関西にもあった!「姫路市のベトナム難民コミュニティ」を訪ねる

1975年のサイゴン陥落以後、それまで20年もの長きに渡って続き泥沼状態にあった「ベトナム戦争」の最中、ボートピープルとも呼ばれた、小舟に乗って戦火を逃れ他国へ渡った「インドシナ難民」の存在。その多くはアメリカやオーストラリア、カナダ、ヨーロッパ各国に移り住んだが、そのうちの1万人あまりの人々は日本政府によって受け入れられた。


日本に渡ったインドシナ難民は国内に設けられた二ヶ所の「定住促進センター」がある街に移りその地での新生活を始めた。そのうち関東は神奈川県大和市にあり、代表的な場所として「神奈川県営いちょう団地」(横浜市泉区・大和市)がインドシナ難民とその子孫が多く住む場所として知られている。そして今回訪れたのは、もう一ヶ所、関西における定住促進センターがあった街、兵庫県姫路市における「ベトナム人コミュニティ」である。

インドシナ難民が移り住んだ街・姫路市のベトナム人コミュニティとは

姫路市街地から北東に7キロ離れた仁豊野地域にある「姫路聖マリア病院」に隣接する「カトリック仁豊野ヴィラ」の一角に、当時難民として日本にやってきたベトナム人有志によって、感謝の意を示す記念碑が置かれている。まさしくこの場所に「姫路定住促進センター」が置かれ、着の身着のままで日本に来たインドシナ難民が新生活を始めたのである。

ベトナム戦争終結から40年余り、日本にやってきたベトナム難民にも子孫が生まれ、姫路市内やその周辺地域にも数多くのベトナム人が暮らしている。市内にある市川団地や勅旨団地といった公営住宅には神奈川のいちょう団地同様、ベトナム語で書かれた注意書き看板が多く見られる。

ベトナム人住民が多い「勅旨団地」を見る

特に姫路市街地の東部を流れる市川沿いに点在する市営住宅には沢山のベトナム人が生活をしており、我々が見に来た「市営勅旨団地」(姫路市花田町勅旨)もその一つだ。

この勅旨団地でも、ゴミ捨て場は日本語とベトナム語の二ヶ国語表記になっている。なお、兵庫県全体では11,583人の在日ベトナム人が暮らしているが、そのうち4分の1近い2,510人が姫路市在住。(2016年、兵庫県ホームページによる)

夜にヤンキーがたむろしそうな公園には同様に二ヶ国語の注意書き看板が置かれている。ところで「注意」はベトナム語でも「Chú ý」(チューイー)なんですね。中国の隣国という点では日本と同じで、言語も似通うのである。

団地の目の前にある神社の鳥居の前にもベトナム語看板。「Cấm đậu xe」は「駐車禁止」を意味している。

団地向かいの戸建住宅にもベトナム語看板。「NAM HAI」とあるが、ここはベトナム食材店のようである。さっきの駐車禁止看板は恐らくこの店の買い物客と関係あるのだろう。

毎週日曜日夕方に「ベトナム語教室」が開かれるという市営勅旨団地の集会所。他の地域でもそうだが、難民一世は国籍と言語の壁にぶつかり、その子孫である二世や三世も自分はベトナム人なのに日本語は話せてもベトナム語も話せない、というアイデンティティ喪失の問題があり、進学や就職も含めすんなりと日本社会で生きていけるものとは限らない。結果、市営住宅暮らしとなるベトナム人住民が多いのが現実だ。

姫路にもあったベトナム仏教寺院「大南寺」

姫路市には全国でも珍しいベトナム仏教寺院も存在する。四郷町坂元にある「大南寺」である。見ての通り建物も山門も真新しく、2013年9月に出来たばかりの寺らしい。山門はよく見りゃ工事中だし、いかにも建設途中といったところ。

中にいたベトナム人のオッチャンに一言断りを入れてから中にお邪魔させてもらうことにした。寺院の敷地は1400㎡もあって非常に広々としている。既に当方は埼玉県越谷市のベトナム寺院「南和寺」(一時期はここが日本唯一のベトナム寺院だった)を訪れた経験があるが、この大南寺はあそこよりもさらに広い。

ちなみに同じ兵庫県には在日ベトナム人が多い神戸市長田区の東尻池町(地下鉄苅藻駅近く)に「和楽寺」というベトナム寺院が2012年に開かれており、その姉妹的な寺院としてここも開かれたそうだ。姫路、長田以外にも関西では大阪府八尾市にベトナム人コミュニティがあるが、この調子だと八尾にももしかしたらベトナム寺院ができるかも知れないね。

大南寺の敷地内には真っ白な観音像や大仏像も鎮座していてかなり本格的な造りをしている。ここも年に何度かは埼玉の南和寺と同じく、派手派手しいお祭りが行われるようだ。ちなみに南和寺のテト(ベトナムの旧正月)は関東近県から「こんなにもいるのかベトナム人!」と驚嘆する程のベトナム人参拝者が集まるが、ここも同様の光景が見られるかも知れない。

大南寺の住所や創立日を記した石碑。ベトナム語では「CHÙA ĐẠI NAM」となる。在日ベトナム人人口は今後も増加傾向にあり、将来的にはベトナム仏教寺院もそう珍しい存在でなくなってくるかも知れない。

せっかくだから姫路でベトナム料理を食おう

関西屈指のベトナム人コミュニティがある姫路市にはベトナム料理の旨い店もある。国道312号、372号が交差する二本松交差点近くにある「フォンクエ」で夕飯を食う事にする。もっと路地裏の怪しい場所にある店かと思いきや、ロードサイド沿いにあって店構えも綺麗だ。

店内も開放的で明るく、まだ時間も早かったので他に来客もなく、応対はベトナム人女性店員が一人だけだった。店の看板には「料理教室」とも書かれてあったが、たまにベトナム料理講座でもやっているのだろうか。

ついでにベトナムをはじめとしたアジア食材も扱っている店なので、姫路市内に住むベトナム人やアジア系外国人御用達の店になっているようである。

定番の牛肉のフォーと生春巻き、サラダのセットで胃袋を満たす。オーソドックスであっさり目の味付けだが旨い。フィリピン料理は油っこくて全然流行りませんがベトナム料理は野菜多めでヘルシー志向なので、日本人にも抵抗なく食えますよね。

締めには氷とコンデンスミルクを大量に入れた甘い甘いベトナムコーヒーで喉を潤す。姫路は遠いのでなかなか行けない土地だが、今回はパスポートのいらない貴重なベトナミーズ体験が出来た。姫路のベトナム、そこの貴方にもお勧め致しますよ?


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DEEP案内シリーズ管理人。大阪ベイエリアの貧民窟育ち。独自のひん曲がった視点で街歩きを続けております。2008年より上京。関西に留まらず全国、海外に取材対象を薄く広く伸ばして来ました。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。
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