【営業中の写真撮影厳禁】西成区に存在する日本最大の現役遊郭「飛田新地」を歩く(2012年)

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現在の飛田新地は北側から順に桜木町、山吹町、大門通り、弥生町、若菜町(阪神高速の西側)、新天地(阪神高速の東側、鯛よし百番の裏)とおおまかに分かれている。人通りの激しい北寄りの「青春通り」は山吹町、老齢のお方が多い南寄りの「妖怪通り」は弥生町と若菜町にあたる。

やはり一番人気は綺麗どころが勢揃いの青春通りで、夜ともなると特に東京あたりから初めて来た人間にとってはカルチャーショックのあまり夢でうなされる程の光景を目にする事になる。大阪以外にないですからねこんな場所。玄関口にはライトアップされたお姉ちゃん達、やり手ババアが次から次へと「ちょっとちょっと見てってやお兄ちゃん、可愛い子おるさかい」などと声を掛けてくる。

店の玄関に出ての顔見世があるのは全国的にも飛田と松島、それに尼崎のかんなみくらいではないだろうか。表向きに自由恋愛という事にしているのは全国のソープランドだって同じである。この飛田新地には160軒ほどの「料亭」が営業しており、戦前は飛田以上に栄えていたという二番手の松島新地がその半数の80軒程なので量的には他を圧倒している。飛田で働くお嬢の数は約400人。それだけ遊客の好みに応える幅も広くなる。これでも最盛期より半数に減ったらしいのだから大阪のエロ産業のお盛んさには呆然とさせられる。

どこを見回しても夥しい数の「料亭」…このような風景は全国訪ね歩いても飛田新地でしか見る事はできない。他の松島や信太山も結構な規模なのだが、大正時代の佇まいを残した「昔の遊郭」そのままというのはやはり飛田を置いて他にはない。ちなみに花の万博が開催された1990年にソープランドが規制され大阪府内の店舗は壊滅したのだが、それ以前は飛田新地にも「トルコ温泉ニュー世界」という店舗が存在していた(現在は跡形もない)。

もしも営業時間帯にふらっと女連れや女性単体で来た場合、玄関口に座っているやり手ババアに嫌味ったらしく「なんでこんな所に女がほっつき回っとんねん」などと野次られたり、お嬢からもけんもほろろに怒鳴り散らされる羽目になる。

彼女達の立場を弁えると同性に好奇の目で見られる事に対する屈辱感もあるし怒る気持ちは分からないでもない。そういう意味では今もこの一画は女人禁制の聖地なのである。しかし近年では釜ヶ崎のドヤ街がバックパッカーホテル化していてエロ好きな外国人観光客が集団で物見遊山に来る事も増えてきた。

約160軒ある「料亭」に毎日1500人もの男性客が訪れるという飛田新地だが、特に人通りの激しい「青春通り」にある店は月1000万もの売り上げがあるとかないとか。飛田で働くお嬢は地方から様々な理由でこの場所に来るが、羽振りが良くなるとホストに注ぎ込んだりして結局借金を重ねてずっと働き続ける羽目になる。

最近になって大門通りの阪神高速高架下付近に整備された真新しい公衆トイレ。飛田新地という場所柄だけにか男女の別はない。

新地の各所に置かれた掲示板にはSHINGO☆西成のポスターがやたら貼りまくられていた。最近では毎年正月に飛田新地で新春パレードが開かれていてSHINGO☆西成や他のヒップホップアーティストがやってきて盛大にお祭り騒ぎを起こしている。むろん、女人禁制である。

ちなみに7月24日と25日は飛田新地がある地元の町内会で夏祭りが行われ、子供を連れた神輿が新地の中までを堂々と練り歩く。井上理津子氏の本の中ではこの日だけは飛田新地の街並みをバックに神輿の写真を撮影しても咎められる事がないと書かれているが、実際に試す勇気もないのでやめた。

所謂「妖怪通り」の名で呼ばれる弥生町通り。地味な佇まいだが相変わらず「料亭」は密集している。年増好みのエリアゆえ人通りも少ない。営業時間帯には玄関先に座っているオバチャンにニヤニヤ見つめられて目のやり場に困ってしまう。

表向きには「料亭街」になっているだけなので別に地域の子供達はここがどういう場所か深く考える事もなく生活圏の一部として認識し違和感なく通り過ごしている。

「料亭」以外にもこのような戦後の佇まいを残した呑んだくれオンボロ長屋が建っている事もある。飲食店も充実していて、遊客だけではなく地元民も飛田にお勤めのお嬢様も別け隔てなく生活している。昔の日本中で見られた遊郭の風景というのはそういうものだったのかも知れない。

新地の中にある住宅街の路地。SHINGO☆西成もここが「小学校の通学路」だったと唄っておられるくらい、ごく普通の生活空間でしかない。大阪では「新地」の存在は当たり前なんです。ウチのお父ちゃんも昔よく遊びに行ってましたよアハハという会話は日常茶飯事。やっぱり大阪って凄い土地だよな。

飛田新地は平成の時代に生き続ける日本最後にして最大の現役遊郭。今も毎夜毎夜、西成区山王三丁目の一画でピンク色の怪しい光を放ち続けている。


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DEEP案内シリーズ管理人。大阪ベイエリアの貧民窟育ち。独自のひん曲がった視点で街歩きを続けております。2008年より上京。関西に留まらず全国、海外に取材対象を薄く広く伸ばして来ました。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。
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