京都市の最南端、宇治市との境に広がる巨椋池(二の丸池)の広大な干拓地を開発して生まれた「向島ニュータウン」。1999年にあった「てるくはのる事件」の犯人が住んでいた事が話題になったこともあるが、京都市内でも外れの外れ、最果ての地にある大規模団地の存在は、対外的にはあまり知られているようではない。

約6,000戸、人口約13,500人というマンモス団地のうち、その3分の2を超える4,200戸以上が京都市の市営住宅として運営されている関係上、低所得者層や訳ありな方々が寄り集まりやすいせいか、すこぶる評判も悪いニュータウン…昭和52(1977)年の街開きから既に40年が経過しようとする中、元から居た住民の高齢化に加えて、別の問題が浮上しだしている。
向島ニュータウンの外国籍住民が増えまくっている。特に中国人

向島ニュータウンにある団地のうち、市営住宅になっている第1街区、第5街区、第8~11街区に立ち並ぶこれらの高層棟に注目すると、団地の住居のベランダには何やら異常にバカでかいパラボラアンテナを据え付けたお宅がチラホラ見えている。

当サイト読者の皆様であればこれについて改めて説明するまでもなかろう。中国人世帯が本国の衛星放送を受信するための専用のアンテナであり、これがあるお宅はほぼ中国人が住んでいるものと見て間違いない。それもかなりの割合で見かける。

中にはベランダの外側に鳩よけやら家財道具一式を目一杯並べて“完全武装”したような要塞の如きお宅まで目にする始末。どこぞの○藤會あたりのヤクザ屋さんがロケットランチャーを打ち込んできても速攻で迎撃できそうな感じすらある。

中国残留孤児と呼ばれる彼らは日本人を祖先に持ちながら(偽中国残留孤児も多くいるようですが)も長らく中国で生き、中国の社会で生活してきた。言葉もわからないままこの国にやってきて、こんな町外れの団地でどんな暮らしをしているのだ。

なぜこの団地に中国人が多いかという事について調べると、やはり門真団地などと同じくここも中国残留邦人の帰国事業の結果、この向島ニュータウンに加え、同じ伏見区内にある醍醐地域にかなりの数が存在する市営住宅に多くの中国からの帰国者が住み着いたという経緯らしい。 旧正月の時期に醍醐地域では春節祭も行われ、京都市内在住の中国人ならびに中国残留孤児とその子孫が一同に集うそうだ。

他の地域にも言える事だが、中国残留邦人の帰国事業で日本にやってきた人々がこの国の社会に馴染めず、結局生活保護を受けながら市営住宅で細々と老後を暮らすしかないというのは、福祉や人権という観点から果たして正しいのか、結局自宅のベランダから生まれた国に向けてアンテナを向けて暮らしている、こうした人々の姿を見ていつも疑問に思う。

そんな巨大パラボラアンテナがあるのは市営住宅ばかりかと思っていたがそれも違うようで、“てるくはのる”が飛び降り自殺をした、UR賃貸住宅になっている第6街区にある高層棟にも少数ながらアンテナを掲げたお宅を見かける。埼玉県にある芝園団地の例を見てもわかるが、URは保証人不要なので外国人住民にとって入居のハードルが低いのであーる。

向島ニュータウンの中心にある広場に出る。ここにあるショッピングセンターにも以前は中国人経営の中国食材店(熙麟商行)があったそうだが、現在は廃業してしまったようで、とうとう店を見つける事はできなかった。ここいらの住民が中国食材を買うためには大阪市鶴見区の中国人朝市まで遠出することになるんでしょうかね。

しかしこんなパプリックな空間に堂々と団地住民が洗濯物を干しまくっているという光景は日本の団地ではなかなか見かける事がなかろう。今となっては向島ニュータウンの住民のうち2割近くが外国籍というのだ。ゆくゆくは芝園団地のようになる可能性は高い。

もっとも市営住宅というのは「福祉」の意味合いが強いハコである。2011年3月に関東・東北地方を襲来した「東日本大震災」の発生後、津波被害や原発事故によって多くの避難民が縁もゆかりも無い関西地方に着の身着のままで移住した。その一部の人々もまたこの向島ニュータウンに住んでいるというのだ。

市営住宅にある共同のゴミ捨て場を見れば、やはりここも日本語・中国語併記となっていた。向島ニュータウンの市営住宅には中国人以外にも韓国や東南アジア、南米系住民も僅かながら暮らしているそうだが、団地の中をくまなく歩いてはみたものの、その姿を見る事はなかった。

「不法投棄は犯罪です!」と書かれた警告看板も日中韓英四カ国語表記である。多国籍社会の到来で真っ先にやってくるのは兎にも角にも“ゴミ問題”に尽きる。この団地でも旧住民と外国人新住民の間で相当な軋轢が生じていたのではなかろうか。

そんな京都という大都市の外れにあり、都市の暗部をまざまざと見せつける「向島ニュータウン」という空間。この団地の深層はまだまだ奥深い。この話の続きはnoteの有料記事にていずれ書きたいと思う。