【新型コロナでインバウンド終了】ふるさと納税にも中国人にも頼れない関西空港のお膝元「泉佐野」の憂鬱

来る日も来る日も「新型コロナウイルス」の話題ばかりで気が滅入る中、大阪の空の玄関口・関西国際空港のお膝元である大阪府泉佐野市に関してこのような記事が。ふるさと納税制度でアマゾン商品券など“過度な返礼品”を用意して全国から凄まじいほどのカネを寄せ集めたものの、総務省にダメ出しを食らい制度から除外された挙げ句、国を相手に裁判沙汰を起こした、あの泉佐野市である。

「無期懲役やないか」 ふるさと納税ゼロの衝撃 泉佐野市 

我々取材班、そんな泉佐野にも幾度となく足を運んでいる。距離的には大阪と和歌山のほぼ中間にあたり、南海本線で難波から特急ラピートに乗って30分ちょい。大阪市内通勤圏としては十分にアリな距離感だが、ベッドタウンと言うにも発展度合いが微妙でもある。人口は約10万人、関西空港周辺を除けば泉州タオルと水なすと玉ねぎの生産が盛んな片田舎だ。

関空利用者のほとんどが特急ラピート号に乗って素通りしてしまう南海泉佐野駅で降りる。言うまでもなくここが泉佐野の中心市街地となるわけだが、駅前商店街も含めて活気に乏しい。そのへんの事は別の機会に詳しく紹介したいのだが、今回お伝えしたいのは「泉佐野市はなぜカネに関してやたらと必死なのか」という理由の一端についてだ。

バブル期の過剰投資で赤字遺産乱発しまくり、財政破綻寸前だったかつての泉佐野市

まず泉佐野駅を降りると、駅から割と近い一角にどでかいオフィスビルが一軒ズドーンとそびえ立っている。17階建ての「泉佐野センタービル」である。元々はオフィスビルとしてバブル崩壊後の1992年に竣工した建物で、泉佐野市内ではりんくうタウンの「りんくうゲートタワービル」に次いで高い人工建築物となる。

関西空港の建設に伴い、泉佐野を中心とした泉州地域に多数ハコモノやインフラの建設、土地開発が乱発された時期があったが、それがバブル崩壊の煽りを受けて過剰投資が仇となり、特に泉佐野市は深刻な財政悪化を招いた。一時期は「財政再建団体転落寸前」とまで言われていたのが、折しものインバウンド景気で国際空港の門前町である地の利もあって、この建物もスカスカだったオフィスフロアを改装して「泉佐野センターホテル」として2015年1月1日より営業開始。

案の定ながらホテルの客のほとんどが中国人の団体観光客である。沈んでいた泉佐野の財政も“チャイナマネー”で盛り返したのか定かではないが、2009年に財政健全化団体に転落した後、5年後の2014年には「財政健全化計画」を達成、脱却を果たしている。

我々が泉佐野を訪れた2017年秋の時点では、この通りホテルの前には中国人の団体がそこらじゅうに見かけられた。中国人のオバチャンが「爆買い」よろしく、でかいドン・キホーテの黄色いレジ袋をぶら下げながら歩いている。新型コロナウイルス発生で中国人観光客が来なくなった今、こんな光景も二度と見られないかも知れないぞ。

中国人観光客のお買い物広場と化していた「りんくうタウン」

関西国際空港の連絡橋を目前に広がる「りんくうタウン」。ここもインバウンド景気到来前まではおおよそ閑散とした寒々しい空間だった。大阪市の赤字遺産・WTCコスモタワーと争うかのように建てられた高さ256メートルの超高層ビル、破綻した大阪府の第三セクターが運営していた「りんくうゲートタワービル」も今では運営会社も代わって「スターゲイトホテル」なんて言うてますが、今やこのビルも香港企業のものである。あの日産のミスタービーンもといカルロス・ゴーン被告が関西空港から逃亡直前に楽器ケースに入れられるまで過ごしていたのがここらしい。

そんな超高層ビルが見下ろすこの地にかつて存在していた、同じく大阪府の第三セクターが経営していた遊園地「りんくうパパラ」を知る人間はどれだけいるのだろう。大阪市の第三セクターが経営していた新今宮駅前のフェスティバルゲートといい、2000年代当時は大阪府市共々赤字遺産の破綻が相次ぎ、三セクの杜撰な経営体制が問われていた、そんな時代もありましたね。

そんなりんくうパパラの跡地にあるのが「りんくうプレジャータウンシークル」という商業施設。かつてりんくうパパラの入口に置かれていた一対の獅子像が、インバウンド景気で中国人観光客がどっさり爆買いにやってくる商業施設の門前に移されているという皮肉。大阪府との友好都市提携15周年と関西国際空港の開港を記念して1996年に中国・上海市から寄贈されたものである。りんくうタウンも関空開港から四半世紀、黒門市場同様大阪で屈指の“チャイナ化”著しいスポットである。

そんなシークルの店舗や飲食店街もいちいち中国語表記しか書いて無くて生粋の日本人が“全く読めません”状態になってしまっているのはいただけない。フードコートの客層も体感的には半数以上が中国人観光客だった。カネを落としてくれる人間が正義なのは経済の原則なのは言うまでもないが、さすがにここまで露骨だと引くわ。

その向かいのヤマダ電機も完全に外国人相手しかしていない件。家電量販店とドラッグストアの節操の無さは目に余るものがあったが、今回の新型コロナウイルス騒動で完全に「インバウンド終了のお知らせ」となってしまった。所詮は観光業など水物である、これまでしこたま儲け倒していた商売人の多くがそんな現実を噛み締めているのだろう。

偽物がはびこる自国で一流ブランド品がなかなか入手できない中国人観光客に大人気だった「りんくうプレミアムアウトレット」もインバウンド景気で絶賛拡張工事中だった最中にこの“コロナ騒ぎ”である。このへんの商業施設も先行き不透明過ぎて関係者は戦々恐々ではなかろうか。

中国企業の広告だらけでもはやどこの国の空港だか分からない「関西国際空港」

1994年9月の開港以来、成田・羽田を上回る数を誇る中国直行便が絶えず発着していた「関西国際空港」も、そんな中国様から持ち込まれた新型コロナウイルスが日本国内各所で発生している状況下で、とうとう全ての中国行き定期便が運休してしまう事態に。ここで外国人観光客にインタビューしまくっていただけのテレ東の番組も、当分ロケ捗りませんよね…

この関空のターミナルビルを少し歩いてみても、なぜか中国酒メーカーの広告がデデーンと掲げられていたり…もはやどこの国の空港なんだか分からない状態になってしまっている。日本の第二の空の玄関口なんだから、もうちょっとしっかりしてくれよ…

同じく中国系企業に買収されたインバウンド専門免税店ラオックスの広告が出ていたりして、節操の無さはなかなかのもの。中国人に人気の高い元卓球選手の福原愛がイメージキャラクターです。

ラオックスは関西空港内とシークルに二店舗あるが、このコロナ騒ぎで早々に希望退職者を募っている有様である。インバウンド依存の脱却を掲げる建前なのにそもそも中国人経営で中国人相手に商売していただけの会社が、そう簡単に変われるものかね。

関西空港がらみの税収で一番美味しい思いをしているのは泉佐野じゃなくて田尻町な件

そんな中国依存甚だしい関西国際空港だが、その空港が地元にもたらす税収はまるまる泉佐野市を潤している訳ではない。その理由は空港島が本土の陸地からそのまま市町境が持ち込まれ、二市一町に跨って綺麗に三等分されているからだ。地図を見れば関西空港が「泉佐野市泉州空港北」「泉南郡田尻町泉州空港中」「泉南市泉州空港南」の三地域に分かれているのがわかる。

泉佐野市の土地にあるのは空港設備のうち第一ターミナルの北ウイングとエアロプラザの一部、「関空展望ホールスカイビュー」のみで、貨物エリアは泉南市に、第一ターミナルの南ウイングや第二ターミナルの建物全てを含む他の主要設備は田尻町に入っている。

泉佐野は人口10万、泉南市は6万だが、田尻町はたったの8,600人。町の面積5.62平方キロのうち半分以上が空港用地(町本体は約2.3平方キロ)という超絶ミニ自治体だ。空港からの税収のみで財政が安定しているため、大阪府唯一の地方交付税不交付団体として明治時代の町域がそのまま残っている。この二市一町の人口比から考えると、どこが一番“美味しい思い”をしているのかは明らかだ。

かつては破綻した三セク空港会社の持ち物だった「関空連絡橋」が国有化された後、年間8億もの固定資産税の財源を失った泉佐野市。現在は国と泉佐野市との合意によって、ここを通る車に対して往復100円の「通行税」が課せられ、泉佐野市の財源に組み込まれている。この橋を車で渡る度に知らず識らずのうちに泉佐野市に100円払っている事になるわけだ。知ってました?タオル一枚買うより安いでんがな…

ちなみに2018年9月の台風21号で漂流したタンカーが衝突して壊された関空連絡橋、7ヶ月掛けて修復されましたが、修理費用の50億円は国の全額負担となっております。修理した部分、色変わってますね…

田尻町に爆誕した“家電量販店居抜きホテル”というインバウンド狂乱物件

で、そんなお隣の田尻町にまでインバウンド目当てのホテルがあるんですね…「からくさスプリングホテル関西エアゲート」というそうですが…この建物、なんと元「家電量販店」である。2014年3月まではここに「コジマNEWりんくう羽倉崎店」があったものが、外国人観光客の急増でホテルに用途変更。運営会社は東京らしいんですが…

このホテルも外国人観光客が絶えなかった以前では一泊1万5千とかしていた記憶があるのに、コロナ騒ぎでさぞかし客足が途絶えているみたいで、楽天トラベルなんぞで宿泊料金を見ると平日なら5000円前後から泊まれる激安っぷり。まあ、ここに限らずインバウンド景気で急遽商売始めちゃった系のホテルは総崩れでしょう。ご愁傷様です…

ふるさと納税にも中国人観光客にも頼れない泉佐野市、この先どうすんねん

中国人頼みのインバウンド景気はもう終わりだ、という事を結局長々と書く羽目になってしまった訳だが、深刻な財政難で「市名までネーミングライツ売却」(←買い手がおらず実現しませんでしたが)などこれまで形振り構わない政策を続々打ち出した、そんな泉佐野市のこれからはどうなるのか。ケチケチと泉州タオルを売る以外に生き残る道はないのだろうか。

しかし足元をよく見てみれば、泉佐野には大阪府内屈指の漁獲量を誇る「佐野漁港」だってある。南海泉佐野駅からも徒歩圏内で辿り着ける場所であるが、ここはインバウンド景気の最中でも中国人観光客が押し寄せることもなく、いたって穏やかな雰囲気の漁港の風景が拝める。

佐野漁港に隣接する漁協の青空市場ではその朝大阪湾で取れたピチピチの海産物がずらりと並べられ、中国人観光客ではなく地元民の買い物客の姿で溢れる。それから市場の二階では海産物が食える食堂まであったりするが、早めに昼飯に来ないと満席で入れないほどの人気だ。

様々な海産物、値札は日本語オンリー。気まぐれな観光客に媚びを売るばかりかしれっとプチボッタかまして日本人に愛想尽かされているような、どこぞの黒○市場などとは大違いだ。佐野漁港に行けば、シャコも箱売りで千円ぽっきり。この場所だけは何十年経っても変わる事はないだろう。

泉佐野市のふるさと納税制度に関わる一連の騒動も、よそから見れば明らかに自分達がルール違反しているのに逆ギレして国に喧嘩売ってるろくでもない自治体だとか、そういう叩かれ方をしているが、当の自治体にだってそこまで追い詰められる事情というものがある。

総務省に尻尾を切られる前にしこたま税収を蓄えて一時の安堵を得たようだが、とうとう日本全土を襲い終息を見せる目処すら立たない新型コロナウイルスを前に為す術もない今、この街の未来は果たしてどう転がるのだろうか。泉佐野市のヒーロー・イヌナキン(泉佐野の奥座敷・犬鳴山温泉から命名)にもそれが分かる術はなかろう。


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DEEP案内シリーズ管理人。大阪ベイエリアの貧民窟育ち。独自のひん曲がった視点で街歩きを続けております。2008年より上京。関西に留まらず全国、海外に取材対象を薄く広く伸ばして来ました。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。
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