阪堺電車北天下茶屋駅前の路地をさらに進むと、「聖天山公園」がある。ここが阿倍野区との境になっている。
あの「あいりん」からは2キロ程度しか離れていないというのに、西成のイメージとは程遠い閑静な住宅街。(一応阿倍野区だが)そのど真ん中に、聖天山という小さな山があって、山は地元で「聖天さん」と呼ばれる正圓寺という寺の境内になっている。
公園側から入ると、こちらが寺の入口になる。
地元では「天下茶屋の聖天さん」と親しまれている「聖天山正圓寺」。「聖天さん」というのは実はインド神話のガネーシャ神と同じ。
この寺が建つ聖天山の頂上は、天保山などと並んで「大阪五低山」(別名・大阪アルプス 笑)の一つに数えられている。
このお寺も歴史は古く、天慶2(939)年に光道和尚が現在の松虫交差点の付近に開基した「般若山阿部寺」が最初と言われる。元禄年間にこの場所に移築再建されたものである。公園部分には古墳も残されている。
私が思うに、大阪も長い歴史のある町、そのルーツである上町台地界隈を歩き回るのも、京都や奈良と同じくらい意義のある観光コースだと考えているのだが、そこんところのアピールが下手糞なのが大阪市クオリティ。
「正圓寺」も、やはり寺なのに鳥居がある、こちらも生駒聖天・宝山寺と同じく神仏混合の様式だ。同じ境内には「聖天神社」もある。
せっかくの由緒ある寺のある、聖天山公園内は、すっかりホームレスのテント村と化していた。
相変わらずここでも大阪市はトラ柵をバリケードにホームレスの小屋掛けを邪魔するばかりである。
やっぱりここは西成だった。さしずめ「聖天山野宿労働者野営基地」といったところか。
目の前がお寺なので、住職が気を利かせているのか、諦めているのか知らないが、本当にフツーの街中の公園が野営基地と化している、そんな様相の場所である。
ここで生活できている者はまだまともな部類だろう。自立支援センターのキャパシティが圧倒的に足らない今の現状では、彼ら野宿生活者は危険な大通りの中央分離帯や河川敷、はたまた木津川の岸壁のような危ない場所に小屋掛けする他ない。どうにも進歩がありません。