【枚方市】香里団地の外れにあるアートなレトロ市場「ABCセンター」を見る

大阪・京都の中間に位置し人口40万人を誇る街「枚方市」の中でも、昭和30年代に造成された関西地方でも屈指の郊外型団地の先駆け「香里団地」を見物に行くためにやってきた道すがら、とある奇妙な空間を目にした。

手前に田んぼが広がり、奥には香里団地の高層住宅や周囲の建売住宅がそびえる、都会と田舎のハイブリッドっぷりを見せる枚方市ならではの風景の中に、その空間がある。よく見ると「ABCセンター」と書かれている。

これは一体なんのセンターなんでしょうか、一瞬パチンコ屋かとも思ったのだが、その手のジャンジャンバリバリ感がない。建物の上の古風な立体看板はなんとなく「特製エスビーカレー缶」のあのフォントに近い感じがある。

香里団地に隣接する超絶レトロ商業施設「ABCセンター」

あまりに気になったので件の建物に近づいてみることにした。建物自体は相当古いには違いないが、看板は真っ黄色の原色系で真新しいし、壁一面にはゴテゴテのアートが描かれている。これは、ショッピングセンターの「センター」でしたか。

ABCセンターは西棟が地上三階、東棟には地上一階、地下一階建ての二棟が並ぶこじんまりとした商業施設だが、隣り合う香里団地と共に既に半世紀以上の歴史を刻んできた場所である。しかし近隣に大きな駐車場のあるスーパーや各種商業施設が増えた影響で近年は買い物客も減り、よくある「団地のそばの寂れた市場」の体裁を成している。

さすが「ABCセンター」だけあって英会話教室が入っているんですが、元からこの名前でやっているので、英会話教室は後付け的理由になってしまいますがな。

長らくABCセンター地下一階で営業していた「ABC食鮮館」が撤退し、その後に入ったスーパー「クローバー」も開店から1年足らずでまた撤退、という厳しい現実。すぐ近所にでかいスーパーがありますからね。この立地でスーパーマーケットはもう難しいかと思われる。

スーパーの店先の果物屋が張り出している手書きのポスターもまた「半世紀前」感を漂わせている。目玉テナントのスーパーマーケットがあまりに来客が少ないのが気になっていたが、案の定スーパーは訪問から数ヶ月後に閉店してしまっていた。

すっかり年季を増して寂れかかったようにしか思えないショッピングセンターがゴテゴテにリフォームされているその理由はすぐに分かった。野村工務店という交野市の住宅メーカーがABCセンターの建物をまるごと一棟買い取り、新規店舗を誘致する試みが行われているのだ。

建物左側の大きなアーケードを潜るとそこは飲食街となっている。香里団地に隣接する宮之下町の住宅地の住民が行き来する通路にもなっているようだ、

たこ焼き屋だの居酒屋だのが適当に入った西棟、朝10時から夕方5時までしか休憩できない「休憩室」なんかもあって、なんとも空気がゆるい。

アーケードを抜けて裏手に回ると、さきほど道路脇から見えた部分が現れる。ここにも原色多用系のペインティングが一面に施されている。女性の姿と植物が描かれた、ハワイアンともラテン系とも思わせる独特のアートである。

ABCセンターの外壁をオサレに彩っているのは神奈川県平塚市出身のペイントアーティスト・オノルイーゼ氏によるもの、だそうで、まあなんとなく「湘南乃風」的な感じが致しましたけれども、寂れた空間に新たな生命が吹き込まれたかのようになっております。

…とは言え、スーパーマーケット以外の東棟一階テナント部分は結構な広さがある。当初は公設市場のようなノリで建てられたのだろうが、管理会社が代わり真新しい看板が設置されている。

そんな一階テナント部分を見物していくことにする。やはりこの中もガラーンとした感じですけれども…

我々が訪れたのは2017年夏のことで、その当時はあまり店も増えてなかったが、現在はベトナムフォー専門店だのオサレカフェなどがぽつぽつ増えているようで、寂れたショッピングセンターがにわかに活性化されつつある模様。

この手のレトロ市場によくあるテナント、後期高齢者向けの怪しい健康器具や食品を売る業者の店…は見当たらなかったが、日本共産党の事務所ならありましたよ。

一部は見事なシャッター街と化している箇所も見られる。これがどのように変わっていくのだろうか、新たなABCセンターの管理者となった住宅メーカーの手腕が試されるところだ。

京阪電車の駅からも遠い、辺鄙な場所にある団地に寄り添う古株の商業施設、それでも民間企業の手で建て直しを図ろうと頑張れるケースもあるのに、JR高槻駅前の一等地を無駄に遊ばせている「グリーンプラザたかつき」を運営する三セク会社のやる気の無さは一体何だろうと考えさせられる。

「ABCセンター」復活の立役者、交野市の住宅メーカー「野村工務店」が製作した、えらい気合の入ったPR動画もありますね。今後どのようになっていくか見守りたい物件ですわ。


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DEEP案内シリーズ管理人。大阪ベイエリアの貧民窟育ち。独自のひん曲がった視点で街歩きを続けております。2008年より上京。関西に留まらず全国、海外に取材対象を薄く広く伸ばして来ました。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。
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