【大阪市無駄物件図鑑】三セク杜撰経営で破綻した「大阪ドーム」(現・京セラドーム大阪)

大阪市西区千代崎に造られた「大阪ドーム」は1997年3月1日にオープン。世界初の可動天井でコンサートからプロ野球まで多目的に使用できることを売りにした収容数5万人の超巨大ドーム、総工費は696億円にも上る。大阪市が20%以上出資する第三セクター「大阪シティドーム株式会社」が運営していた。

ネーミングライツは京セラへ、球団もろともオリックスに身売り

大阪ドーム完成後、それまで藤井寺球場を本拠地にしていた「近鉄バファローズ」がオープンを機に本拠地をここ大阪ドームに移転。しかし球団の経営難を理由にオーナー会社の近鉄(近畿日本鉄道)がオリックスに球団を身売り。バファローズのファンは猛烈に球団合併に反対して抗議集会も開かれたものの、赤い猛牛軍団はもはや市場に運ばれる仔牛のごとくドナドナドーナードーナで2005年からは「オリックス・バファローズ」である。

だがバファローズが身売りしなければならなくなった原因こそが大阪ドームへの年10億とされる高額な年間使用料だったのである。過剰に豪華な施設は維持費もバカにならない。藤井寺から動かなければよかったのに…

また大阪ドームの隣には大阪ガスの社屋と同社保有の巨大ガスタンクが三基鎮座している。大阪ドームシティのある土地は元々大阪ガス発祥の地であり「大阪ガス岩崎工場」の跡地に整備されたものだった。昭和39(1964)年までここで都市ガス製造が行われていたとされる。多い時には5万人クラスの人員を収容するドーム球場のすぐ隣にガスタンクが並んでいる光景は見る人が見ればある意味驚くだろう。

コンサートでジャンプすると周辺に人工地震発生

さらに追い討ちを掛けたのが、ドーム周辺の「人工地震」。まさかとは思うが、ドームでコンサートをやっている最中、観客が一斉にジャンピングすることで、あろうことか周辺に震度1-3程度の地震が発生。周辺住民からジャンピングを伴うコンサートはやめてくれとクレームが入った事があるのだ。これは大阪ドーム周辺が元は干拓地であり地盤が弱いという事に起因するということだ。このことで、GLAYをはじめとしたビッグアーティストのコンサートができなくなり、さらに収入源を減らしてしまうこととなる。

もはや多目的ドームの名目も失われ、自慢の可動天井「スーパーリング」は供給会社の部品生産中止でメンテナンスができなくなったため、もしも故障した場合動かせなくなる恐れがあるので、地上60メートルの位置で固定させたままの状態だ。

そして、その運命を待ち構えていたかのように、第三セクター「大阪シティドーム株式会社」は、同じく大阪市の第三セクター会社「クリスタ長堀」と時期を同じくして、2004年11月1日付で債権放棄で特定調停申し立て、つまりご破算。

大阪ドーム改め「京セラドーム大阪」

三セク杜撰経営で無念の破綻を迎えた後の大阪ドームはオリックスが90億で施設を買い取り、大阪ドームの命名権を京セラ株式会社と契約が締結され、施設名も「京セラドーム大阪」に変更される。大阪市側は108億円の債権放棄。90年代バブル期の乱開発で大阪市政に深い爪痕を残した赤字遺産の一つとして刻まれた。

イオンモールの前身、ガラガラモール「パ・ドゥー」を覚えているか

大阪ドームの目の前にあった複合アミューズメント施設・大阪ドームシティ「Pa・dou」(パ・ドゥー)。大阪ガス子会社とセガの共同出資で運営されていた施設である。ゲーセン「セガアリーナ」やボウリング「BOWL123」「びっくりドンキー」などが入居していた。

東京・後楽園の「東京ドームシティ」のような場所を意識して作られたのだろうが、モノの見事に失敗している。パ・ドゥー時代の悲惨な状態を知る者も今となってはあまり居ないだろう。ピエリ守山以前にも悲惨なガラガラモールが大阪市のど真ん中にあったという事実をここに記す。

元は大阪ドームのこの場所で営業していた郷ひろみプロデュースのイタメシ屋「SOGNI di SOGNI」の残骸。2003年6月に心斎橋に移転してしまい、跡地が長らく放置状態に。民間企業ならば必死で巻き返しを図るか不採算施設だと読めばとっとと潰すのだろうが、当時の大阪ドームの経営者は悪名高き大阪市の第三セクター。何の対策も行われなかった。

このどうしようもない廃墟モールが取り壊されたのは「阪神なんば線」(当時の名称は阪神西大阪線)の建設工事が行われた2007年のこと。それから「イオンモール大阪ドームシティ」に生まれ変わったのは2013年5月31日のことである。

いまや大阪ドームシティの中核施設と言える存在となったイオンモール。大阪市中心部にこれだけの規模のモールが新設されるのはある意味珍しい。特にドームがコンサート開催中の時にはファンでごった返す。我々が行った時は韓国の音楽グループ「防弾少年団」(BTS)のファンがハングルの書かれたうちわを手にあっちゃこっちゃうろつき回っていたんですが、やっぱり関西の方がBTSファンが多いんでしょうか。さすが大阪民国ですね。

大阪ドームの中にもあったガラガラモール

696億円も掛けてつくられたのに可動屋根も動かせないわ、ジャンピングで地震が起こるからとライブイベントもできない、そんな可哀想な大阪ドーム。その建物の中もかなりキテるのだが、「グリンドムモール」というショッピングモールが2階に入っていた。(現在はスタジアムモールに名称変更)

グリンドムモール入口の案内板に書かれている通り、案の定大阪市の外郭団体がテナント穴埋めを行っている。「(財)大阪市体育協会」「大阪市スポーツギャラリー」、あとはファーストフード店とうどん屋とレストラン、スポーツ店が気持ち程度入っているだけである。

グリンドムモール内に入ってみる。本当に誰も居なさ過ぎて笑えるのだが、イベント開催時はもう少しマシなはずであろう。そう願いたい。ちなみにグリンドムというのは大阪ドームシティ開業当時にいたはずの宇宙人の格好をしたマスコットキャラクターの名前だったはずだが、経営者が変わった今となってはもはや封殺された存在である。

パ・ドゥーもたいがい酷かったが、グリンドムモールの中も日曜日ですらこの閑古鳥状態。南港のアジア太平洋トレードセンターのように決して都心から距離があるわけでもないのに、悲惨極まりない。

大阪ドーム自体が普通のスタジアムに留まらず、一大アミューズメントゾーンとしてアテ外れに大風呂敷を広げてしまった結果の成れの果てである。まさに三セク運営の弊害と言える。東京ドームシティのようにアソボーノ的なお子様向け施設の一つでも置いておけばだいぶ状況が違っていたと思うのに、当時の経営陣はアホですよね。

で、やはりなのだが、南港のアジア太平洋トレードセンターなどと同様、誰も入らないテナントを穴埋めする形で大阪市の公的施設が入居している。「大阪市スポーツギャラリー」。しかし大阪ドームで最も笑えないネタなのが、大阪市の市職員互助組合の組合員用に特別観覧VIPルーム7室が公費で用意されていたという話。大阪市職員厚遇問題の内情は実に酷い。

三セク杜撰経営で大阪ドームを破綻させた張本人である大阪市は、現在大阪ドームの運営から全て手を退いており、代わりにオリックス不動産の関連会社が施設を運営している。

第二のフェスティバルゲートか!幻の屋内遊園地「シムランドQ」

巨大な大阪ドーム。その9階部分にあたる、外から見ると蛇のように周囲を取り囲む屋根の内側に、かつては屋内遊園地があったことは、今の大阪市民でもご存知な方は多くないだろう。
今ではそこには外周600メートルの巨大スペース「スカイホール」が存在するのだが、以前は「シムランドQ」という幻の屋内遊園地が存在していたのだ。まさに隠れた第二の「フェスティバルゲート」である。

かつて「シムランドQ」があったドーム9階へ通じる直通エレベーターも使われず放置状態。
あまりにマイナー過ぎて知らなかったので「シムランドQ」とキーワード検索すると、その事について触れられたウェブページや写真が僅かしか表示されない。あえて有力なものとしては下記記事くらいしか出てこなかった。

野球場テーマパーク化の先駆け? 大阪ドーム・シムランドQにあった幻のジェットコースター

この記事によるとシムランドQは大阪ドームシティ開業後の僅か2年くらいで閉鎖されてしまい、その後は多目的ホールとして扱われているという事だった。あの中にジェットコースターがあるという噂は当方も耳にしていたのだが、ジェットコースターでなく「スカイサイクル」だったと記事内で訂正が入っている。同じく大阪市の三セクで破綻した「フェスティバルゲート」のような幻の遊園地が、大阪ドームの中にあった事だけは確かだ。


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DEEP案内シリーズ管理人。大阪ベイエリアの貧民窟育ち。独自のひん曲がった視点で街歩きを続けております。2008年より上京。関西に留まらず全国、海外に取材対象を薄く広く伸ばして来ました。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。
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