JR奈良駅前 恐怖のハトマンション (2)

古都の玄関口を役人による土建事業でめちゃめちゃに壊してしまった奈良市の「シルクロードタウン・21計画」の失態。私が20年ぶりくらいに訪れたJR奈良駅前は、人影もまばらな再開発の土地に豪勢なコンクリート建造物が立ち並ぶ奇妙な空間に変わってしまっていた。

なら100年会館

そういえば、JR奈良駅自体も、歴史的建造物である旧駅舎(昭和9年築)を廃止してただのオブジェにしてしまい、豪勢で無機質な新駅舎を現在建設中。2010年の完成予定で、それまでプレハブの仮駅舎で営業している。バカでかいだけで不釣合いなJR京都駅ビルの二の舞にするつもりか。

市営第一号コミュニティ住宅(奈良市三条本町)

せっかくのスペースが死んでいる

もしかすると、今はもう彼岸に渡った黒川紀章氏も、この市営住宅を建てるにあたって、人とハトの「共生」を目指したのかも知れないと深読みすると、住人には失礼だが笑いが漏れてしまう。

恐怖のハトマンション

建物自体がハト色だし、どう見てもハトさんウエルカムな構造をしているではないか。

ハトさん達はV字の谷間の奥の方が居心地良いらしく、中層階以上は完全にハトパラダイスと化しているのだ。


安心して洗濯物が干せるのはごく一部だけ

逆に谷間の手前のお宅はあまりハトの被害はなさそうに見える。対策なしで安心して洗濯物が干せるのはごく一部のお宅だけなのだ。

ハトが止まりやすい構造のバルコニー

ベランダにハトが来ないよう、住民は知恵を絞って色々な作戦に出ているが、まるで効果がない。

応急処置

V字の一番中央の窓を見ると丸ごとブルーテントやすだれ等で塞いでいるお宅がある。生活を守るために応急処置が施される建物の様相は、超近代的な黒川デザインの住宅とはまるでかけ離れた、九龍城砦の如き異様な姿をさらけ出している。もはや世界建築博どころではあるまい。

防護ネットでハト除けをするお宅

最も効果的なのはベランダ全体を防護ネットで覆う事だろう。ここまでして初めて、屋外に安心して洗濯物を干せる状態になる。

防護ネットでハト除けをするお宅

だがハトが防護ネットに掴まって、その重みで防護ネットがズレたり破れたりすると、そこから容赦なくハトは忍び込むのだ。

CD-ROMでハト除けを試みるお宅

ハト除けの方法はあの手この手。この家など、ベランダ中にCD-ROMを吊るしてハトが嫌がるような作戦に出ているのだが、効果があるのかどうかは非常に怪しい。

他にも、大量の焼き鳥串を固めたかのような障害物を自作し、ハトを丸ごと「串刺し」にする作戦を取るお宅、防護ネットではなく、釣り糸のような細い糸を縦横に巡らせた手製のネットを張っているお宅もあるが、いずれも効果なし。

ハト除けの網が取り付けられるも効果なし

現在、ハト害の酷い家から順番に、奈良市側からハト除け網を据え付ける工事を行っているという。所々施工されているのを確認できるだろう。しかし…

網の中に入ってくるハトさん達

その網すら平然とハトの足場に使われる体たらく。こうなったら本当に人とハトとの共生住宅として開き直るしか道がないような気さえしてしまう。だが、事はそんなに呑気に構えては居られない。

ハトに占拠されたお宅のバルコニー

このように、ハトにまるっきり占領されたバルコニーの中は、ハトが巣を作ってしまい雛まで中に入っているという凄まじい状態であると言われる。ベランダに一歩も出られないどころか、積もったハトの糞が悪性の菌を繁殖させ、窓を開けるだけで住人の体に健康被害を及ぼすという、笑えない状況に陥っているのである。

ハトは帰巣本能が強く、一度巣作りすると必ずその場に戻ると言われる。簡単にこの状態を覆す事はできない。だから、人間の方が音を上げて市営住宅を出て行ってしまうのだそうだ。

一体このトホホな黒川紀章デザイン市営住宅はどこへ向かおうとしているのか。バブルの負の遺産として、街づくりの失敗作として、奈良を訪れる観光客の目には、随分いい恥さらしになってしまったものだ。

車のバンパー放置

それにしても「市営住宅」にはこうした不法投棄が目立つ。なんでだろう。

参考記事
朝日放送・NEWSゆう:「もう限界・・・」鳥害の悲惨な実情
奈良新聞:市民の声を聞け!
奈良市が世界建築博中止を決定 黒川紀章氏は「今後も再開発に助言」 – ニュース
– nikkei BPnet

参考書籍

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