ジャンジャン横丁の入口の道端でいろんなものを売ってる「霞町地下道の露天商」の十年を見る

労働者の街からバックパッカーの街へ変貌しようとしている、大阪市西成区にある日本最大のドヤ街「あいりん地区」こと釜ヶ崎と、そこに隣接する新世界エリア。この界隈では衣食住にまつわる、ありとあらゆるものが“道端”で売られている。そのごく一部を紹介しよう。

地下鉄御堂筋線動物園前駅前からジャンジャン横丁に至る道、そこにはいくつも怪しげな露店が立ち並び、道行く人も労働者風のオッサンばかり、そんな風景が当たり前のように染み付いているのが「西成・釜ヶ崎」なのだが、近年はそこに隣接する新世界エリアに、昔からいる労働者よりも観光にやってくる外国人の姿の方が目立つ。

あなたは「アヒルの新聞屋さん」を覚えているか

かつて、動物園前駅1号出口の階段を上がった先に掘っ立て小屋を建てて商売をしていた「アヒルの新聞屋さん」。労働者の街・釜ヶ崎で長らく新聞雑誌を販売していた個人商店だったが、これも公道上を不法占拠している物件なのは言うまでもない。なお、この写真は2007年某日に撮影したものである。

店の脇には「アヒルの新聞屋さん」の店名通り、檻に入れられたアヒルの子が3羽も…店の看板アヒルとして活躍しているようだ…どうでもいいが、結構臭いし、写真撮ろうとすると新聞売りのオバチャンがめちゃくちゃ怒ってきます。勝手に道路を占拠しているくせに…ちなみに2013年頃にはこの新聞屋の掘っ立て小屋は撤去され、消えてなくなりました。

だが「西成・釜ヶ崎」に来て、こんなくらいで驚いていたらまだ甘い。釜ヶ崎のあちこちでは、盗んだ新聞やゴミ箱から拾ってきた雑誌を格安で売るヤミの雑誌店も少なからず存在する。一番有名なのが南海線沿いの泥棒市だが、もちろんそこだけではない。

新世界ジャンジャン横丁から飛田新地に抜ける南北の道は、そこで暮らす労働者達の生活の動線である。そこでは、衣食住の全てが最低の出費で賄える、まさしく貧乏人パラダイス。

この謎の露天激安衣料店も昔からお馴染みの光景だった。どこで仕入れたかわからん服だが、一着300円は破格。西成クオリティにはユ○クロですら歯が立たない。だが現在はこの場所も綺麗に整備されてしまい、すっかり露天商は追われてしまって商売が出来なくなっている。

ジャンジャン横丁の入口・霞町地下道は露天商の溜まり場だった

ジャンジャン横丁(南陽通商店街)の入口となるJR線のガード下「霞町地下道」にも、一昔前には正体不明の謎の露天商が大勢並んでいる光景が見られた。天王寺から新世界の界隈はかつての「青空カラオケ」といい、路上生活者が大量にいたせいで、この場所だけはいつまでも戦後の混乱期のようなカオスな生活様式を残していた。

こうした露天商は違法店舗である事は百も承知ではあるが、旅行者の目には情緒豊かな光景にも映るのも確かである。隣の韓国に行くとこんなの至る所で見かけるし、アジア諸国では別に珍しくもなかろう。むしろアジア系外国人観光客に人気が高い大阪という街は、こういう雑多な光景に親近感を覚えるからだという説もある。

もちろんこんな注意書きの看板なんぞ、日本語で書いてあっても誰も読むはずがない。戦後から今の今まで総じて無法地帯だったのである。ちなみに霞町地下道は9時から24時まで歩行者専用道路となっております。

注意書きや張り紙の数々までいちいちDEEP過ぎる霞町地下道

フリーダム過ぎる光景が当たり前のように見られた霞町地下道、壁に貼られる張り紙までやたらと濃ゆい。17歳少年家出人が「たずね人」として張り出されていたりして、今頃何しているのか知りませんけれども、雑多な人種が流れ着くこの土地ならではの張り紙なのでしょうか。

霞町地下道における露天商も年々規制が厳しくなってしまい、2018年の今となってはもはや目にする事が出来なくなった。「道交法では 道路使用許可なく 露天商 路上ライブ 行商を摘発されたら 3ヶ月以下の懲役 又は5万円以下の罰金です 大阪府警本部」の警告文。とにかく警察と行政が徹底的に取り締まる覚悟でいるようだ。

同じ字体でタバコやゴミのポイ捨てに注意を促す張り紙も見られた。「ダメよ~ダメダメ」と使い古された流行語が記されているが、この写真は2014年冬の撮影なのでご了承頂きたい。しかし先の張り紙、本当に大阪府警本部が作成した張り紙かどうか疑わしい気がしてきた。まあええか。

これらの張り紙、隣接するジャンジャン横丁(南陽通商店街)の関係者が貼り付けているのかと思われるが、「自治会役員の影響で精神不安症が居住中」などと一言余計な一文が記された注意書きの張り紙は何なんでしょうね。

さらにガード下を抜けた先には酔っ払いが多い当地特有の事情からか「トイレはパチンコの前に有る 10m左」とわざわざ公衆便所の場所を教える手書きの案内看板まで置かれている始末。それはいいのだが「チ○チ○破裂するで!!」とは何事なのか。やはりこの土地は大阪の最暗黒部だ。

急速に浄化されていく観光地・新世界エリア

ともあれドヤ街釜ヶ崎に隣接する新世界エリアへの入口となるのが、この霞町地下道である事はこれからも変わらない。この土地を長らく観察してきた身としては、もう昔の面影がさっぱり無くなり、小綺麗な格好をした観光客ばかりが闊歩する、普通の街になってしまったのかという思いすらある。

2006年某日に同じ霞町地下道の様子を映した写真と見比べて欲しい。道行く歩行者は物の見事にオッサンしかおらず殺伐度が全く違っている。露天商も今より怪しい品物を置く連中が多かった。偽ブランド品とか、コピーDVDみたいなものも平気で並んでいた記憶がある。

10年前の写真と今を見比べると、この「新世界国際劇場」の看板といったものもいつの間にか撤去されていたり、細かい部分で「浄化」が進められているという事に気づくのである。そして近い将来新今宮駅前の空き地に「星野リゾート」の高級ホテルがデデーンと開業して、とどめを刺されるのだろう。新世界エリアはますます「商売繁盛」なのだろうが、有る種の情緒が失われる事に、昔の姿を知る人間からすると一抹の寂しさを覚えるのである。


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DEEP案内シリーズ管理人。大阪ベイエリアの貧民窟育ち。独自のひん曲がった視点で街歩きを続けております。2008年より上京。関西に留まらず全国、海外に取材対象を薄く広く伸ばして来ました。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。
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