが流行るのも道理である。

ショック!ミナイチは2019年中に解体!見納めるなら今のうち

そしてよくよく見れば地下売り場の多くのテナントが既に廃業しており空虚な姿を晒しているのが分かる。…実はこのミナイチと市営住宅が入る「湊川協同組合ビル」、翌年2019年中に解体され、新しく建て替えられる事が決まっている。残りわずかの命だったのだ。

ミナイチの管理者である湊川協同組合は商店主の高齢化が極まる中、組織の維持が難しいとの理由で2019年3月末日をもって解散となり、この市場も閉鎖される。残念ながら現物が見られる時期も残り少なくなった模様だ。これは急ぐしかない。

ミナイチ解体後は新たに14階建ての分譲マンションが備わった複合施設として再開発され、2022年3月末までに完成予定。階上の市営松本住宅も廃止される予定だ。まかりなりにも神戸市内の一等地であるはずのこの土地、ボンビーな市営住宅ばかり建ててもしょうがないわけで、街の人口減少を食い止めるべくファミリー向けの分譲マンションを建てようと舵を切った形か。果たして、吉と出るのか…


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DEEP案内シリーズ管理人。大阪ベイエリアの貧民窟育ち。独自のひん曲がった視点で街歩きを続けております。2008年より上京。関西に留まらず全国、海外に取材対象を薄く広く伸ばして来ました。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。
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