餃子の王将までシャレオツ化…日本一景観条例の厳しいガチセレブタウン「芦屋」を見物する

恐らく日本一「セレブの街」としての知名度を誇る街、兵庫県芦屋市。下町の貧民窟育ちのDEEP案内取材班からすると最も縁遠い存在である街で、そう言えばこれまでこのサイトで一件もネタを取り上げた事が無かったのが、どうにも歯痒かったのである。

この芦屋市、やはり山手側の阪急線から順にJR線、阪神線と海に近づくにつれて下町感が増してくるのかと思いきや、阪神芦屋駅のホームに降り立つと既に漂っている空気が全く違っていた。なぜか決まってサングラスを身に着けた芦屋マダム(?)が電車を待つ。やはりこの街だけが別世界なのか。

駅のホームから見える眼下の芦屋川と、その上流部を遡ると背後にそびえる六甲山系の山々。あの麓には六麓荘町だの何だの超が付くような豪邸街が軒並み控えている。なにせ市民一人あたりの平均納税額関西ナンバーワンの街である。首都圏によくある「なんとかヶ丘」的な付け焼き刃のエセセレブタウンとは格が違うというもの。

駅の広告まで私立中学受験専門塾だったりして芦屋育ちは子供の頃から見ている世界が全く違う件。本来ドカチン濃度が高いはずの阪神沿線ですら芦屋は終始こんな調子なので、関西の下品な庶民文化に染まった当方のような人間から見れば違和感しか漂ってこない。

芦屋市への勝手なイメージがあまりに強くなりすぎたため、市内全域が高級住宅街のような勘違いをされているが、実際は阪急から山手側がガチ高級住宅街、阪急とJRの間がまあまあ高級住宅街、JRと阪神の間がそこそこ高級住宅街、しかし阪神から海側はやや下町臭い風景もあったり、関東の人間が新浦安か舞浜かと見間違えるような勘違いベイサイド新興住宅地もあり様々。探せば市営住宅や単身用アパートだってある。

だが芦屋市の場合は市内全域が都市景観条例に基づく厳しい規制があって屋外広告物に関しては日本一厳しい上、パチンコ屋や風俗店は一切開業出来ない。この唯一無二ぶりが「関西住みたい街ランキング上位常連」の強い根拠となっている。こちら、芦屋市民の暮らしを守る、阪神芦屋駅前に鎮座する「芦屋市役所」の庁舎でございます。

芦屋では「餃子の王将」までおセレブモード仕様で笑うしかない

日本最強クラスの景観条例が施行されているセレブタウン芦屋市に唯一出店する「餃子の王将」、阪神芦屋駅のすぐ近くにこの通り店を構えているが、いつもの馴染み深いお下品な原色系看板では条例でアウトなので、わざわざ芦屋店用にシャレオツ仕様なデザインの看板までこしらえて、まるでブランドショップの如く横文字で「GYOZA OHSHO」などと書かれているので、もう笑うしかない。

通常の「餃子の王将」にはないシャレオツカフェ風味な内装に加え、なんだか女子ウケの良さそうな芦屋店だけの特別メニューも数々用意されている模様。「国産野菜と若鶏のチリチーズフォンデュ風」だの「焼エリンギの生ハム巻き~ブラックペッパーバター風味~」だのメニュー名がやたら長い件。

しかしこの新業態のシャレオツ仕様王将、芦屋以外にも烏丸御池、京都高島屋に2店舗あり、なにげに愛知県日進市やさいたま市大宮区など関西以外にも出店している。

そんなシャレオツ王将のある交差点の対角線上にそびえるレトロモダンな佇まいの建築物は「芦屋警察署」の旧庁舎である。警察署の建物が重要文化財指定されているのも珍しい。人口10万人以下の自治体でそこだけを管轄する単独の警察署があるというのも、住民にとっては安心要素になっているのだろう。

シャレオツ王将のある芦屋警察署前交差点には芦屋のローカルパン屋「ローゲンマイヤー」の店舗も。意識高い系無添加パンを健康にうるさい芦屋マダムにご提供。このパン屋は阪急岡本駅前にもありましたね。

日本一景観にうるさい芦屋市なので市内全域無電柱化を推進してます

芦屋警察署前交差点から東に抜ける並木道も、もはやヨーロッパの洗練された住宅地のそれを意識したかのような、おフランス語でも飛び交ってそうな全くもって別世界な街並み。よく見るとこの通りだけ電信柱が存在しない。景観を汚すものとして邪魔でしかないと判断してか、電信柱が存在せず地中化されているのだ。特に芦屋の超高級住宅地「六麓荘町」が日本初の無電柱住宅地としてよく知られている通り、この街自体が無電柱化に非常にこだわりが強い。

神戸新聞の記事によると芦屋市は無電柱化促進の条例案を出しており、本年度中に可決・制定される可能性が高いという。市全体では道路の無電柱化工事着手率は14.6%(2018年7月現在)、これは全国の市町村で最も高い率とされているらしい。無電柱化は何も景観保護だけを理由にしていない。1995年に阪神大震災を経験した芦屋では、地震でぶっ倒れた電柱が生活道路を塞ぎ市民生活を脅かした事も記憶に残っている。意識の高い住民が望む限り、街の無電柱化はこれからも進むのだ。

阪神芦屋駅近くから国道2号に向けて南北に伸びる「本通り商店街」もまた無電柱化されている。このセレブタウン芦屋市が地元の小池百合子氏が知事を務める日本の首都・東京都もまた芦屋に倣って都内全域を無電柱化させる計画を立てている。もし東京が諸外国に倣ってとっくの昔から完全に無電柱化されていれば綾瀬コンクリ殺人も起きなかったかも知れない(犯行少年グループが家族に気づかれず女子高生を監禁していた自宅の二階ベランダに出入りするために電柱をよじ登っていた)わけで、電柱は景観破壊以外にも悪の要素しかない。

オサレカフェが連なる茶屋之町桜通り

本通り商店街の東側に並行する茶屋之町「桜通り」に出ると、これまた女子ウケするしかないようなオサレカフェやおスイーツな店が立ち並んでいるのが見られる。伊達に茶屋之町という地名がついているわけではない。

ここが東京だったらやっぱり自由が丘とかあのへんのノリなのだろうが、茶屋之町のオサレカフェ群にはおのぼりカッペ観光客でごった返すような事にはそうそうならず、ひたすら落ち着いたセレブな時間が流れているのだ。芦屋のガチセレブ住民は自由が丘どころか東京自体がそもそも見下す対象でしかないだろう。

店の看板にもいちいちオーガニックだのなんだの横文字で書かれていたりするので意識が高すぎてついていけません。グラサンに帽子姿の芦屋マダムかオサレカフェ好きな女子大生軍団しか見かけることがない。

国道2号沿いに出ると「KIREI CAFE」だなんてあって、もはやネタでしかない美意識の高い街並みが終始見られる茶屋之町なのであった。ちなみにここまで来るとJR芦屋駅にも近い。ともかく唯一無二感漂うセレブタウン芦屋の街の雰囲気を味わうならこのコースで散歩してみると良いだろう。


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DEEP案内シリーズ管理人。大阪ベイエリアの貧民窟育ち。独自のひん曲がった視点で街歩きを続けております。2008年より上京。関西に留まらず全国、海外に取材対象を薄く広く伸ばして来ました。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。

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