【浪速区】大阪姉妹殺害事件の舞台となった大国町のマンションは「階数偽装物件」だった

梅田と双璧を成す大阪の巨大ターミナル「難波」を間近にひかえる大国町界隈は、都市の闇の部分が凝縮された怪しい街並みがそそられる。そしてこれから訪れる場所は色々と曰く付きのマンション。

地下化工事が済んだJR大和路線の線路跡を跨いで西側へ。遠目に大阪市の第三セクターがバブル期に巨額の税金を注ぎ込み調子こいてブッ建てた赤字物件「大阪シティエアターミナル(OCAT)」の建物が見える。随分近代的な街並みに変わったが、それでも街の陰気臭さがどこかしら漂う。

大国町駅から北西方向に約500メートル、最寄り駅で言うと大阪環状線の芦原橋駅の方が近い場所だが、浪速区塩草二丁目の一角にちょっと怪しげなマンションが公園に隣接してポツンとそびえ立っている。

細長い形状のワンルームマンション、外観から見ると8階建てプラスアルファといった所だが、やけに天井部分が不自然に映っている。パッと見た限りは屋上に巨大な広告看板が取り付いているのか?と思うかも知れないが、どうやらそういう訳でもない。

さらに屋上部分だけを拡大して見てみる。最上部に業者の名前を思しきカタカナがくっきり残った看板の跡が見える。8階建ての上にさらに2階建てが隠れたような形をしていることに気付くだろうか。あまつさえ窓のような切り込みまで見える。

間口の異様に狭い表玄関だけ見ると、何の変哲もない小奇麗なオートロック付きのマンションである。まさしく都会暮らしを始めたばかりの若い学生、しかも女性が好んで住みそうなタイプの物件。

だが、そう遠くない過去にこのマンションの室内で凶行が繰り広げられた。2005年11月に発生した「大阪姉妹殺害事件」の現場なのである。当時27歳と19歳の姉妹が突然部屋に乗り込んできた男に、まるで愉快犯同然のノリで無残に命を奪われた。当然ながら、事件後にマンションの名前も変わってしまった。

我思うゆえに我あり 死刑囚・山地悠紀夫の二度の殺人

犯人の山地悠紀夫(犯行当時22歳、2009年7月死刑執行、享年25)は山口県出身で、事件の3年前、2002年に実母を殺害して少年院に送致され3年間を過ごすが、出所後にこの凶行を起こしている。

山地は昭和58(1983)年生まれ、ちょうど神戸の「酒鬼薔薇事件」が報道された時期、元少年Aと同年代で「キレる17歳」としてマスコミに取り上げられた年代でもある。

現地は人通りも少ない殺風景な場所であることには変わりないのだが、それでも普通の住宅地の一画でしかなく、しかも通学路だし向かいに保育所もあるような所だ。こんな場所でも呆気無く犯罪は起きてしまうものなのだ。

マンション向かいの保育所に隣接して間新しい市営住宅などもあって地域の人口は決して少ない訳ではない。だがマンション自体は周囲から孤立していて、やや人の目の届きにくい状況にある。隣にあるのは某食肉加工会社の営業所で、真夜中は全く人が居なくなる。

マンションに隣り合う児童公園から建物を眺める事にした。正面から見たらやけに華奢な印象を受けるが横から見ると結構でかい。やはり8階建ての上の部分が隠されているような感じで怪しい。

実なこの物件、大阪市内各所に違法に作られた「階数偽装マンション」の一つなのである。建築確認申請書とは異なり実際には1階もしくは2階水増しして建てられている。姉歯物件とも呼ばれる「耐震偽装」マンションは全国各地にあったが、「階数偽装」だなんて話は大阪だけだ。

どう見ても8階建てのように見せてる「10階建て」の水増し違法マンションなのだ。

なぜこんな事が大阪市内でだけまかり通るかと言うと、実は建設工事終了後に自治体が済ませる事になっているはずの「工事完了検査」を大阪市側が実施していなかった為、そのまんまノーチェックでマンションが完成しちゃったというのだ。さすが大阪クオリティ。公務員の仕事っぷりは一流ですね!

ベランダから見る限り殆どの部屋はワンルームマンションの間取りであろうと思われる。細かい事を考えない学生や単身世帯ばかりなので今の今まで特に居住者と業者との間で問題は起きていない模様。ただ水増し部分のフロアは問題発覚後に全員「退去通知」が送られ現在は住めなくなっているそうだ。

そんな法律の抜け目を掻い潜って作られた階数偽装マンションが運命のいたずらだろうか凶悪犯罪の舞台となった訳である。被害者姉妹が住んでいたという4階の一室はカーテンや家財道具が置かれた形跡もない。今も空き家のまま放置されているのだろうか。色々と曰く付きまくりの物件でした。


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DEEP案内シリーズ管理人。大阪ベイエリアの貧民窟育ち。独自のひん曲がった視点で街歩きを続けております。2008年より上京。関西に留まらず全国、海外に取材対象を薄く広く伸ばして来ました。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。
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