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篠山市・阿部定が過ごした遊郭跡「京口新地」 (2)

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大阪から車で一時間、北近畿と京阪神との狭間に位置する黒豆とデカンショ節の城下町・丹波篠山の街外れに存在する遊郭跡「京口新地」を訪ね歩いた。ここはかつて有名な阿部定事件の阿部定が住んでいたという因縁深い土地でもある。

県道側から伸びる遊郭跡の路地を奥へ進む。手前に二軒棟続きの妓楼があったが四つ角を越えた先の反対側の角にもう一軒の妓楼。ここがかの阿部定が住み込んでいた娼妓としての最後のお勤め先「大正楼」の建物。遠い昔の話かと思っていたのにこうして建物ってそっくりそのまま残ってるもんなんですね。



遊郭云々詳しく知らなくとも世代を飛び越えて下世話な庶民の耳にも阿部定の名前くらいは聞いた事はあるだろうという程の伝説的な女性である。
22歳の時に芸妓から娼妓に身を落とし、昭和2(1927)年に飛田新地の御園楼に売られ、その後は関西や名古屋の遊郭を転々とした末に昭和7(1932)年に篠山の大正楼に転がり込んできた。この当時「おかる」「育代」の源氏名を名乗っていたそうだ。

京口新地の中でも下等の遊郭だった大正楼では仕事がキツく阿部定はたった半年くらいで逃げ出してしまったそうだ。娼妓としての職歴はそこで終わりその後は東京は中野・新井薬師前の料亭吉田屋に女中として勤めるようになり吉田屋の主人を相手に尾久三業地の待合で例の阿部定事件を起こす顛末となる。

大正楼の建物には現在も生々しく壁の瓢箪柄の飾り窓や玄関上の家紋などが見られ、店が役割を得ていた時代の残り香を強烈に漂わせている。遊郭としての遺構は特に手入れされている訳でもなく放置気味だが、だからと言って取り壊されもしない。

京口新地の範囲は非常に狭く、県道から入って100メートルもしないうちに端っこまで来てしまう。現在はただの生活用水のようだが、まさにかつての廓の外界と中とを隔てるかの如く水路が敷かれている。

振り返ると手前の左側に大正楼、奥の右側に先程の二軒棟続きの妓楼が続いている。他は概ね一軒家ばかりで、遊郭の存在などまるでなかったかのように日常生活が繰り広げられている。

さらに京口新地にはもう一軒豪勢な妓楼が残っている。大正楼の手前の四つ角で折れたあたりにトタンに覆われてはいるがこれまた無駄に重厚でモダンなファサードで飾られた家屋が右手に見える。

ここもまた負けず劣らずのご立派な建物であんぐり。京口新地も一時期は12軒くらい妓楼があったそうなのでこのくらい残っていても不思議ではないのだが、いちいち建物の造りに目を見張る。歩兵第七十連隊の兵隊さん達はそんなに大量にお金を落として行かれたのでしょうか。

相当風化が進んでいるようにも見えるが依然艶めかしさとモダンさを匂わせる妓楼の玄関口。ドアも閉ざされてはいて人が住んでいる訳でもないようだが…

ガラス越しに玄関を見る事が出来た。これは物凄い…和洋折衷を特に意識した作りで正面奥にある階段、その手前には随分ゴージャスそうなカーテンが掛けられているのが見える。せめて京都の橋本遊郭みたいに転業旅館にでも出来なかったのだろうか。

この建物の裏側に回るとすぐ後ろが廓の内外を隔てる水路となる。まさかこんな所に人は住まないと思うが凄まじくオンボロなトタン張りのバラックが妓楼の傍らにある。

妓楼の裏口。遊郭としての役目を終えてからもしばらく民家として余生を送っていたようだが、やっぱり人は住んでいなさそうです。

この京口新地のある辺りは住宅地と言えば住宅地なのだが随分みすぼらしい造りの平屋の公営住宅らしき建物が目立っている。遊郭跡というだけで敬遠される傾向にあるので、その後もそれなりな土地の使われ方がしてきたようで。

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DEEP案内シリーズ管理人。大阪ベイエリアの貧民窟育ち。独自のひん曲がった視点で街歩きを続けております。2008年より上京。関西に留まらず全国、海外に取材対象を薄く広く伸ばして来ました。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。首都圏を中心に飛ぶような売り上げを記録し増刷決定。
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