今回は奈良県大和郡山市の街並みをどっぷり探索する事にしよう。一般的に大和郡山は金魚の産地として有名だが、一方で郡山城の城下町として歴史が古く、洞泉寺、東岡町の二ヶ所に古い遊郭があり、今でも妓楼が立ち並ぶ風景がしっかりと残っている。
まずはJR大和路線の郡山駅で降りる。福島県にも同じ郡山駅があって紛らわしいが、駅前の風景は全然違う。駅は旧市街地の町外れにあるため、目的の場所へ向かうには少々歩かなければならない。
JR駅周辺はマンションなどが立ち並ぶ、とりわけ特徴のない郊外の駅前といった風情でしかない。駅前ロータリーにこれ見よがしに設置された巨大で時代錯誤的な人権啓発看板は奈良ならではの名物。
今回はJR郡山駅から中心市街地を目指し近鉄郡山駅へ向かうコースを辿る。両者の駅は約1キロ弱離れているが、2つの駅を結ぶ一本道の県道は非常に道幅が狭い。
最初は普通の住宅街でしかないが、街の中心に近づくにつれ神社や寺院、古民家なんぞがぞろぞろ現れるのが古都奈良らしい特徴。沢山の寺院があるが最初の目的地である洞泉寺町はもう少し先。
道沿いに行くと途中で川の跡らしき遊歩道が現れる。郡山城の外堀を埋め立てて作られた外堀緑地である。街並みそのものも見所が多いが、ひとまず洞泉寺町を目指す。
道中にはさらに神社の鳥居が現れる。薬園八幡神社。創建は1250年以上前の749年と古く、拝殿などは江戸時代初期のものがそのままらしい。さすが奈良の神社は違う。
外堀緑地を跨いで薬園八幡神社を過ぎた辺りで街並みは一気に時代劇のセットか何かのようにタイムスリップし始める。ここから先が郡山の旧市街地になるようだ。
東京などにあったらびっくりしてしまうような古い街並みでも場所が奈良とあればごく普通の風景となる。もっとガッツリ探索したい気もするが時間の都合もあったので後ろ髪をひかれるような気持ちで通り過ぎる。
県道沿いに歩くと、JRと近鉄の駅のほぼ中間あたりで街の南北を貫く道幅の広い車道を挟む事になる。新紺屋町交差点のすぐ南西一帯が洞泉寺町。
道路を挟んだ向こう側に何やら巨大な木造建築がぬーっと姿を見せているのが嫌でも目に付く。それも生活感のある人家というよりは廃墟然とした風情の暗い佇まいがする。これは遊郭時代の妓楼がそのまま残された建物だ。
目の前の信号を渡って洞泉寺町に足を踏み入れる。
木辻町、東岡町と並ぶ、ここが奈良三大遊郭の一つである。