梅田のすぐ隣にある濃厚下町アーケード「天五中崎通商店街」(2007年)

梅田から谷町線に乗ってたったのひと駅の「中崎町」をご存知だろうか。梅田にかなり近いのに、戦災を免れたために今でも古い長屋が多く残っていて、大都会に隣接するレトロな下町という特徴が若者を中心にウケていて、最近になって、再開発の進む茶屋町方面から東へと賑わいが移っているという街である。そんな中崎町を訪れました。

中崎町と言えば「天五中崎通商店街」。そのまま東へ抜ければ天神橋筋商店街へと続く、古くから存在する下町の商店街だ。少し寂れている印象はあるが、店の数々は大阪人らしく思いっきり個性を放っている、私のお気に入り商店街の一つである。

のっけから謎の看板「レディス21相談室」。放置自転車のせいか看板が真ん中から思いっきり破壊されているのが痛々しいが、明らかに昭和30年代の匂いを放ちビミョーにサイケ調を意識したようなオール手書きの看板はそそられるものがある。一体どんな店なのか。こんな怪しさ爆発の所に悩み相談に行きたくないが気になってしょうがない。

「おいでやす通り」なる天五中崎通商店街。どうやら生半可な世界ではないようだ。

これがあの大都会大阪・キタの玄関口、梅田のすぐ目と鼻の先にある町のテンションだとは思えない。しかしそれがいい。灯台下暗しと言うではないか。

さらに、地下鉄中崎町駅の1番出口に隣接する、「スパゲッティ専門」のそそられる看板。赤・白・緑の配色がなんとなくイタリアーンである。

入口からして既にスパゲッティ専門店のイメージとは程遠いテンションである。

「スパゲッティー専門 倶蘇酡麗」店の名前が読めません!(笑)
ふと横の張り紙に目が行きました。従業員募集の張り紙ですねー。

どうやら店の名前は「クソッタレ」と読むのだそうです。
タベルナとかであれば納得いくのですが「クソッタレ」だそうです。なぜにクソッタレ。今日びのイカレ珍走団でもこのネーミングはありえない。
これはそそられるぜ。入るしかない。

中に入ると、これまた期待を裏切らない店構え。入口付近には食材が入ったダンボールが置かれ、Uの字テーブルの両側に男一人客ばかりが黙々とスパゲッティを啜っている所を見ると、まさに「吉野家」そのものである。しかし考えてみれば、お洒落に食べるものだという頭があるパスタが食べたいとなっても、男一人でなかなかイタメシ屋に入るのには覚悟がいるもの。思えば貴重な店なのかも知れない。しかも椅子も、使い古された場末のスナックのお下がりのような椅子で、素晴らしい。

せっかく店の名前もクソッタレなので、スカトーロ…いや、ペスカトーレを注文。690円也。オーダーしてから茹で上げる細めのパスタはしっかりアルデンテ。イカ・タコ・アサリがどっさり入っていて、割とリーズナブルに上品なパスタを召し上がれた。なかなか、良い店である。店内禁煙であればなおさらよかったが…出てくるものがパスタでなければ、中華料理屋と見紛うテンションにくらくら。また来よう。

引き続き天五中崎通商店街です。細い道幅に暗い照明、なんとなく寂しい感じもするのだが…天五中崎通にはまだまだ怪しげな店が沢山存在する。

唐突に「カレーライス」と書かれたのぼりが立っている、変な店。ターバンを巻いたインド人キャラクターが「チョトカライ??」言ってます。それはいいがこの店構えは一体何なんだ?

さらに価格表を見るとぶったまげるくらい安いの。カレーライス(並)180円。どひゃー!インド人もビックリどころか、西成のオッサンもビックリ。コロッケ・ミンチ・鳥のから揚げ・ヘルシーまぐろをトッピングに加える事ができるらしい。一番高いメニューでもとりからカレー(大)400円である。他にもカレーうどん180円(安っ!)、やきめし、やきそば、やきうどん、チキンライス、牛丼、ジュース、色々と用意されている。

やっぱり大阪は庶民の街。安くてうまい店は絶対に流行るもののはずだが、不思議なことにここに限っては誰も店の中で食っている所を見たことがない。一体どういう店かと思ったら…

一緒の店舗内に魚屋が同居しているのである(笑)
魚屋の中に、申し訳程度にイートインのテーブルが狭苦しく置いてあるだけなのである。
ちなみに左隣もカレーライスの専門店だが、全く関係のない店舗である。

こんな店だからなのか、ほとんどの客がテイクアウト利用者らしい。持ち帰り容器は別途で40円かかるんだけども。

よく見ると店舗の上には「明石水産株式会社」と書かれたオンボロのビニール屋根が掛かっているのだが、これが魚屋の屋号だろうか。ちなみに謎のカレーライス屋の名前は「名物よしや」という。魚屋はオッチャンが、カレー屋はオバチャンがやっているらしい。

それだけではなく、占いまでやっている謎の「名物よしや」。魚屋かと思ったら、実に多様に異業種への展開を見せるミステリアスな店。中崎町に来たら是非お食事ついでに貴方の人生を占ってもらいましょう。

「天五中崎通」はそれだけではない。大阪ではどこの商店街に行っても見かける大衆食堂「力餅」もバッチリある。
しかしここの力餅食堂は、中崎町という土地の気風を受けてか知らぬが、随分なオリジナルメニューが用意されているのだ。

それが力餅食堂中崎店の自家特製「カレー麺」。麺の中にカレーを練りこんだスペシャルオリジナル麺なのである。きっちり大阪発と赤文字でアピールしてますぜ。

イチオシは「カレー皿うどん」のようだが、純粋にカレー麺の味を堪能したい方は「カレーざる」も用意されている。世の中はカレーで溢れているが、ざるそばがカレーというのはさすがに未知の料理である。クソッタレのパスタを食って腹いっぱいだったからレポートはまた今度だ。

まだまだ、天五中崎通商店街には有名な店がある。今ではすっかり休業状態の謎の店…
そして「下町のメシヤ」と親しまれてきた…

「宇宙家族」

いや、中身はごく普通の定食屋なのだが、実は宇宙人が経営している。マスコミ・雑誌にも数多く取り上げられて有名になった店なのである。しかし店は2000年代初頭から休業してしまっている。店主がお亡くなりになってしまったようである。

ともかく、中崎町という所が大阪最後の原始的下町であるという事だけは良く分かった。中崎町は大阪に残された数少ないパラダイスである。


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DEEP案内シリーズ管理人。大阪ベイエリアの貧民窟育ち。独自のひん曲がった視点で街歩きを続けております。2008年より上京。関西に留まらず全国、海外に取材対象を薄く広く伸ばして来ました。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。
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