阪急宝塚線の急行電車で梅田から片道15分、池田市の「石橋」にやってきた。ここは阪急宝塚線から分岐する「阪急箕面線」の乗換駅でもあり、北摂のお上品エリアとそうではないエリアの結節点とも言える交通の要衝。
とは言え駅前はごっちゃごちゃした商店街に飲食街が狭苦しい路地に連なる、戦後の闇市上がりかと思わせるような雑多な町並みが見られる。石橋商店街を抜けた先の「赤い橋」が街のシンボルマークだ。
赤い橋の下を流れるのは淀川水系猪名川支流の一級河川「箕面川」である。その名の通り上流は箕面の滝でおなじみ箕面公園に通じている。そこを跨ぐ鉄橋をガタガタと走るマルーンカラーの阪急車両。北摂地域の日常風景だ。
駅前商店街を縫うように流れる今井水路を辿ると…
そんな箕面川から分岐して、石橋駅前の商店街を縫うように流れる水路がある。「今井水路」と呼ばれるもので、古くからこの地域、池田市や豊中市北部住民の水源として開削されたものらしいが…
この水路がパチンコ屋の角で折れてアーケード街の中まで流れ込んでいて、なんとも独特な風景を見せている。川幅は1メートルそこそこしかなく、水路というかドブ川のようにしか見えないんですが…
下流部を辿るとところどころ暗渠になりながらももう一軒のパチンコ屋の前まで流れている。またパチンコ屋か。石橋はパチンコ屋だらけの街なのか…と思っていると、そんな水路の真上に一軒のキムチ・韓国食材専門店「とうがらしや」の店舗が建っている。
水路の上にバラック店舗が並んでいる!しかも不法占拠…
韓国惣菜がメインの店舗だが、わずかながらイートインスペースもあって冷麺やら焼肉やらキムチサンドをつまみながらビールを呑む事もできるらしい。場所柄、在日コリアンというよりも阪大生の溜まり場になっているのかも知れませんけれども。
で、このキムチ屋さんの建物を横から眺めると、思わず「あーーー」と口に出そうな、なんとも簡易的な構造をしている事が分かる。これはもうバラックと呼んでも差し支えのない建物である。このキムチ屋は2007年から入居しているようで以前から違う店舗があったようだが、この造りから見ると戦後すぐに無理くり建てられた感じがするのは確かだ。建物の土台を見ると完全に水路の上に浮いている。大雨で増水したら即アウトでしょうこれ。
で、今井水路の上にはキムチ屋はじめ数軒の水上店舗が連なり、かつての闇市の面影を今に残しているのである。並んでいるのはコーヒー専門店にたこ焼き屋であるが、いずれも営業している感じがしない。
この場に置かれた「池田市建設部」名義の看板が、これらの店舗群が全て「不法占拠」であることを明らかにしている。『今井水路の公有水面を不法に占拠している建物については、水路を著しく損傷し、又、管理に支障を及ぼしております』…行政としては一刻も早く解体しろと、さもなくば法的措置を取るぞと警告しているわけだが…
その警告看板を見て、初めてここが「今井水路」という名前があったという事に気づいたのだが、今井というのは地名なのか人名なのかようわかりません。今井メロなら知ってますけど、今井水路はその由来を含めて詳しくは不明な部分が多い。
石橋という地名はこの今井水路にいくつも架かったボロ汚い橋が由来となっている…すみません、大嘘です。しかし並んでいる店がカラオケ居酒屋だったり、相変わらず大阪下町的なゲスな駅前飲食街っぷりで香ばしい。
既に長年手付かずの放置状態となった一部の水上店舗はびっしりと草木に覆われ外観を判断することすら難しくなっている。よーく見ると「一品料理」と書かれた看板が辛うじて見えるんですが…
しかし2018年6月末には先に触れたキムチ屋「とうがらしや」が閉店してしまったという話も聞いている。いよいよ行政代執行されてしまったんでしょうか。ご近所の方、近況報告下さい。
水上店舗以外にも鉄板を乗せてガラクタ置き場と化している箇所もあったり随分フリーダムな使われ方をしている今井水路。遵法精神の希薄な気質でおなじみの大阪らしい風景なのかも知れませんがね。
ちなみに今井水路の下流部は大阪国際空港(伊丹空港)付近まで流れているらしい。池田市は比較的上品な地域だと認識される街だが、ここ石橋に限ってはそのような事はない。