関西最強のセレブタウン・芦屋市にもある「上宮川町」の市営住宅

のっけから、このようなニュース記事があったんですが…
「芦屋セレブになりたくて」和歌山の女、他人の住所で運転免許取得 | 2018/9/9 – 神戸新聞

和歌山県に住む29歳の女が、なぜか神戸の免許更新センターに運転免許証の再交付手続きに訪れ、実際には住んでいない芦屋市の他人の住所を記載した申請書を提出し、免状等不実記載の容疑で逮捕されたというもの。芦屋住まいのセレブに一方的な憧れを懐き、全然無関係な芦屋の住民を巻き込んでとんだ迷惑を起こした事件、という話らしいが、こんな奇妙な事件を起こす人間がいるほど、全国区の知名度で憧れの的となっている街、芦屋って一体どれだけ凄いんでしょうかね。

…というわけで訪れましたよJR神戸線芦屋駅。ここ芦屋市は神戸市東灘区と西宮市に挟まれた人口約9万5千人、面積18.47k㎡という、兵庫県内でも二番目のミニ自治体となっているが、JR神戸線は新快速停車駅にもなっていて、駅前は再開発されておりやたらと華々しい。新快速電車に乗れば大阪にも三ノ宮にも僅か10分ちょいで行けるという地の利の良すぎる駅だ。

そんな芦屋市が何も端から端まで満遍なく高級住宅街ばかりかというと勿論そんなはずもないのだ。芦屋に憧れるあまり間抜けな罪を犯す人間もそれはそれでどうかと思うが、単身用アパートで見ても家賃5万円そこそこの物件はゴロゴロあるし、絶対に貧乏人が住民票を置けない街というわけでもないのだ。

JR芦屋駅の真ん前に市営住宅だらけのエリアがある

JR芦屋駅付近で単身用アパートの多い土地を見ると、駅のすぐ東側の「上宮川町」、その近隣の「親王塚町」「宮塚町」あたりに物件が多く見られる。このへんの地図をよく見ると、上宮川町はやたらと市営住宅が多く立ち並ぶ地域である事に気がついた。

芦屋市にも市営住宅だらけのエリアがあるというのは、ある意味「セレブタウン」の偏見でばかり語られる事の多いこの街の一つの知られざる側面である。しかもJR芦屋駅の目と鼻の先。この上宮川町はかつて「上打出」という地域名で呼ばれた旧同和地区の流れを汲んだ土地でもある。

地区の中心の上宮川公園を取り巻くように、市営上宮川町住宅1~5号棟が立ち並び、市立上宮川文化センターなどの公共施設もある。しかし公共浴場の類が全く無いのが芦屋らしい土地柄であるが故のことか。一部の市営住宅は一階部分が商店になっている。芦屋市のホームページにある「市営住宅一覧表」を見ると上宮川町住宅は全て阪神大震災以前に建てられた改良住宅である。

市営住宅の駐車場に停まっている住民の自家用車に混じってチラホラと現場仕事系のトラックが目につく。こうした地域では何ら珍しいものではない。しかしここが天下のセレブタウンの代名詞「芦屋」であるという事を頭に入れると途端に既成概念が崩れる音がガラガラゴロゴロと脳内に響き渡る。

市営住宅に囲まれてそびえる、何やらやたらゴージャスな佇まいの寺院が存在感をこれでもかと放っている。

浄土真宗本願寺派照善寺。この上宮川町の歴史と共に歩んできた寺院であろうか。

真正面から拝む照善寺外観。その風格たるやなかなかのものだが、実際はこの建物のみで庭などもないので寺院の規模としてはそれほど大きくはない。ただ地域のランドマークとしての貫禄がある。

この照善寺のすぐ西隣には上宮川公園があり、芦屋駅前ではそこそこ広さのある児童公園となっている。小さな子供向けの遊具もある。市営住宅ばかりのエリアというと荒れたイメージを想像しがちだが、この上宮川町に関してはそんなものとは程遠い、全体的に小綺麗で「シュッとした感じ」の街並みである。

地域の鎮守である「阿保天神社」。参道両側が近隣住民の駐車場として活用されている。やはり現場系の車がチラホラございます。

地区東側の宮川けやき通り沿いにある「芦屋市立上宮川文化センター」。児童センターを兼ねており地元の子連れ世帯が利用する公共施設である。「隣保館」という三文字があえて書かれているのは、かつてこの地域が貧困や差別に苦しめられてきた歴史があったからであろうか。しかし今となってはスラムと呼べるような状況は全く見当たらない。ただ昔の神戸新聞の記事にこの文化センターを巡るエピソードが綴られている。

上宮川文化センターの南隣にある妙ちくりんなデザインのマンションも芦屋ならではのスタイリッシュな意識高い系建築の一つか。「OAZO芦屋上宮川町」なる物件。ワンルームでは家賃73,000円から、だそうです。市営住宅は入居条件が色々あって厳しいので、この辺からなんちゃってセレブライフを始めるのも良いかも知れない。

ガード下に潜れば地元の子供が描いたアートの数々が。「しあわせの街 芦屋へようこそ!」と書かれていた。市民一人あたりの平均納税額、関西ナンバーワンの街・芦屋市、そこに住めば幸せになれるのでしょうか、だからこそ「住みたい街」と言われるのでしょうか、ようわかりませんけれども。


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DEEP案内シリーズ管理人。大阪ベイエリアの貧民窟育ち。独自のひん曲がった視点で街歩きを続けております。2008年より上京。関西に留まらず全国、海外に取材対象を薄く広く伸ばして来ました。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。
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