天神橋筋商店街の端っこにある大阪市民の暮らしミュージアム「大阪くらしの今昔館」

大阪・梅田から地下鉄谷町線でわずか二駅、天神橋筋六丁目駅を降りたところから南へ2.6キロメートルもの長い間、途切れなく続くアーケード付の商店街がある。

天神橋筋商店街

その名も「天神橋筋商店街」。さまざまな店舗が連なり活気が絶えない、大阪を代表する商店街である。

大阪市立住まい情報センター

その一角に問題の建物がある。「大阪市立住まい情報センター」立地的に駅前の一等地と呼んで相応しい場所に、区役所でもないのに、なぜこのような大きな公共施設が建っているのか。

隣にはホームレスのオッサン

中を見ると、大阪市住宅供給公社(愛称:大阪市住まい公社)をはじめ公共施設ばかりで占められる。10階建ての「大阪市立住まい情報センター」のフロアーガイドを見ると、4階から上はほぼ全部大阪市の施設だ。

ここの8階から10階に「大阪くらしの今昔館」という謎の博物館があるという情報を聞きつけてやってきたのだ。

入口

入口をくぐると、スーツを着たおじさんが数人立っている他は誰も居ない。やっぱり雰囲気は区役所庁舎みたいである。件の「大阪くらしの今昔館」はエレベーターに乗って8階まで上ったところが入口だ。

上った先もやっぱり人が少ない。券売機で常設展のみのチケットを大人一枚を600円で購入。「大阪周遊パス」の無料クーポンがあるので活用するべし。さて、受付のお姉さんにチケットを渡して出撃だ。エスカレーターで一気に10階まで上がる。すると待っていたのはこんな風景でした。

ビルの10階に江戸時代の街並みを再現

江戸時代後期の大坂の街並みをまるごと再現したという、この実物大のジオラマ。

この街並みは予想外

これが「くらしの今昔館」の目玉だった。どう見ても建物の外観上では区役所にしか見えなかったのに、中に入るとこんなもんが入っていたとは。

解説は米朝さんです

米朝さんの解説を聞いた後、9階に降りて、この町並みの中に入り込むことにしよう。

エスカレーター

9階に降りると、まさしくタイムスリップした空間。当時の町並みを忠実に再現していて、建物の外観だけでなく内装もそのまんま江戸時代の大坂である。テーマは「なにわ町家の歳時記」。

江戸時代の大坂

おお、なかなか良い雰囲気ではないか。ちなみに街並みは半年ごとに「季節のしつらい」が変わるのだ。夏祭りの飾り、商家の賑わいの2種類が用意されている。4月と9月に模様替えを行う。

ビデオ上映

町家の一つ一つは、当時の暮らしぶりをそのまま再現した部屋になっていたり、はたまた風呂屋の中はシアターとなっていて、江戸時代の人々の暮らしが分かる映像が流されていたり、お土産屋だったりもする。

長屋の中にお土産店

こんな本格的な施設知らなかったなあ。なんで大阪市はもっと市民にアピールできんものか。

火の見櫓

ついでに火の見櫓もかかっている。

けんだま

けんだま遊びをしているスタッフ、なぜか服装だけ現代風です。なんでやねん!
まるっきり大阪市の施設ですが、雇われているのは正規職員だったりしないだろうなと気になるのだった。

船形山車「天神丸」

そんな町家の一番奥には大阪市の文化財の一つである船形山車「天神丸」が置かれている。大阪の夏の風物詩であり、最大の祭り、天神祭のときに使う山車の一つだ。
屏風

こんな立派な屏風もございます。

急に夜更けになりました

しばらく町並みを探索していくと、次第に辺りが暗くなってきて、夜になってしまった。
館内では何分かおきに昼夜が入れ替わる。
夜になると虫の音が聞こえてきたり部屋の明かりがついたり、演出も細かい。お年寄りを連れて来ると絶対喜ぶだろうな、とは思う。

昔の教室の机と椅子

唐突に昔の教室の机と椅子が置かれている。昔の教室を再現したにしては、中途半端だし。何だろう?

しばしタイムスリップを満喫して、今度は8階に降りていくと、次は「モダン大阪パノラマ遊覧」と称し、明治時代から現代に至るまでの大阪の町並みと暮らしを再現したジオラマが用意されていた。

残念ながらこちらは実物大ではない。いや、全部実物大にすれば一体どないなるねん!といった感じだが。

明治時代の空堀通

こちらは明治時代から昭和初期にかけての空堀通の街並み。江戸時代の町家が残る中でも、昭和時代に建設されたモダン建築がちらほら出だした時期のものです。

ルナパーク

他にも、幻の遊園地「新世界ルナパーク」や、川口居留地など、時代を感じさせるジオラマの数々も見逃せない。

ちなみに中央にある6つのジオラマは時間経過で次々とスポットライトを浴び、その時代ごとの建物と市民の暮らしを次々自動で説明していく仕組みになっている。そのうち3つには仕掛けが施されている。

バス住宅

例えばこの「城北バス住宅」のジオラマ。
アナウンスによる解説を終えて時間が経過すると、いきなりジオラマ本体が下に沈んで、その上からウィィイーンと新しいジオラマが降りてくる。なんと二重構造になっているのだ。

バス住宅

バス住宅の中での住人の暮らしぶりが現れる。
昭和26年ごろまであったという城北バス住宅。戦災の傷跡、その中で生きる大阪市民。当時を知る人も相当数が減ってきている。

古市中団地

バス住宅から、近代的な市営住宅へ。昭和28年に建設された城東区の「古市中団地」の模型です。今になって、大阪市内ではどこででも見かけられるタイプの市営住宅ですわな。

古市中団地

高度経済成長期がやってきて、地方からの労働者をガンガン迎え入れ、これでもかと市営住宅を建設しまくった大阪市。今になって、それらの市営住宅に住む人々は著しく高齢化を迎え、大阪市民の高齢化率の高さ、そして福祉負担の増加も著しい。それから生活保護の受給率も。

市営住宅の暮らし

ジオラマの中での当時の暮らしの風景、そしてスピーカーから聞こえるのは大阪人の庶民の声。同じ大阪弁でも下品な現代語とは違って随分聞き慣れない大阪弁だったりする。当時を知る世代には懐かしく感じられること請け合いだろう。じいちゃんばあちゃん涙目。

こんな感じで江戸時代から現代までの大阪の住宅事情を知る事が出来る博物館なわけだが、博物館としての中身が悪いわけでもないのに客の入りが乏しいのはどうにもならないものなのか。ちなみに「くらしの今昔館」の開館時間は朝10時から夕方5時という超お役所モード。きちんと利益を出す博物館としてやる気がないのは明らかですね。もっとしっかりしてくださいよー!


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DEEP案内シリーズ管理人。大阪ベイエリアの貧民窟育ち。独自のひん曲がった視点で街歩きを続けております。2008年より上京。関西に留まらず全国、海外に取材対象を薄く広く伸ばして来ました。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。
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