古くから、南大阪・奈良・和歌山から大阪都心への鉄道アクセスの拠点となっていた、天王寺駅・あべの橋駅周辺。多くの河内人・泉州人・奈良人・はたまた紀州人が往来する、大阪の南の玄関口である。
その天王寺駅の南西側に広がる「金塚地区」一帯(面積28ヘクタール)に大規模な住宅・商業施設を作り上げ、阿倍野を梅田・難波に並ぶ副都心にしよう、という大阪市の主導で1976年から始められた「阿倍野再開発事業」はいまも着々と続けられている。その現場を訪れた。
昔の航空地図を見てもわかったが、劣悪な木造家屋が残っていて、防災上問題のある地域として昔から再開発計画が挙がっていた。その経緯についてある程度理解はできる。しかしその実態は、大阪市政に食いつくゼネコン利権の主導で計画された、巨大すぎる集合住宅と商業ビルの建設ラッシュ。
阿倍野金塚地区一帯に住まう木造家屋の住民を全て立ち退かせるための膨大な立ち退き費用に重ねて、バブル崩壊による大幅な土地の下落で、土地所有者の大阪市は巨額の赤字を計上するはめになった。
計画通り土地の分譲を行うにも損が発生するわ、再開発事業の一番の目玉である「そごう」の誘致計画も、相手先の破綻によって白紙撤回されて、63階建ての巨大商業ビルの計画も頓挫、7階建てのビルを建てるよう計画変更を行った。
早い話が、南港コスモスクエアと全く同じように、バブルに浮かれて無計画にデカくやってしまったということだ。
そして財政難の大阪市、いまだに再開発工事は完成せず、取り壊された商店街や家屋はそのまま戦災で破壊された町のような悲惨な姿のまま、手をつけることもなく、緑色の鉄柵に囲まれ、痛々しく残っている。
現在、阿倍野再開発事業は事実上「破綻」扱いにされてしまっている。
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