ガチな沖縄タウン大正区最南端の街「南恩加島」の渋すぎる下町風景とウチナーめし

日本本土最大級の沖縄出身者集住地、大阪ベイエリアの重工業地帯アイランド・大正区の最南端に位置する街「南恩加島」を巡るレポートの続きである。前回は大運橋通バス停そばの二つの商店街を歩いたが…

今度は商店街を外れた周辺の住宅街を見て回る事にする。巨大な鉄鋼工場がひしめく大正区でも最もインダストリアル感ドギツく空気の悪い一画にあって、その街並みはより一層ガチなものとなる。「向こう三軒両隣」的な古い長屋が連なる生活空間は、まさに“昭和”を今に引きずるかのようだ。

大正区で最もガチな下町風景が見られる場所、南恩加島。でも市営住宅はありません

他の大正区の街、例えば泉尾や北恩加島、千島、または離れ島になっている鶴町地区などを見て回ってもそこかしこ市営住宅が目につくのだが、こちら南恩加島は一丁目から七丁目まである町域の中に市営住宅が一切ない。長屋の文化住宅と工場ばかりなのである。

南恩加島も戦時中は空襲にやられているが、大正区は隣の港区のようにほぼ全域が焦土と化したわけではない。焼け残った戦前建築の長屋と思しき建物も一部には見られる。特に南恩加島六丁目の一角はかなり渋さ度数が高い。

大正区と同じ阪神工業地帯の一角を成す尼崎市の臨海部にも近い特徴を見せる、代わり映えのない「労働者の街」っぷり。ありつける仕事は鉄鋼・機械関連の重工業系か港湾・土木関係の現場仕事といったところ。現代の「飯場」さながらである。

こんなゲロ渋過ぎる佇まいのボロアパートの成れの果てなんかも普通に残っていたりする。先に触れた商店街もそうだが、鉄道駅から離れている事で逆に開発される事なくこうした建物が取り壊されず放置プレイをかまされるのだ。

かつては周辺の重工業地帯で汗水垂らして働いていた屈強な労働者が生活の場としていたであろう「文化住宅」の数々も、今となっては年老いた住民がたまに出入りする程度の寂しい空間でしかない。

何かの町工場だったと思しき古い木造家屋。玄関口が塞がれているが、既に住民が暮らしている事もないのか。

なかなかに味わい深い昭和のスラム感漂う平屋の長屋とズタボロに壊れた木製物干し台が立ち並ぶ路地もあり。既に廃屋化した区画も目立っているし、こうした建物もあと十年やそこら残ればいい方か。

そんな大正区最南端の街・南恩加島でアパートを借りると独身者用でも3万、ファミリー用でも5万も家賃を出せば部屋がゴロゴロとある。考えようによっては穴場過ぎる。その気になればボロ家住まいでもチャリで鶴町にあるIKEAや東京インテリアに行って意識高い家具を買って、“シャレオツ貧乏暮らし”をエンジョイできるのだ。

南恩加島二丁目「ニッコー大正店」の建物がまた渋い

場所は変わって、大正通を少し北上した南恩加島交差点を東に入った一帯。ここまで来るとサンクス平尾商店街にも近くなるが、住所は南恩加島二丁目である。この辺にも、西成の簡易宿泊所を彷彿とさせる「ビジネスホテル」なんかがあったりする。しかもコインランドリー付き。

しかしそれよりも気になるのが、かなり年季の入った“コンクリ打ちっぱなし”な外観のこちらの建物。「ニッコー大正店」というスーパーマーケットが核テナントとなっているが、その周囲には街の家電屋や和菓子屋、各種飲食店も入居する、ちょっとした公設市場的な空間となっている。(とはいえ、正式な公設市場というわけでもないようだが)

スーパーの買い物客がチャリンコを並べて停めているその隣には既に営業しているのかどうか定かではない怪しげな飲食店たちが。お好み焼き屋とか大衆食堂だったようだが…

同じ建物を裏側から見るとこれまた凄まじい。恐らく昭和30年代くらいの建物なんでしょうが、三方を川に囲まれ生活圏が限られた大正区南部の近隣住民にとっては数少ないスーパーの一つ。ここだけは結構賑わっていましたよ。

「うるま御殿」で昼飯でも食いますか

そんなプチ九龍城砦状態の佇まいを見せるニッコー大正店の目の前に、もうこれ以上ないくらい“沖縄”感全開の店構えで営業している沖縄料理と島唄の店「うるま御殿」がある。大正区で一番有名な沖縄料理店ではなかろうか。大正駅からめちゃくちゃ遠いが、知名度の高さから以前から気になっていた。2016年で開店20周年とあったので、それほど古い店というわけでもない。

うるま御殿は営業日に毎晩三線ライブを開催している、大阪におけるウチナーンチュ文化体験拠点とも言える沖縄料理屋である。ここは夜訪れて三線に島唄を聞きながら酔っ払って、すっかり出来上がった頃に客がみんなカチャーシーを踊ってそうなイメージがあったのだが、別に昼間は昼間でランチ営業をしている。

もし夜に来て座敷の最前列に陣取ると酔客に腕を引っ張られて一緒に踊らされる羽目になるらしいが、昼間はいたって大人しいものである。昼ではなく夜の三線ライブを楽しむべく他所から来る場合はタクシー利用は必須だ。

昼の定食は600円の沖縄そば定食を除いて全て800円。値上げしたようだが、それでもコストパフォーマンスはずば抜けている。店名にもなっている「うるま定食」を注文すると、運ばれてきたのがこれ。凄まじいてんこもり状態である。そばもゴーヤチャンプルも旨いんですが、もずく天ぷらが特に美味かったですね。


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DEEP案内シリーズ管理人。大阪ベイエリアの貧民窟育ち。独自のひん曲がった視点で街歩きを続けております。2008年より上京。関西に留まらず全国、海外に取材対象を薄く広く伸ばして来ました。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。
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