【天王寺区】戦後のドサクサ闇市から再開発で生まれた昭和空間「うえほんまちハイハイタウン」を見る

大阪市内には終戦直後からあちこちで非合法の「闇市」が勃興し、その名残を留める場所がいくつもある。鶴橋駅前にある商店街なんかはその最たる例だが、そうした闇市跡が再開発されて生まれ変わった場所もいくつかあり、梅田には「大阪駅前ビル」、そして近鉄電車のかつての終着駅だった上本町には…

「うえほんまちハイハイタウン」というビルがそびえている。昔も今も上本町のランドマーク的存在。この建物が戦後のドサクサ状態だった上本町駅前の一等地を近代的な街並みに変貌させた。

なんで「ハイハイタウン」という珍妙な名称になったのかよくわからないんですが、上町台地の上にビルを建てるからそのようなネーミングを選んだとか、そういう説があるらしい。今でこそ上本町は途中駅扱いになってしまっているが、万博イヤーの昭和45(1970)年に近鉄難波線が開通して難波直結になるまではここが近鉄にとってのターミナル駅だったのだ。

大阪駅前ビルと並ぶ大阪市内の闇市クリアランスビル

昭和55(1980)年に完成した地上15階、地下2階建ての大型再開発ビル。既に出来上がってから築40年近いヴィンテージ物件である。近鉄百貨店上本町店が入る近鉄電車大阪上本町駅の真向かいにそびえており、ここが街の一等地である事は地図を見ても明らかだ。6階から15階の高層部は当初分譲マンションだったが、現在は一部が賃貸で出回っているようだ。

同じ駅前のランドマークとして挙げるとすると千里中央のセルシーとかもそうですが、さすがに40年近くも過ぎると佇まいが見るからにくたびれてしまうものである。よくわからん浮浪者みたいなオッサンがたむろしていたり「いつもの大阪」な感じにしかなっていない。上町台地の上は文教地区だと言っても、そこはどう転んでも大阪市内なのです。

そんなハイハイタウンの表玄関にどしーんと鎮座する偉そうな銅像こそが、この「うえほんまちハイハイタウン」の建設に尽力した中田明正という、かつて上六商店街振興組合理事長を務めていた人物である。上本町六丁目なので「上六」という愛称があるのは昔のこと。上六と聞いて「上六トルコ」というとある特殊なお風呂屋さんの名称を思い起こすのは、恐らく上本町がまだ下品でガラの悪い歓楽街だった頃を知る年寄りしかいない。

闇市上がりの商店街振興組合で200人以上もいた商店主らを全て取りまとめ再開発事業を成功させた功績を讃えて建てられた理事長の銅像が今も誇らしげに街を見守っている。今の世の中、再開発事業で個人の銅像なんて建つような時代ではない。昭和感漂ってますわ。

ハイハイタウンの“産みの苦しみ”はそばに置かれた案内板にもびっしり書き綴られている。終戦直後に勃興した闇市も一度は大阪市当局によって強制閉鎖されたが、生業を失い当初は絶望に暮れていた商店主はその後地主との賃貸契約交渉を進め、ようやく生活の場を持つ事ができた、云々の説明。

同じ場所には「真田幸村緒戦勝利之碑」も建立されている。当地周辺は真田山公園をはじめ真田幸村にゆかりのあるものが多い。当方は真田山プールがガチムチお兄さんの溜まり場になることくらいしか知りませんでしたが。

うえほんまちハイハイタウンの館内に入りましょう

さて、そろそろハイハイタウンの館内に入ってみることにしますかね…って、「ペットをもちこまないでください」のシールにもいちいち感じる昭和レトロ感。

ハイハイタウンの地下1階から3階までは商業テナント、4・5階にはクリニックが入居する、闇市クリアランス的な商店街となっている。ここに当初からの闇市上がりの各商店が入居していたのが始まりだが、今見ると結構空きテナントも多いし寂れた感じがしなくもない。

中央の吹き抜けには“赤備え”に身を包んだ「真田幸村」と忍者が宙吊りになっている。NHKの大河ドラマ「真田丸」も売れてましたし、ちょっと気合入れて賑やかしに作ってみたんでしょうかね。

しかしこのエスカレーターの下の古臭いデザインの噴水などが容赦なく「プレイバック80年代」な雰囲気を放っていて、オッサンの心の琴線にいちいち触れてくる。東京で言う「ニュー新橋ビル」にも雰囲気が近いが、上本町はそこまでスーツ姿のサラリーマンがいる感じではない。

その見た目通り、ハイハイタウンもまたオッサンの溜まり場となっていそうな酒場だのパチンコ屋だの、喫茶店やカラオケスナックなんかが入居する空間になってしまっている。大阪駅前ビルの地下にも通ずるダメオヤジの溜まり場感…

とあるカラオケボックスの看板がなぜか三色旗カラーなのは近所に創価学会施設が固まっている「関西のリトル信濃町」であるがゆえのことか。(2008年の古い写真のため現存確認はしておりません)

個人経営のインディーズ感半端ない街の食い物屋も元気に営業中。軽食類や洋食に強いカフェレスト。もちろん店内全面喫煙可、というのはデフォである。チェーン系ではミスタードーナツ、なか卯、餃子の王将や李朝園もあったりするが、フレッシュネスバーガーみたいなのもある。

アルコール臭しかしないハイハイタウンの地下飲食街は空き店舗が目立つ

地下一階に降りるとそこもやはり仕事帰りの呑んだくれオヤジの溜まり場たる飲食街。ここも容赦なく飲み屋ばかりとなっていてアルコール臭がどぎつい。非常出口看板をパロった「ニュー天山閣」の看板もキテますね。

うえほんまちハイハイタウンの真骨頂「名物ハイハイ横丁」へいらっしゃーい。結局“ハイハイ”ってアルコールでハイになる意味だったんですかね?

…というかここ「天山閣ハイハイ横丁」という単独の居酒屋店舗なんですけれども、ひたすら長ーいカウンター席で商売してはります。長さ30メートル、日本一長いカウンター居酒屋…だそうです。傍から見ると料理の配膳や客あしらいが大変そう。

しかしその真向かいを見ても空き店舗が虚しい姿を晒しているのが見られる。大阪の都心部でしかも駅前一等地の立地なのに、やはりこれは寂れすぎではないのだろうか。

どうもこのもっさりした空気…横浜にある「桜木町ぴおシティ」の地下飲食街で感じたのと同じものである。あちらも当初は鉄道発祥の碑が建つような街なのに横浜駅にお株を奪われて衰退してしまった地域。ぴおシティとハイハイタウンは姉妹ビル提携を結ぶべきだ。

タバコの吸殻をベランダに投げ捨てる住民がいるハイハイタウン住居フロア

ハイハイタウンの上層階は住民が暮らしているマンションにもなっているが、エレベーターに貼られた管理組合からの注意書き…煙草の吸殻をベランダに投げ捨てるって、それ一歩間違えたら放火になりますよ!ダメ、ゼッタイ。

また上層は住居ばかりではなく事務所利用されているケースもあるようで、大阪の中でも特に教育熱の高い天王寺区らしく灘校出身専任講師による中学受験個別指導塾なんてものも入っている。東大か京大を目指すエリート御用達でしょうか。しかし階下のオッサン臭い空間とは別物過ぎる。

うえほんまちハイハイタウンはこのように様々な人種が入り乱れる駅前ビルとなっている。しかしもうちょっとテナントの貧民仕様っぷりはどうにかならんのかね。地下鉄谷町九丁目駅、近鉄大阪上本町駅にも直結している一等地なのに…


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DEEP案内シリーズ管理人。大阪ベイエリアの貧民窟育ち。独自のひん曲がった視点で街歩きを続けております。2008年より上京。関西に留まらず全国、海外に取材対象を薄く広く伸ばして来ました。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。
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