【リトル沖縄】工場と港湾労働者が集う「大正区鶴町」のウチナーンチュな街並み

未だに地下鉄も鉄道も通らない交通不毛地帯・大正区の中でも特に区の南部は他地域の人間が訪れるきっかけも少なく、大阪ベイエリア下町ゾーンの濃密な空気がある意味そのままの状態で保たれている。気がつけば当方も何度となく訪れていたのだが…

大正区のどん詰まりゾーン「鶴町」を巡るレポートもいよいよ回数を増してきた。これだけ事細かにこんな都会の僻地とも言えるドマイナーな地域を紹介するサイトは他にあるのだろうか。しかしそんな土地にこそツッコミ甲斐があるというもの。今回は鶴町地区における工場・港湾労働者街としての姿、大正区には多い沖縄出身者コミュニティとしての側面に触れてみようと思う。

労働者の住まいだった単身アパート・文化住宅・呑み屋に銭湯…

鶴町には膨大な数がある市営住宅とは別に、この地域には数多く現存する工場・港湾労働者が寝泊まりする単身用アパートの存在。西成・釜ヶ崎にある簡易宿泊所に近い佇まいのこうしたアパートもまた土地の歴史を示している。

そして大阪ベイエリアでもやたらと目にする「文化住宅」も地方から流れてきた労働者を大いに受け入れてきた。鰻の寝床のような間口のクソ狭い居住区画がそれぞれ1・2階に分かれている。昭和の中頃、高度経済成長期に続々建てられたこうした文化住宅。その当時では近代的な作りで建てられた市営住宅よりも居住環境は総じて悪い。

そうした住民が多数派だった鶴町の飲食店もその多くはドカチン向け食堂や居酒屋やスナックばかりで、すべからくアルコールの匂いしか漂ってこない。

また共産党系列の民主商工会の広告を掲げるプレハブ小屋なんかを見かけるとリアルに昭和過ぎて、有る種のノスタルジーを想起させるに充分の貫禄がある。

鶴町における住宅区域のうち半分くらいを占めると思しき市営住宅は商店が併設されているわけではないので、こうした食い物屋は鶴町商店街か、もしくは戸建てが立ち並ぶ区画にちょいちょい個人経営のものがある程度。チェーン店なんかは皆無である。やっぱり「お好み焼・焼そば・たこ焼」しか食うもんあらへんのか。

大正区の離れ小島・鶴町に二軒現存する銭湯のうちの一軒「いとうぴあ」。なぜか後付け的に横文字で「Healing Space」などと書かれているのだが、こんなところにまで銭湯に入りに来る奇特な外国人観光客はさすがに居ない。

大阪市内ですが3LDK99㎡の新築戸建て住宅が2,730万円で買えてしまうのが鶴町クオリティ。交通便は悪くともクルマさえあれば問題ないしIKEAや東京インテリアで毎日買い物出来まっせ。どないでっか?!と言われても住みたがる人間は少ない。

老舗大衆食堂「いしがみ食堂」が渋い

船町方面へ抜ける船町渡船場に行く道すがらに店を構える「いしがみ食堂」も相当ガチで年季が入っている佇まい。この手の大衆食堂が潰れずに残っていることにある意味驚いた。同じ港湾労働者の街である港区にもこんな大衆食堂は何軒かあったが、殆ど潰れて無くなっている。

下町呑み歩きマニアもそうそう辿り着けない立地条件にあるこの食堂、ケースから好きなおかずを取って食う昔ながらのスタイル。営業時間は朝の6時半から昼の2時まで、という時間帯もマニアック。つまりここで食えるのは朝飯と昼飯だけである。直前に沖縄料理を胃袋に詰めた状態だったので結局素通りに終わったのが悔しい。

鶴町にもある沖縄コミュニティ

日本最大の沖縄出身者コミュニティがある大阪市大正区。頭のてっぺん(三軒家)から足の爪先(鶴町)まで満遍なく「おきナニワん」になっているのが、鶴町の住宅街のそこかしこにいるシーサーの多さで分かるだろう。

何度もしつこく書くが、約6万4千人の大正区の人口のうち、その4分の1が沖縄出身者とその子孫であるとされている。鶴町界隈もお宅の表札が沖縄っぽい苗字の人が物凄く多い。

こんな地味なマンションの玄関口にまでちょこんと小さなシーサーが阿吽で一対置かれていたりするのを見ると萌えちゃいますよね。ちなみに「沖縄あるある」な石敢當のプレートはなぜか鶴町では見かけなかった。たまたまですかね。

そんな鶴町で介護サービスを展開している「有限会社ナンクルナイサァーケアネット」でございます。もうどう見ても沖縄だろとしか思えないベタすぎるネーミング。後期高齢者が非常に多い鶴町住民もここで手厚い介護を受けながら心置きなくニライカナイに旅立てるのだろう。

これだけウチナーンチュ関係の店舗やシーサーが置いてあれば沖縄物産店もあるだろうと思ったが、この石垣島物産店「うすぱれ」一軒くらいしか見かけなかった。しかも閉まったまんま…やはり大正区のリトル沖縄体験を楽しむためにこの鶴町を選ぶのは、ちょっと上級者向け過ぎるのではなかろうか。


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DEEP案内シリーズ管理人。大阪ベイエリアの貧民窟育ち。独自のひん曲がった視点で街歩きを続けております。2008年より上京。関西に留まらず全国、海外に取材対象を薄く広く伸ばして来ました。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。
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