【ニシヨドスタン】大阪市西淀川区「千船」に濃厚ムスリムコミュニティが爆誕していた件【大阪マスジド】

日本の多国籍化が止まらなくなって久しいが、首都圏に遅れて日本第二の巨大な都市圏を抱える関西でもその傾向は顕著なものとなりつつある。我々は最近、大阪市内に急激に進化しているムスリムコミュニティがある事を知った。それはどこかと言うと…

大阪市西淀川区、阪神電車千船駅のすぐ近くである。梅田から阪神本線の各停電車で10分やそこらで着いてしまう程に都心から近い場所だが、ガチ工業地域である阪神工業地帯のど真ん中にあるという地理的条件から不動産的には非常に不人気の土地で、まあ言われてみれば穴場中の穴場。しかも隣は角田ファミリーでお馴染みの尼崎市杭瀬である。

かつては公害に苦しめられた負のイメージが強い西淀川区だが、阪神千船駅のある西淀川区佃の東側はそれほど臨海部の工業地帯には近くない。特に田蓑神社あたりを見ると先祖が徳川家康公を救った事が縁で移住した東京の佃島との関係を匂わせる歴史も垣間見える。駅前には下町臭い商店街もあるが、それでも廃れた感じが漂っている。

今回訪れるムスリムコミュニティはこの千船駅から神崎川を跨ぐ「千船大橋」を越えた先のところにある。梅田から電車で10分ちょいとは思えないうらびれぶりである。橋の上をちんたら歩いていると冬の風が容赦なく吹き付けてくる。ああ、寒い。カレーが食べたい。

大阪市内に爆誕したムスリムコミュニティ「ニシヨドスタン」

神崎川を渡った対岸は西淀川区大和田。どうもこの辺りの寂れた商店街が関西屈指のムスリムコミュニティとして発展しているようだが、あれ、そう言えばこの辺って有名な老舗ニュースサイト「GIGAZINE」の運営会社があった所では…と思い出したが、いつの間にか茨木市に引っ越してしまったようだ。

そうこうしないうちに、早速ムスリム色満載の店舗が現れる。「OSAKA HALAL MARKET SITARA」とある。まだ出来て間もない店のようで、店の表で従業員が何人も忙しなく動き回っているのが見られる。物珍しげに店の外観を見ていたら、店の前にいた髭面の主人(パキスタン人)が獲物を見つけた肉食獣のような目つきでやってきて自分の経営するレストランに強引に客引きされそうになった。

ここの店先ではハラール弁当も売っているらしく、すぐ近所にある「修成建設専門学校」の生徒や近所に住むムスリム系外国人御用達になっている模様だ。

その何軒か隣に「大阪ハラールレストラン」というそのまんまなネーミングのパキスタンカレー屋が営業している。この店について詳細は後で触れることにして…

この周辺地域を見回すと、他にももう一軒「シタラハラルレストラン」というパキスタンカレー屋もある。既に気付いていたが、いずれもパキスタン人経営の店である。

日本に住むパキスタン人は中古車販売業が非常に多い。埼玉県八潮市(通称ヤシオスタン)や富山県射水市といったパキスタン人集住地域にいる人々も、その多くは中古車販売業(プラスアルファで何か)で生計を立てている。シタラハラルレストランの上にもこんな看板がある件。

それから少し離れた大和田一丁目交差点付近にも「アーンズカフェ」というハラルフード店を兼ねたカフェが営業していて、ここもやはりパキスタン人経営。

店内に入るとそこは完全にパスポートの要らないパキスタン。左手にハラルフードの数々も置かれているが主に多いのはやはりパキスタンの食い物である。よく見ると「自動車商」のプレートも店内に貼り付けてあったが、長い髭を蓄えたパキスタン人の店主は中古車販売業もやっている模様。

ハラールなピザやうどんといった軽食類も食える「アーンズカフェ」だが、ここではカフェらしくチャイとデザートを注文。パキスタンのポピュラーなデザート「キール」(Kheer)は米と砂糖と香辛料で出来ている、南アジア感満載の甘味である。

さらにアーンズカフェとL字型に繋がる同じ建物が丸々一棟、外国人観光客向けのゲストハウスとして使われている。「Moosa’s Guest House」という屋号も付いていた。小洒落た外観にリニューアルされているが、ここも2017年に開業したばかりのようだ。

明らかにムスリム系外国人向けのデザインで、店のウェブサイトを見ると「大阪マスジドが近くにある」ことをプッシュしていたり、インドネシア語やマレーシア語で書かれているあたり、そっち方面の来客を当て込んでいる事が分かる。

そしてこの地域のランドマーク的な存在となっているのが4階建てのビルに鎮座する「大阪マスジド」という名のモスク。元々は2001年に同じ西淀川区でも外れの方にある出来島地域で開かれたが、その後に交通便の良いこの場所に移転している。いずれにせよ21世紀生まれの超新星ムスリムタウンのシンボル的存在。

この建物は2010年に向かいにある「修成建設専門学校」の所有していた建物を借り上げ、関西のムスリム系住民の祈りの場として使われるようになったもの。きちんと男女別に入口があったり、一階部分にはハラルフード店もあって、彼らの生活を支える拠点になっている。

この大阪マスジド、向かいの大阪ハラールレストラン、元からある修成建設専門学校の三つが寄り添うこのT字路上が大阪におけるムスリムコミュニティの中心と言える場所である。特にモスクの礼拝の時間帯前後には沢山のムスリム系住民が集まる。埼玉の八潮が「ヤシオスタン」ならば、この場所はさしずめ「ニシヨドスタン」と呼べる場所になりつつある。

ちょうど金曜の正午、大阪マスジドでの礼拝の時間帯に近いタイミングで「大阪ハラールレストラン」にピットイン。駅前でもないのにかなりの盛況である。相当流行っているお陰か、このレストランも開業数年で増床して大きな店舗に化けている。

金曜日限定らしいランチビュッフェは1人1200円でパキスタンカレー・ナン・ビリヤニ・デザートが食べ放題になっている。大阪下町ゾーンの物価を考えると少し高い気がしなくもないが、香辛料が大量に使われていて本格的過ぎるので、食ってるうちにこの値段でも納得する。

大阪市西淀川区で食える本格パキスタン料理の数々。埼玉県八潮市の八潮市役所近くに何軒もあるパキスタン料理屋の雰囲気と激しく被りますが、八潮も西淀川区も工業地帯でNIMBYな要素がてんこ盛りなのも、両者共通している。

この店もやはり日本国内のムスリム系マニアには噂になっているせいか、大阪人でもない標準語をしゃべる日本人の客がやけに多い(なぜか食べログには大阪の店なのに八潮を知っているユーザーの書き込みが目立つ)。

パキスタンカレーとビリヤニを腹一杯食って意気揚々と店を出たところ、「アッラーの他に崇拝に値するものはない」…真向かいの大阪マスジドの玄関上に掲げられている、何やら考えさせられる内容の文言が書かれた看板が気になった。

2001年のアメリカ同時多発テロ、それと数年前にあった「イスラム国(IS)」の台頭などでテロ行為とは無関係な一般のムスリム系住民が日本の一部の右翼団体などから迫害の的にされる事もあったが、これまでイスラム教徒とは縁の遠かった日本人にとって、今後も増加の一途を辿るであろう彼らの存在を意識せずに生活をする事は難しい。

将来の世代は彼らムスリム系住民との文化や習慣の違いを知り、うまく対応する必要が生じるだろう。とりあえずパキスタンカレーは普通に美味かったのでオススメしときます。あとどこの店のパキスタン人も日本語がペラペラ過ぎるのには驚きました。


The following two tabs change content below.
DEEP案内シリーズ管理人。大阪ベイエリアの貧民窟育ち。独自のひん曲がった視点で街歩きを続けております。2008年より上京。関西に留まらず全国、海外に取材対象を薄く広く伸ばして来ました。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。
トップへ戻る
Copy Protected by Chetan's WP-Copyprotect.