【大阪市無駄物件図鑑】大阪南港の大型バブル遺産・巨額赤字で破綻した「アジア太平洋トレードセンター」

大阪市の人工島・南港「咲洲」。そこに一際目立つ、西日本最大の高さを誇る「WTCコスモタワー」(現・大阪府咲洲庁舎)の向いに、巨大商業施設「アジア太平洋トレードセンター」(ATC)がある。どちらも官主導の計画で作られた超ド級の「ハコモノ」で、大阪市の第三セクターが運営する施設だ。

ATCは本来ならばその名の通り、アジア・太平洋地域の国際貿易拠点として数多くのテナントを誘致し、大阪を国際都市たらしめようという名目で作られたはずのビルだった。総工費は驚きの1465億円。施設の性質から、この建物全体が保税地域の許可を受けており、貿易関係業者のテナントが多数入居している。

だが1994年の開業当初から、都心から交通便の悪い南港コスモスクエアの中にあり、梅田から地下鉄で片道480円掛かると言う「OTS(大阪港トランスポートシステム)線」二重料金制度も相まって、企業の誘致は全くはかどらなかった。(OTS線の二重料金は2005年7月に解消され、現在は大阪市交通局が運営している)

大阪市最大の赤字遺産「アジア太平洋トレードセンター」

毎年凄まじい金額の赤字をはじき出し、2003年6月に、WTC(大阪ワールドトレードセンタービル)、MDC(湊町開発センター)の3社合同で計580億円の債務超過を抱え、特定調停を申請、事実上の「破綻」を迎えてしまった。その後の2004年に民間企業出身者を新社長に取り入れ、徐々にではあるが経営改善が進められている。

しかし12階建ての巨大なITM棟の多くが長らく空きテナントのまま放置されていた。近年は外国人観光客の増加、一部集客施設の成功もあって経営が黒字化しつつあるそうで、それは結構な事だが、ATC自体が今ではトレードセンターとは名ばかりの平凡なショッピングモールになっている。そんなATCへの最寄り駅は「トレードセンター前駅」。

駅を降りると連絡通路を通ってすぐにATCの中へ入れる。相変わらず大雑把ででかい空間が広がっていた。ATC内部はO’s(オズ)という名前のショッピングモールの南館と北館、そしてITM棟の3つの建物に分かれる。突き当りを左に行くとO’s棟、右に行くとITM棟。

道すがら目にする謎の石のオブジェ、唐突に「健康の石」「縁結びの石」「幸福の石」などと謎のネーミングを行う芋臭いセンスもまた脱力具合に拍車を掛ける。触れたところで本当に健康になれるのなら都道府県別短命ランキングで上位常連の大阪府民は誰もが触りに行くべきであろう。

O’s棟のほうは一時期の“古臭い90年代トレンディ感”が漂っており寂れてきたとは言えどもそこそこ店も客足もあってまだ見れたものだが、長らくテナントガラガラ状態で問題となっていたのがITM棟である。

ITM棟に入ると巨大な吹き抜けのある広場が現れる。なんともバブリーな造りになっていてここも“古臭い90年代トレンディ感”が半端ないんですが、この中にも一応様々なテナントが入っている。

代表的なものとして、4階から6階に入っているアウトレットモール「ATCタウンアウトレットMARE」というものがあるが、正直店舗がパッとせずあまり流行っていない反面、アウトレットモールと同じ5階部分に2014年に開業した巨大屋内キッズスペース「ATCあそびマーレ」が盛況でご家族連れの集客に成功している。あそびマーレは後に4階一部にも増床営業している。

7階と8階には家具屋姫のグダグダ親子戦争で経営危機が報じられている「IDC大塚家具」のショールームが入居しているが、現在は6階部分を明け渡し縮小営業。2階にあった湯川家具は閉店し、跡地が「かねふくめんたいパーク」に変わっている。明太子の無料試食が出来る事もあってか、結構繁盛しており、試食に並ぶケチな大阪人の生態が観察できる。

めんたいパークの中に入れば常勝関西の学会員のおばちゃん達に絶大な人気を誇る某有名ズンドコ演歌歌手の等身大パネルも置いてあって、一部の人々にはモーたまんない演出であろう。何が「僕のめんたいこ」だよ。

一昔前のATCではズンドコ演歌歌手ではなく「ヨン様」に熱を上げる韓流おばさんがわらわらと集まる「PARK BOF JAPAN」という施設もあったんですが、速攻で消えてしまいましたよねこれ。

しかしその他のITM棟のテナント群について、3階から上のフロアを見るとあまりの数の空きテナントに腰を抜かす事請け合いであろう。建築物としてのインパクトも同様に腰抜けモンである。仕方なしに穴埋めで大阪市の関連施設や部署が入居している。

3階の「商い繁盛館」(既に閉館の模様)「大阪市消費者センター・くらしのひろばエル」、6階には大阪市建設局、9階に大阪市水道局、10階に大阪市港湾局という具合に、今となってはITM棟自体が大阪市役所の支所的役割も果たしている。

繰り返すがATC内は館内全域が保税地域に指定されていて、本来の施設の目的である国際貿易の拠点としての機能を一応は保有しているのだ。大阪市はWTCに次いで、ATCまでも豪華で巨大なハコを用意して、国内外の貿易業者を貪欲にかき集めるつもりだったが、目論見はものの見事に外れてしまった。

現在もちょろちょろと中国などの貿易会社などが入っているようだが、大半が貿易とは関係のない企業ばかりが入居している。空きテナントの中には入居企業のモノ置き場や展示室として、えらい大雑把に使われている所もある。

1994年の開業、2003年の破綻を経て現在に至るアジア太平洋トレードセンター。いつの間にか「フェリーさんふらわあ」の別府行きと志布志行きの乗り場がITM棟に移転していたりと徐々に集客を増やしているようだが、経営改善への道はまだ半ばである。


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DEEP案内シリーズ管理人。大阪ベイエリアの貧民窟育ち。独自のひん曲がった視点で街歩きを続けております。2008年より上京。関西に留まらず全国、海外に取材対象を薄く広く伸ばして来ました。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。
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