大阪から一番近い無人島…旧陸軍要塞と廃墟旅館の島「友ヶ島」上陸記

和歌山市

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和歌山市 加太

ここまで来た所で、タイムアップ。帰りの船の時間が近づいてきた。第三砲台跡から野奈浦桟橋までの下りの山道を一気に駆け下りていく…が、結局船には乗れなかった。

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友ヶ島観光において最後まで油断ならないのが「帰りの船便」である。3月から11月までのハイシーズンでも、加太港から出ているフェリーは臨時便を含めて最大6往復。友ヶ島発の船が来る時間帯には長い行列が出来て、すぐに積み残しが出てしまう。状況に応じて臨時便も増えるが、それでも船は一隻しかないので、往復時間分40分程度は待ちぼうけを食らう羽目になる。

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これが夏休みシーズン中の野奈浦桟橋のフェリー待ちの行列だ。まるでノアの方舟を待つ難民のような気分にさせてくれる。南海電鉄が撤退する前はもうちょっと体裁良かったはずだろうに、この辺の事情も終末的で泣ける。

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で、案の定帰りの船に積み残されたので桟橋の周辺で時間を潰すしかないのだが、目の前にあるのが「旅館友ヶ荘」くらいしかない。この友ヶ荘のダウナーっぷりが容赦なくってまた泣きそうになりましたよ。かれこれ60年か、それ以上やってるという老舗らしいのだが…

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臨時便が来るまでの40分間、やる事もないので友ヶ荘の中の食堂で時間を潰す事にした。1990年代のものと思しき古いゲームの筐体。駄菓子屋とかによく置いてあった種類のものだな。「ぷよぷよ」とか「餓狼伝説2」とかがあるけど、既に大量の埃を被ったまま長期間稼働していない様子だ。

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店の壁のビールや飲料類の広告もおおよそ1990年代で時間が止まったままになっているようだ。紀州弁丸出しでキッツイ物言いの友ヶ荘の名物婆さんにかき氷はないかと聞いたが、「ないない。やってるのはカップヌードルだけや」と一蹴される。しょうがない。表の高い自販機で飲み物でも買うか。

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離島価格なので仕方ないにせよドリンク一本180円というなかなかぼったくり気味な自販機は現在の友ヶ荘で最有力の稼ぎ頭になっている模様。なかなか来ない帰りのフェリーを待ちくたびれて喉がカラカラになった客がどんどん買いまくる。

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手書きの「脱衣室」「コインロッカー」の看板も脱力感満載。他に殆ど店もないので、海水浴客はここを使うしかない。湘南のビーチ(笑)みたいなロマンスは期待できそうにありませんね。

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友ヶ荘の婆さんは創業以来60年間この場所で商売を続けていて一人で店を切り盛りしているみたいなのだが、あまりに世間離れしていて一般的な商売っ気とかサービス精神といった言葉とは無縁の暮らしを続けている化石のような存在だ。

間違っても店の中にあるゴミ箱に持ち込みゴミを捨ててしまってはならない。途端に婆さんが怒りだして捨てたゴミを拾わされて都会の人間はマナーがどうこうとブツブツ文句を言われてしまう。同行者がこれをやってしまったので、苦い思いをした。

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野奈浦桟橋の奥には、人が住んでいたような一般住居と思しき建物もあった。友ヶ島には鹿もいるらしい。南海電鉄が観光整備をしていた頃に放たれた鹿が代々野生化して住んでいるというのだ。我々はこの場所で鹿の糞しか見なかったが…あ、フェリーがそろそろ来そうですよ。

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…という訳で束の間の友ヶ島観光を終えて加太港に戻っていったのだが、島の西半分しか回れておらず、これでコンプリートできたとはとても言えない。また頃合いを見て再訪できればと思うが和歌山は遠いし、友ヶ島汽船も今のように船便を出しているかどうか不安がある。当の和歌山市は観光整備する気力もあんまり無さそうだし、全体的に昭和が置き去りにされて酷く鄙びたイメージがあった離島だった。


旧陸軍要塞と廃墟旅館の島「友ヶ島」上陸記

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