【諸行無常】南海電鉄の老舗遊園地「みさき公園」が2020年3月31日で閉園する件

何やら首都圏のほうでは「としまえん」が近いうちに閉園する予定が判明したとやらで騒ぎになっている。東のネズミーランド、西のUSJと日本の遊園地事情はこの“東西二強”体制が確固としたものになってから相当経ったが、ところがどっこい、昔ながらの遊園地でも長年頑張っている所はある。関西ではひらかたパークに生駒山上遊園地、須磨浦山上遊園などなど、しかし…

大阪府の最果て、泉南郡岬町にある「みさき公園」が2020年3月末日をもって運営会社が撤退、閉園の予定となってしまった。日本最古の私鉄会社である南海電鉄が運営する老舗遊園地だが、多くのネイティブ大阪人にはやはり思い入れの強い場所の一つ。関西空港からも割と近いのに、なんでやねん!という事で、ちょっと様子を見に行ってきた。

わかってましたが、岬町は大阪市内からめちゃくちゃ遠いです…

昭和32(1957)年に南海電鉄の創業70周年記念事業として当地に開業した「みさき公園」へは、南海本線の特急サザン号に乗って難波から片道45分で辿り着く事ができる。なんだ、たったの45分かと思うかも知れないが、距離的には50キロ以上離れていて、車で大阪市内から来るには1時間以上必要だ。まあ、和歌山からだと20分やそこらで来れるんですが…写真は南海本線の「みさき公園駅」ですね。まあ見た目には立派にこしらえてますが、平日昼間に来てみると誰もいませんね…

同じ大阪府と言えども、大阪の中心からは最も離れた場所にあるのが泉南郡岬町である。人口は約1万5千人だが、町の産業はせいぜい漁業か下火になった瓦の生産くらいでさしたるものもなく、尻すぼみ的に人口も減少の一途を辿る。買い物するにも府県境を超えて和歌山市内のイオンモールに行く始末。町唯一の観光資源である「みさき公園」の存在こそが貴重だったのは言うまでもない。

さてこの「みさき公園」、遊園地であると同時に動物園でもある。当時の上野動物園の園長だった古賀忠道(1903-1986)の監修によって開かれた初めての動物園として、全国の動物園の先駆け的存在でもあったらしく、駅前には立派な牙をたずさえた巨大な象の石像も鎮座するも、周りがかえって草ボーボーで気の毒な姿を晒している。

駅から「みさき公園」の入り口まで300メートルほど何もない歩道を進むことになる。遊園地のエントランスとは思えない殺風景極まりない空間。連休になると屋台とかミニ電車とか出るんですかね?しかしそんな感じにも思えない。ちなみに車で来ると駐車場は一回1200円掛かるので、ケチな大阪人は駅近くのコインパーキングに止めるのがオチ。

なんだかんだ言って開業から60年オーバーという老舗っぷりなのもあるので、道中に見られる古びた円形噴水の跡なんかは既に古代文明の遺跡とも形容できそうな状態になっていたり色々と廃レトロっぷりを堪能できる事請け合い。

大阪市此花区にユニバーサル・スタジオ・ジャパンが開業した2001年以降、関西各地の遊園地はバタバタと死に絶える事となった。伏見桃山城キャッスルランド(2003年1月閉園)、甲子園阪神パーク(2003年3月末閉園)、宝塚ファミリーランド(2003年8月閉園)、近鉄あやめ池遊園地(2004年6月閉園)など、鉄道会社系の遊園地が軒並み閉園ラッシュを迎えていった中、この「みさき公園」が今の今まで生き残っていたのはある意味奇跡だという声もある。

昭和の感覚そのまんまなレトロ遊園地っぷりをお楽しみ下さい

入園料1,350円を支払い園内へ。併設のプール(ぷ~るらんどRiO)が2018年9月の台風被害で設備が破損した影響で、2019年の夏はプール営業を行わず、その代わり入園料100円で入れるキャンペーンもやっていたらしいです。ここは夏場のプール客が結構なドル箱だった気がしたのだが、それをあえて諦めたというのも、いっその事辞めてしまう腹積もりだったのかも知れない。

土産物コーナーなんかも英語の綴りがめちゃくちゃで昭和のセンスが生きてます。キリンはGiraffeじゃなくてそのまんま「kirin」。レッサーパンダなんか「ressapanda」になっている。その他色々おかしい。

正面エントランスを入って左手の大階段を降りるとその先にみさき公園ご自慢の動物園エリアがある。恐らくこの辺の作りは開業以来大きなリニューアルもなくそのまま使っているように見られる。子供の時に親に連れていってもらった事ある!と懐かしがる読者の皆様もおられると思いますが、昔の記憶通りでしょうかね?

動物園エリアで一番目につく場所にあるキリン舎。キリンの飼育においては開園当初から続く実績もあるが、2020年3月末での運営会社の撤退後はここの動物たちの運命はいかに…気掛かりである。

その他、サルだのツキノワグマだの色々飼育されていたり動物おさわりコーナーなんかもあって小さなお子様連れにはピッタリ感溢れてますが、みんな近場の天王寺動物園に行ってしまうだけで岬町くんだりまで来ないんでしょうかね。それから外国人観光客も関空に近いはずの当地に足を運ぶ事はそんなに無いらしい。

みさき公園の動物園内にはかつてインドゾウも飼育されていたそうだが、開園以来47年間飼育されてきた二頭のゾウが2004年に相次いで亡くなって以来、新しい個体を入れていない。旧ゾウ舎はなにやらカラフルなアニマル像を置いてインスタ映えコーナーっぽく変わってましたが誰も記念撮影してません。

待ち時間ゼロのみさき公園遊園地アトラクションの数々

“昭和の遊園地”がすっかり過去の記憶にしか残らなくなった、令和の時代を生きるオッサンオバハンの皆様、子供の時の思い出が蘇るような乗り物の数々がみさき公園ではまだ元気に稼働しとります。急流すべり系のアトラクション「タイダルウェイブ」なんて、余裕で待ち時間ゼロで乗れますけども…

首都圏で言う「としまえん」のメリーゴーランド・カルーセルエルドラドのように、ここ「みさき公園」にも歴史的に価値のあるヴィンテージ物の乗り物が存在する。それが昭和32(1957)年の開業以来からずっとあるという「ジエットコースター」(「ェ」ではない。大きい「エ」)は現役現存最古のものとしては東京・浅草の花やしきにあるものの次に古い。

そんなジェットコースターも平日昼間じゃさっぱり稼働しとりません…宙返りだのツイストだの派手な線形もなく無難な感じですけれども、このコースターが60年以上現役だった間にも同じ大阪ではエキスポランドの絶叫系コースターが悲惨な事故を起こしていつの間にか潰れて無くなったり、色々ありましたね。

ジェットコースター乗り場の隣にある「ダッジェムカー」とやらも古めかしさ全開。カートの背中から伸びる鉄棒が天井の網から電力を受けて走る仕組み。整然と同じ向きに走る、というよりも映画のカースタントっぽくわざとらしくガッツンガッツンぶつけ合うのがこれの遊び方らしいが、奇遇にも同様のアトラクションはここ以外に「としまえん」でしかお目にかかった事がない。

ダッジェムカーと並んで昭和の遊園地ではよく見かけられたはずなのに最近は絶滅危惧種と化している「トップスインガー」もみさき公園では健在。人力だけで回転させる巨大ブランコといったところだが、電気代もいらず原始的な作りになっている。

これらのレトロ感極まりない遊園地の乗り物の数々も来月末を境に二度と乗れなくなる可能性が高い。ここが無くなれば、後はひらパーか生駒山上か…

その他、80~90年代のゲーム機の多数現役で稼働しているゲームコーナーですっかり子持ちになった中年世代が我が子をほったらかして子供時代を回顧するように遊ぶ事もできる。いや、ほったらかさないで下さいよ。

それにしても「志村けんのだいじょうぶだぁ」のルーレットマンって…古い、いくらなんでも古すぎる。元々のテレビ放送があったのが1990年初頭で、すっかりクスリ漬けで呂律が回らず“大丈夫”じゃなくなってしまった田代まさしがサブキャストだもの。古すぎる。どうでもいいけど、また逮捕されてんのな。

みさき公園の灯台とイルカショーにまつわる芸能人あれこれ

すっかり時代の波に取り残されてしまった感のある「みさき公園」だが、かつて一世を風靡したトップアイドルや芸能人も姿を見せた事がある。今は危険なために閉鎖されている高台の灯台(実は正式な灯台ではない)、ここは昭和36(1961)年に当地で開催されたイベントに因んで建てられたものだが、昭和59(1984)年にトップアイドルとして君臨していた小泉今日子がTBSの「ザ・ベストテン」でこの灯台の上から生中継で「迷宮のアンドローラ」を熱唱したという記録もある。

あと「みさき公園」のもう一つの目玉となっているイルカショーのスタジアムが園内の最も奥まった海沿いの一角にある。2012年に開業55周年記念として当時55歳のタレント「城みちる」を一日園長に起用、この御方もキョンキョン同様アイドルとして一世風靡した記憶があるものの、相変わらずこんな仕事を受けてたらますます「イルカに乗った少年」だけが有名な一発屋のイメージ一辺倒ですが、もういい加減少年じゃないし、ご本人は地元の広島でのんびり過ごされているようです。

みさき公園は今年4月以降どうなるのか?

開業から63年、入場者数の減少と赤字続きの厳しい懐事情から南海電鉄は「みさき公園」の事業から撤退することが決まっている。来月3月31日が最終営業日という事になり、それ以降は同社と岬町との間の協議次第だが、事業を引き継ぐ別の業者が見つからない限りは基本「休園」状態になるのは避けられないようだ。大阪の最果ての街、岬町にとってはこの遊園地が無くなるのは死活問題。奈良ドリームランドのように、簡単に廃墟にしてしまうわけにはいかないのだ。

折しも新型コロナウイルスの災禍によってインバウンド景気に冷や水を浴びせられた南海電鉄はこの難局をどう乗り切るのだろうか。

<追記 2020/02/14>みさき公園の南海撤退で代わりの事業者を探していたものの見つからず、閉園決定のお知らせが来ました。園内で飼育されている動物達は和歌山県のアドベンチャーワールドに引き取られるそうです。

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DEEP案内シリーズ管理人。大阪ベイエリアの貧民窟育ち。独自のひん曲がった視点で街歩きを続けております。2008年より上京。関西に留まらず全国、海外に取材対象を薄く広く伸ばして来ました。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。
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