【グルテンフリー】大阪らしからぬシャレオツ飲食街「福島バル街」で喰らう意識の高いお好み焼きの味

JR大阪環状線・JR東西線・阪神本線で梅田から僅かひと駅、あるいは徒歩でも来られる程近い街「福島」。一昔前は冴えない下町でしかなかった記憶しかない場所だったのが、ここ十数年くらいで急激にシャレオツ化している。

というわけでやってきました福島に。大阪人にとって「福島」と聞くと東北地方の福島県ではなくこの土地のことを指す。昔からある大阪環状線の同駅は相変わらず造りが古臭い。この駅の窓口でわざわざJR東日本管轄の福島駅行きの切符を買う鉄ヲタとか、おるんちゃうか。

JR福島駅の近くには1993年以降地下化した阪神電車福島駅もあるが、こちらは区間急行と各停電車しか止まらず時間帯によってはなかなか電車が来ない不便な駅なので、利用者は滅法少ない。短気な大阪人は「こんなん梅田まで歩いた方が早いわ」となる事請け合い。

ホワイトカラー層向けのシャレオツな街に変貌する福島

しかし1997年にJR東西線新福島駅が開業してからは、オフィス街として急激に発展を進めてきた。特に大阪市の中心部を流れる堂島川・土佐堀川に挟まれた「中之島」のオフィス街にも近い事から、朝夕は多くのスーツを着たサラリーマンの姿が見られる。

そうした立地もあって近年はJR福島駅周辺の古臭い長屋がやたらリノベーションされまくってシャレオツな飲食店が続々増えたり、駅前には富裕層が住むタワーマンションや大型マンションが増えだしている。大阪はどこもかしこも貧困層だらけですが福島は福祉の街ではないようです。

福島のシャレオツ化を決定づけた再開発ゾーン「ほたるまち」

何にせよ福島のオシャレ化にとどめを刺したのが、堂島川沿いの旧阪大附属病院跡地を大規模に再開発し2008年に街開きした「ほたるまち」と称する複合施設である。大淀の旧大阪タワー跡地から移転してきた大阪朝日放送の新社屋とタワーマンション、多目的ホール「堂島リバーフォーラム」などが一体となっている。

「ほたるまち」に足を踏み入れると、ここがよもや大阪とは思えないキラキラっぷり。大阪の六本木ヒルズですかここは…とも一瞬錯覚しそうになるが、それほど規模は大きくない。住所の上では「福島区福島一丁目一番地」だが、ここまで来ると堂島や中之島エリアに含まれる感がある。

堂島リバーフォーラムの向こうにある堂島川にはリア充カップル御用達のクルーズ船もあって土日には定番デートスポットとなっている感はあるが、認知度が低いせいか外国人観光客がほっつき回っている姿も見かけない。近くにある京阪中之島線の終着駅「中之島駅」も相変わらず乗客が少ない。

ほたるまちにある福沢諭吉誕生地の碑

シャレオツ再開発ゾーンになる前は阪大病院だったこの土地、さらに前に遡ると、あの一万円札でお馴染み福沢諭吉の誕生地という、これまたたいそうな歴史のある土地だった。諭吉は大阪生まれだったのか。しかし父の死去で生後間もない頃には帰藩してしまっている。

ここには「豊前國 中津藩蔵屋舗之跡」の石碑もある通り、福沢諭吉の家系は中津藩士で、今の大分県中津市にゆかりがある。同市は鱧の名産地であり、鱧料理や骨切りの調理技術もまた大阪に伝わったといういわれもあるが、中津って言われても許永中の地元の大阪市北区中津しか思い浮かばない件。

客単価の高いシャレオツバルが増殖する福島の長屋

最近めきめきと街並みが変貌しつつあるのが、「ほたるまち」から福島駅寄りになにわ筋を挟んだ西側一帯の長屋が密集する一帯。狭い路地裏の下町的空間が残るこのエリアが続々リノベーションされまくり、シャレオツな飲食店街に変貌している。

それもおおよそ客単価も高く、常々炭水化物しか食べない貧困層の土着大阪人は全く相手にしていない高級志向の食い物屋ばかりとなっていて、総じて大人びた雰囲気を放っている。一見さんお断り的な佇まいの店もチラホラある。

こういう場所、他都市の例を見れば名古屋でも円頓寺商店街や四間道のあたりがシャレオツバル街化しているのが見られるが、オサレクラスタの皆様の間では古民家リノベーションって最近流行りなんですかね。

福島駅に近い側の一帯もかなり高密度な飲食街が形成されている。一昔前はこんな感じじゃなかった覚えがありましたけれども、近年は都心回帰の傾向もあって、福島駅周辺も「キタ」の一部に組み込まれてきた感がある。駅周辺のタワマンも「西梅田」とか書いちゃってるところもあるし。

肉寿司だの何だの高単価っぽい店が目立つんですが、店の看板に「バル」の二文字が書かれている店が多すぎて、お前ら「バル」って言いたいんだけとちゃうんかい、とツッコミを入れたくなる気持ちを抑えて歩きましょう。この一帯をひっくるめて、当方では便宜上「福島バル街」と呼ぶことにする。

かつては寂れた佇まいを晒していたはずの大阪環状線のガード下も軒並みシャレオツ風味なバルが増殖しており仕事帰りのスーツを決めた意識の高そうな若いサラリーマンや女子軍団が闊歩する。

いずれも店の外からオシャレな内装や飲み食いする客が丸見えになっている開放的な佇まいで、イマドキ感に溢れている。店名やメニューの黒板などにも目立つ横文字。あみだ池筋を挟んだ先のあたりまでこうした飲食店が連なっている。

「バル」って言っちゃうとオシャレに聞こえるのでしょうが、既に福島駅周辺の商店街では今年2018年で15回目となる「福島バル」の開催が11月に予定されている。福島バル街の飲食店が共同で街を盛り上げている、このイベントもすっかり板についているようだ。

バル以外にも横文字な感じのシャレオツカフェも多いんですけれども、やたらと欧米系外国人観光客がたまっているカフェまであるのを見るといよいよ「西海岸で飲む、いつもの味」的なノリすら感じられる。そこで紹介したい一軒の店がある。

なにわの意識高い系!「グルテンフリーのお好み焼き」を出す食い物屋

福島バル街が形成されている一帯のやや外れた場所に建つ長屋の一画がリノベーションされたイマドキな佇まいの店構えで営業する「SALEDO鉄板」なる食い物屋。野菜料理をプッシュする健康志向の鉄板焼き専門店となっているのだが…

この店で出されているのは「グルテンフリーのお好み焼き」なるもの。出ました、意識高い系注目のマジックワード「グルテンフリー」。意識の高くない人向けに説明をすると、このグルテンというのは小麦粉などに含まれる蛋白質を意味しており、このグルテンが体に有害な作用をもたらすという考えに基づいて主に欧米圏の意識の高いセレブ層を中心にグルテンを摂取しない食生活が推奨・実践されているが、日本ではもっぱら痩身のためにグルテンフリーが有効であるという曲解が成されているケースも多い。

恐らく大阪市内で「グルテンフリーのお好み焼き」とわざわざ明示したお好み焼きを出しているのはこの店以外に存在しない。まず、小麦粉の塊でしかないはずのお好み焼きをどう弄ると「グルテンフリー」になるのか、これはもう店の中に入って自分の舌で確認するしかないだろう。

お通しで出されるおかわり自由のサラダをついばみながらお好み焼きが運ばれてくるのを待とう。まあ、ある意味大阪市内で健康的な飯が食える場所は限られるわけで、そう捉えれば有り難い店なのではないか。

早速注文して出てきた「グルテンフリーのお好み焼き 豚玉」(880円)。見た目は完全にお好み焼きそのものでしかない。しかし、自らの口に放り込むまではこのお好み焼きがどうグルテンフリーなのか確かめようもない。一口頂こう。…ん?

グルテンフリーという概念には小麦粉を使う事が悪という考えが根底にあるので、このお好み焼きは全く粉物ではないのだろうという想像をしていた。違う。小麦粉を使わない代わりに「米粉」を使っているのだ。生地の断面をよく見て欲しい。これはまさしく新世代型のお好み焼き…

ちなみに同店舗では「グルテンフリーの焼きそば」(豚やきそばは880円)なるものも出しており、こちらは小麦粉の代わりに玄米粉で練られた麺が使われている。まあ、お好み焼きも焼きそばも普通に食えましたね。お安く腹一杯になりたい大阪市民には流行らなさそうですが、福島に食いに来るシャレオツ層はそもそも大阪市民とちゃうやろ。

いずれにしても、健康志向にこだわる人間がそもそもお好み焼きとか焼きそばなんか食わんだろうというツッコミに抗いながら、大阪の新たな意識高い系ソウルフードを目指す同店の姿勢は稀有なものである。

大阪イコール粉物しか思いつかないそこの貴方、福島バル街に、大阪の未知なる新しい食文化を探しに行きませんか。


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DEEP案内シリーズ管理人。大阪ベイエリアの貧民窟育ち。独自のひん曲がった視点で街歩きを続けております。2008年より上京。関西に留まらず全国、海外に取材対象を薄く広く伸ばして来ました。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。
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