阿倍野再開発地区から離れて、南側へ寄り道してみることにした。西成区と阿倍野区の境界はそのまま上町台地の自然の壁となっていて、阿倍野区側からは西成区の町並みが広々と見渡せるのだ。
そんな区境の道を南へ進むと、所々に西成区側の天下茶屋方面へ下りる階段がある。あのボクシング亀田興毅でお馴染みの、西成の天下茶屋である。
まさに、リアルじゃりン子チエワールド。
昭和の大阪における大衆庶民の暮らしを陽陰ひっくるめて描写した漫画「じゃりン子チエ」のモデルとなった地区は西成区萩之茶屋付近。この場所ではいまだに昭和の時代から時が止まったままの空間が広がっている。
大阪は戦時中に米軍による大空襲を幾度か受け、都心部の大部分を焦土と化した、苦い歴史があった。
しかし、米軍の標的となった軍事施設の少なかった大阪市南東部はあまり戦災の被害を受けず、こうしたレトロな民家が今も残る場所が多い。
逆に大阪砲兵工廠があった大阪城の東側や、軍事施設、港湾施設の多かった港区、大阪市西部は壊滅的な被害を受けた。
あべのベルタの南側、広大な敷地を誇る「大阪市設南霊園」のすぐそばにも、市の豪華施設が鎮座していた。
阿倍野区民センター、阿倍野図書館、やすらぎ天空館、とある。
大阪市の建てた豪華施設を数々見てきた自分にとって、とっさにアンテナが反応した建物「阿倍野区民センター」
大阪市内24区で一番最後に完成(02年1月)したという区民センターは総事業費106億円を掛けた猛烈に豪華な建物。同時にセンターに隣接する、大阪市立葬祭場「やすらぎ天空館」も建てられている。
「やすらぎ天空館」「夢宙ときめき館」「くらしの今昔館」「なにわの海の時空館」…もうちょっとネーミングひねれよ、大阪市(笑)
阿倍野区民センターには大小のホールと、阿倍野図書館が入っている。そして区民センターの真上には「大阪市住宅供給公社」の運営する住宅「コーシャハイツ阿倍野筋」がある。オートロック付きの豪華な住宅だが、葬儀場と広大な墓地の隣にある公団住宅。霊感の強い人には住めません。
普通の人のセンスなら墓場と葬儀場と住宅を隣り合わせに建てる神経など信じられないのだが…建てた人は気にならなかったのかな?
大阪市設南霊園。面積から言えば東西500メートル以上は確実にある。平野区の「瓜破霊園」の次に広い。一般市民の霊園だが、この中には西成で行き倒れになったオッサン達の無縁仏も納められている
…夜中に来たらさぞかし涼しい思いができることでしょう。
だが幽霊よりも怖いのはこのへんを徘徊するヤクザのお兄さんなのは言うまでも無い。