一昔前を思い返せば根っからの庶民の街である「大阪市内」など、富裕層には到底住むに適さず、昭和になる以前の時代にまで遡っても当時の富裕層は西宮や芦屋あたりの山の手に快適な住まいを求めて移り「阪神間モダニズム」というセレブ文化を生み出した。その歴史を牽引してきたのは小林一三が創業した阪急東宝グループであり、大阪のキタの都心・梅田から宝塚・神戸・京都方面に伸びる阪急電鉄は関西の上流・中産階級の通勤通学の足として古くからこの地に存在し続けてきた。
しかしそんな構図も百年時が経てば変わるものらしい。信じられない事だが、阪急グループが淀川を渡った先の川向かいにある“下品な歓楽街”として悪名を轟かせる「十三」(大阪市淀川区)の駅前に、なんと高級タワーマンションを建設しているというのである。今月4日に報道陣に公開された「ジオタワー大阪十三」のモデルルーム、39階建ての最上階の角部屋の販売価格は“3億円超”を想定していると記事には書かれている。
確かに十三は阪急電鉄にとっては主要3路線が分岐する一大ターミナル駅であり、紛うこともない同社のシマである。ただこれまで十三という街のイメージがあまりに酷すぎて、ここにガチセレブを住ませるタワマンを建てるとは一体どんな神経をしているのかと当初は疑ったが、そのヒントは2031年度に開業予定となる「なにわ筋線」にあるようだ。JR大阪駅のうめきた地下ホームとJR難波駅および南海新今宮駅を結ぶ新線だ。さらにそこから延長する形で十三、新大阪方面を繋ぐ「阪急新大阪連絡線」も併せて計画されている。
つまり、新駅開業によってこれまで梅田以外への大阪市中心部へのアクセスが微妙だった「十三」が難波へ、さらには関西空港、新大阪に直結する。今後、十三の街が“関西の武蔵小杉”に化ける可能性が出てきたのである。
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