【昭和遺産】尼崎市大庄西町の廃れ市場「大庄新市場」とその周辺の寂れた街並み

尼崎市の西部を南北に走る「尼宝線」沿いにもツッコミどころの多い物件が点在していて、武庫之荘八丁目の寂れ市場「尼宝市場」だったり南武庫之荘十~十二丁目の「守部」だったり、西大島交差点角の「西大島市場」なんかが見られるが、今回紹介するのも同じ尼宝線沿いにある物件。

尼宝線「大庄支所西」交差点前にやってきた。元々このへんは武庫郡大庄村という地域だったのが、戦前期の工業化で尼崎の人口が急増して、市街化の波に呑まれた末に昭和17(1942)年、尼崎市の一部となった場所。合併前の人口は約48,200人で、単独の村の人口としては当時日本一の状況だったとされる。

尼崎市の一部となった旧大庄村でございます

尼宝線を西に入った路地に目をやると、そこにも「いつもの尼崎」的な下町風景が連なっているのが見られる。住所で言う尼崎市大庄西町に属する一画だ。地域の西側には武庫川が流れ、その対岸側が西宮市、という位置関係にある。

この界隈も戦後から早々と市街化してしまっていて住宅密集地ぶりが極まっている。阪神本線武庫川駅からも徒歩10分くらいの距離にある。こんな場末の街にもきっちり雀荘だとかがあったりして、オッサン臭さを奏でている。

その他、土着のアル中オヤジ御用達であろうカラオケ喫茶なんぞも店を開けていて、かつて労働者としてやってきた高齢者住民の溜まり場として機能している感がある。

そんな場所にある医療機関は尼崎医療生協の系列の診療所でございまして南武庫之荘(守部)にある尼崎医療生協病院の支所的な感じですかねこれ。民商の立て看板や共産党ポスターがベタベタと貼られていてなんとも香ばしい。

今回、こちら尼崎市大庄西町にある「大庄新市場」という昭和の廃れ市場を見物するためにやってきたのだが、市場の周囲の街並みだけでもお腹いっぱいになりそうな景色のオンパレードである。外壁がボロボロに剥がれた廃屋なんかも、人通りの多い通り沿いにあるのに普通に放置かまされてますが…

大庄新市場という全然新しくもなんともないレトロ市場

尼宝線から西に100メートルほど入った場所にある「大庄新市場」。もう見た目に全然“新”市場じゃないんですが、ここも戦後の時代から労働者の暮らしを支えてきた土着市場の成れの果てであろう。

この佇まいからすると、やはり尼宝市場や西大島市場と同じく、築50年オーバーは確定なのではないかと思われる。80年代までは繁盛していた市場だったらしいが、今となっては買い物客の姿もない。入り口にある果物屋くらいしかやってません。

市場の入り口の真向かいにある個人商店もとっくの昔に廃業してしまい、建物が朽ち果てるがままに放置プレイをかまされている。

その建物には「山田家具店」とうっすら書かれているのが見られる。シャッターのサビ具合やテント屋根の破け具合からかれこれ10年以上は放置されているっぽい。周辺の酒屋やクリーニング店は現役である。

市場の中央通路に足を踏み入れる。尼宝市場のそれと同じデザインの、天井の暖色系のグラデーションがついた板がアクセントを与えている反面、その両側は見事なシャッター街。尼宝市場より蛍光灯がやや多めに点灯している事くらいしか違いがない。

カタカナの「キ」の字状に配された通路がおよそ100メートル足らず続いている。いやほんま、何もないなあ…と思ったらピースボートのポスターが貼られていた。こんな場所に貼られていても果たして広告効果はあるのだろうか。

表の果物屋に次いで現役で営業しているのが「イズモ商店」という小さな町のお菓子屋。もはや離島の共同売店のようなノリでしかない。地元のご老人がスナック菓子や米菓を買ったりしている場所である。アイスクリームケースは運転を停めてしまっており、ただ「サトウのごはん」を陳列するための台になっていた。

あともう一軒営業していたのは地元の小中学校に学生服や体操着などを卸している服屋くらいである。これは地元の学校が潰れない限りは安泰な稼業であろう。

そんな学生服屋のそばから市場の南側に出る。「大庄新市場」と書かれた看板、字の配置が“右から左”になってますね…

市場の外にはまともに舗装もされていない路地に昭和枯れすすき風味なボロアパートや文化住宅風の家屋が集まる、なんとも下町風情きっつい街並みが広がるのである。

武庫川流域に近い大庄地区はもちろん尼崎の臨海工業地帯の労働者も多く住む地域だったが、戦前期に武庫川の河川改修工事で朝鮮半島から多くの労働者が集まってきた経緯から、在日コリアンも多く住んでいる、そういう歴史を歩んだ土地だ。


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DEEP案内シリーズ管理人。大阪ベイエリアの貧民窟育ち。独自のひん曲がった視点で街歩きを続けております。2008年より上京。関西に留まらず全国、海外に取材対象を薄く広く伸ばして来ました。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。
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