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【関西の沖縄】武庫川リバーサイドの隠れたウチナータウン「宝塚市高松町」を訪れた

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関西の各地に沖縄県出身者が集住する、いわゆる「ウチナータウン」と呼ばれる街が点在していて、特に有名なのが大阪市大正区なのであるが、その歴史は戦前期に遡り、関東大震災の影響で没落していた首都圏を尻目にメキメキ発展をしていた阪神工業地帯の労働力として出稼ぎ移住した沖縄・奄美出身者が今なお関西各地に多く住んでいる。大正区に次いで沖縄県出身者が多いのが尼崎市だが、それ以外にも知られざるウチナータウンというものは存在する。

そのうちの一つが、宝塚市の武庫川沿いに位置する「高松町」という地域にある、という事を耳にしていたので、今回訪れた訳なんですが、場所は阪急今津線小林(おばやし)駅から東に1.3キロ離れた一帯、阪神競馬場の北側にあり、川を挟んだ向かいは伊丹市である。宝塚市と聞くとどうしても「宝塚歌劇団」の洗練されたイメージが先行して綺麗どころなのではと勘違いしそうになるが、実際は全くそんな事もない。

宝塚市高松町ウチナータウンの起源は武庫川堤防工事の飯場

宝塚市南東部の武庫川沿いに並行する県道114号沿いを走ると見える「トシヤ精肉店」の看板に釣られて住宅地の中に入ると、看板通りに肉屋の店舗が建っている。店の外観を見るだけで、屋根の上の小さなシーサー、壁に埋め込まれた「石敢當」のプレートが、ここが沖縄をルーツに持つオーナーの店である事をアピールしている。高松町で沖縄食材を販売する数少ない店の一つでもある。

今でこそ高松町は「閑静な住宅街」以外の印象を持ちにくい、普通の街となっているようだが、この街がウチナータウンとなった起源はまた戦前の事で、大正時代に行われた武庫川堤防工事の飯場があり、沖縄出身の労働者が集まった事に始まるとされている。当地が堤防工事の第四次工事現場だったので「ヨンコーバ」と呼ばれていた。

そして住宅街に並ぶ戸建住宅の表札を見れば高確率で沖縄系の苗字を掲げるお宅が多いのが分かる。玄関塀の上にちょこんとシーサーが乗っているのも共通している。当方の知る限り、関西でこれだけ見た目に分かりやすいウチナータウンは大正区周辺か尼崎か当地くらいだ。

宝塚歌劇団は全国区で知られているけど「宝塚沖縄芸能歌舞団」なんて聞いたこともございませんでした。大正区のような派手さは無い地域だが、今も脈々と沖縄の文化を受け継ぎながら生活を続けている、そういう場所である。

そして街のあちこちで目にするマジムン除け(魔除け)の「石敢當」の石柱。結構あちこちにいっぱい建っているので何個あるのか探してみてはどうか。沖縄の街中でも、曲がり角やT字路の突き当たりとかによく置いてあるやつです。

高松町内はすぐ一周できる程に狭い範囲でしかないが、ひとまず見た限りでは「普通な感じ」しかしないのが正直な印象であった。同じ沖縄系住民が多い尼崎市戸ノ内町なんかはもっと荒れた感じで、暴力団事務所とか神崎新地といった色々わけの分からんものが入り込んでカオス化しているのに比べると、随分平和である。町内に市営住宅といったものも皆無である。

そんな高松町内に建つ「地域利用施設高松会館」。外観も真新しく綺麗で、高松町及び近隣在住者の公民館的施設と見られるが、沖縄三線の練習会が行われたり、葬儀会場にも使われるなど多目的である。

高松会館の玄関前には誇らしげに鎮座する一対の大きなシーサー像が。2008年に沖縄県から寄贈されたものである。

兎にも角にも共産党支持者が多い土地柄のようです

一方、高松町界隈を歩いていてやたらと目につくのが日本共産党のポスターである。やはり沖縄県出身者はどうしても「左」寄りにならざるを得ない事情もあって、沖縄本島のそれを見ていても共通しているんですが、屋根上にシーサーが乗った写真に「アメリカいいなりもうやめよう」と書かれた沖縄仕様なのもポイントである。

ポスターばかりに限らず日本共産党の渡名喜正勝宝塚市議会議員の看板が置かれているところもある。苗字からしても沖縄にルーツのある議員であるのは明らかで、この地域には同党・同議員の強力な支持基盤がある事を窺わせる。

県道114号沿いにある「高松診療所」も宝塚医療生協が運営している街の診療所となっている。医療生協もまた共産党と関わりの深い組織である事はよく知られている。

さらにその近くには、ゴチャゴチャした建設資材置き場に隣接して同じ宝塚医療生協の運営する訪問看護ステーション(陽だまり会館)もある。

宝塚ウチナータウン唯一の御食事処

宝塚医療生協陽だまり会館の真向かいに店を構える、宝塚市高松町界隈で唯一と言っても差し支えない沖縄料理店があったので昼飯ついでに入る事にした。ちなみに県道114号の東側なので、住所は「宝塚市御所の前町」にあたる。

琉球料理 和食 うめ繁」と古臭い看板がちょこんと置かれただけの質素な佇まいの店だが、色褪せた琉球赤瓦や暖簾のデザインから容赦なく沖縄風味が醸し出されている。これは紛う事なきウチナータウンのガチな沖縄料理店である。

店の玄関のガラスケースにも沖縄感全開のメニューの数々が。ミミガー、ラフテー、ソーキそば、足ティビチ(原文ママ)、ジュシー(原文ママ)、昆布イリチャーなどなど。酒は泡盛とオリオンビールとド鉄板過ぎる品揃え。

ここでソーキそばを食って帰ったが、だしの色が妙に濃かったりして本場沖縄のそれとは随分趣きが違うように感じられた。店のオリジナルでしょうかねこれは。ちなみにこの「うめ繁」という食い物屋、数年前から営業していないらしい。宝塚の知られざるウチナータウンも、時代と共に薄れ行く存在なのであろうか。

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DEEP案内シリーズ管理人。大阪ベイエリアの貧民窟育ち。独自のひん曲がった視点で街歩きを続けております。2008年より上京。関西に留まらず全国、海外に取材対象を薄く広く伸ばして来ました。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。首都圏を中心に飛ぶような売り上げを記録し増刷決定。
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