先程、雄琴港から看板だけが遠巻きに見えた「鎌倉御殿」の店舗が国道161号線沿いにデデーンと君臨しちゃっている。鎌倉御殿は雄琴だけでなく熱海とか千葉の栄町とか色んな所で目にする屋号ですが関連性があるのかどうかは不明。
雄琴の風俗街は吉原や飛田のような長い歴史はなく、1号店が出店してから40年目になろうとしている所だ。
1966年に滋賀県の風営法改正があった時、雄琴温泉付近の一部のみ特殊浴場の営業を「禁止除外区域」としたため、規制の無かったこの地区目掛けて日本全国から業者がこぞって集まった土地らしく、特殊浴場なだけにそのへんの事情はかなり特殊だ。
国道161号線沿いには「情報喫茶」の文言を記した喫茶店の看板が。皮肉にも琵琶湖汽船の某クルーズ船と同じ名前でやってます。どうやら「雄琴遊楽街」というのが正式名称のようだが、風俗街成立当初は「トルコ村」とか「ちろりん村」などと呼ばれていたらしい。
「情報喫茶」という文言を聞くと東京の吉原を思い浮かべるが、あちらはバリバリ規制されてしまい同様の文言は消されている。普通の喫茶店と違うのは、店内で客の要望通りの店舗を案内してさしあげる事だ。
国道沿いにド派手で巨大な看板を掲げているのでここがソープ街だと一発で分かってしまうのが雄琴の特徴。まず最初に現れる「シルクロード」。夜は看板全体がネオンサインになっているので眩しく光る。
「シルクロード」のゲートの向こう。江戸城、エルフィン、とけい台、六本木、などなど店舗の看板が競い合うように並べられているのが見える。朝早くからでも店舗は普通に開いていて呼び込みのボーイがそれぞれの店先に突っ立っている。これ以上突っ込むのは色々危険そうなのでやめた。
もう一つ国道沿いに立つド派手な電飾ゲートはその名も「ゴールデンゲート」。関西ソープ街の王者・雄琴、その風格を漂わせる堂々とした造りだ。
全盛期にはこの一帯で約50店舗程がひしめいていたと言われる。しかも店の一つ一つがラブホ並みにでかいハコなのだ。壮大なスケールである。現在は若干規模が縮小して約40店舗程。殆どがソープだが1軒のみヘルスとなっている。
雄琴ソープ街は衰退傾向にあるそうだが、それもデフレの波をモロに被っているのか、出会い系サイトの氾濫で需要バランスが崩れたか色々要因があるが、相場を見てみると吉原みたいに高級店も多いし全体的に予算は高め。なるほど、これも時代の流れなのかと。
温泉街から最も遠い位置にある「川筋通り」に並ぶ店が高級店揃いという。その名の通り片側は大正寺川が流れているので店舗がもう片方にしかなく見渡しも良いので、ひとまず川筋通りに入って様子を伺う事にした。
川筋通り入口から見る全景。さすがに高級店が多いというだけあって店自体も一軒一軒でかくてゴージャスなものが目立つ。
さっきのシルクロード、ゴールデンゲート、どの道から入っても内部で袋小路になっており通りぬけ出来ず、さらに風俗店以外の物件は皆無に等しいので、それ目的で出入りする客か関係者しかいない事になる。
川筋通り入口付近にある「花影」は1971年に初めて雄琴に進出したソープ第一号店である。北陸石川県の山中温泉でトルコ風呂を経営していた田守世四郎なる人物が雄琴の「禁止除外区域」に目を付け、当時は田んぼしかなかったこの土地に出店したのが最初。
「花影」のオープン以後、雨後の筍の如く風俗店が全国から進出してきたのだ。特に規制強化された隣の京都府から締め出された業者が多かったらしい。
ちなみに花影の手前にある「アムアージュ」の前身(千姫)はマグロ釣りが趣味でやたら涙もろい某有名タレントが父親の代から経営していた事のある店舗があったという場所。
「アムアージュ」「花影」「絵里奈」といった店を過ぎるとその次に現れる「マキシム」は西洋の城というかドラクエの城のようなデザインを彷彿とさせるユニークなもの。
「マキシム」と同じ敷地内にある「うさぎ」。単刀直入過ぎるネーミングと店名そのままなうさぎさんのイラストとバニーガールちゃんがいやがうえにも怪しさを増す。しかし店の巨大さにいちいち驚いてしまう。さすが雄琴はスケールが違うな。
川筋通りには10軒近い店舗が全長400メートル近く大正寺川沿いに続く路地に連なっている。繰り返すようだが、本当に一店舗一店舗がバカでかいので、端から端まで歩くとかなりの広さがある事が分かる。さらに店舗が続く。名前通り白い建物の「ホワイト」、それから「プレジデント」。
大正寺川を挟んだ向かい側は完全にそっち系の店は存在せずマリーナと田んぼが広がるのみだ。川はそのまま琵琶湖に注がれるが、途中の橋は存在しないので一旦国道に戻らなければ川の南側に渡る事は出来ない。
続いて高級感を全面に押し出した外観の「フォーナイン」。店によって外観はやたらケバケバしかったりお上品だったり場末感全開だったりとかなり違いがある。個性的で見るだけでも面白い。多分、店のコンパニオンも同様に…
その隣の「皇帝」はかなり豪勢に作りこまれた西洋風の城のようなゴージャスな外観を持っている。建物自体は古く老舗の風格が漂う。
川筋通りの突き当たりは「アトリエ」。こちらはやや大衆店的な雰囲気。女の子のイラストと「ギャル一同」という文言にそこはかとなく漂う昭和の匂い。
雄琴ソープ街の中は国道側から入ると全て袋小路になっていて通り抜け出来ない。川筋通りを突き当たった後はちょうど通ってきた裏側の道を通り抜ける事にする。店の裏手を見るのも趣深い。どの店も巨大でキャパシティがでかい事を思い知らされる。
ちなみに反対側は日帰り温泉施設「あがりゃんせ」が新たに整備したフットサルコートになっている。
裏道を抜けるとちょうどソープ街を取り囲む畑に出てくる。ここからの眺めが格別。ごちゃごちゃと乱雑に作られた店舗の建築を見ていても統一性を全く感じさせない。すこぶるカオスな光景である。
スーパーマリオのクッパ城みたいな造りの店舗もあれば日本の城郭風に作られた店舗まで…ともかく「城っぽい建物」という特徴が辛うじて共通している点だろうか。
再び川筋通りへと戻る農道の先には「マキシム」と「花影」の店舗裏、その背に広がる山は琵琶湖を見下ろす日本三大霊山の一つで今もなお人々の信仰厚い比叡山。
シルクロード、ゴールデンゲートの2つのゲートの奥に広がっていた店舗群を裏から眺める格好になるが、表からではとてもカメラを出せる状態ではない。出勤中の嬢の姿や呼び込みのボーイ、関係者の車などがひっきりなしに往来しているからだ。
衰退したとは言えども関西屈指の雄琴の名はまだまだ錆びついてはいない。
隣接する怪しげなスーパーミュージアムの駐車場から店舗建物の姿を間近に拝見する事が出来る。改装中の店もあって足場が組まれている。
さらに「あがりゃんせ」の駐車場から。何やら店舗に混じって古びた市営住宅っぽい建物も紛れているが一体どういう事だろうか。従業員の寮と考えると不自然さはないが…
同じく「あがりゃんせ」駐車場の別のポイントから店舗群を裏側から観察出来る。ちょうど「人魚の城」の裏手にあたる。目と鼻の先の店に行くには一度国道に出てから例のゲートに入り直す必要があり、温泉街と風俗街は至近距離で明確に区分けされている。
「人魚の城」裏手、別方向から見る。
さらにそそられる建築物が目白押しだがこれ以上長居するのもよろしくないので深入りするのはやめておいた。
ひとまず一巡してみて雄琴の巨大さを実感した訳だが、これほどまでのキョーレツな場所は他にない。ユーザーな方もウォッチャーな方も雄琴は貴重な風俗遺産の一つなので、一度は訪問をお勧めしたい。