【大阪ベイエリア負の遺産】海上に浮かぶ謎のガラスドームは総工費176億円…「なにわの海の時空館」

大阪市住之江区

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当記事は2007年以前に制作された「大阪民国ダメポツアー」の記事を移転、さらに加筆されたものです。文章が拙い上に当時の大阪市の行政への不満から毒舌ぶりが際立っていますが何卒ご了承下さい。なお「なにわの海の時空館」は2013年3月10日の営業を最後に閉鎖され、今となっては無用の長物もいいところ、大阪ベイエリア乱開発の負の遺産としての姿を晒しております。

大阪市 住之江区 コスモスクエア

4階は「海がつなぐ世界の文化」と銘打って、大阪港と世界の港との交易の歴史をテーマにした展示物がある。建物が豪華過ぎて呆気にとられるばかりで博物館のコンセプトやら何やらがぼやけてよく分からなくなるが、この辺が辛うじて見ごたえのあるフロアだと思う。

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世界のフィギュアヘッド(船の頭についてるやつ)現物展示、緯度を測ったりする航海器具などの展示、海をテーマにした世界中の豪華な絵画まで飾られていたりして、そこはかとなく旅情を誘う。

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300円払えば体験できるヨットシミュレーターまであるが、もちろんそこで遊んでいる人もいない。建物中央の菱垣廻船を改めて上から見下ろす。でけー。

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この「浪華丸」、時空館に据え付けられる前に、たった一度だけの「処女航海」を行ったことがある。その時の模様はあの菱垣廻船の上に設置されたビデオで見ることが出来るのだが、そこで船としての人生を終えてしまった「浪華丸」に何とも言えぬ物悲しさを感じるのは私だけだろうか。

「浪華丸」復元に費やしたのはおよそ10億円と言われている。一回こっきりのパフォーマンスで10億円。それは役人の自己満足のためだけに使われた金だ。贅沢すぎる。


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他にも、世界の海洋交易の歴史を知ることが出来るコーナーや、世界の四大香辛料を体験してみるコーナーもあって、よりどりみどり、大阪市ゆとりとみどり振興局。

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次は3階「大坂みなとの繁栄」。世界に目を向けた後に、今度は大阪(大坂)の内側から海洋交易の歴史を探っていくわけだ。江戸時代の大坂港をリアルに表現したジオラマ模型が置かれていて、大阪市のシンボルである「澪標」(みおつくし)がその両側に立つ。

江戸時代でも大阪は商業と流通の中心地だった。菱垣廻船は大阪(大坂)に集まってくる国内外からの物資を大阪港から江戸へと物資を運んでいた。

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館内のビデオを鑑賞していくとわかるのだが、今の大阪ベイエリアは、江戸時代から人工島を作りまくっていた、つまり町人をかき集めて干潟をどんどん埋め立てて陸地にして開発していった。港区や此花区、大正区、西成区、住之江区あたりの地名は干拓事業を行った町人の名前が記されている所も多い。

大阪では町中に堀川を掘削したり、治水事業として川浚えを行って出てきた土を干潟の埋め立てに使ってきた。その土で出来た山が「天保山」であるという事もわかる。

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そのように、昔から大阪の町は海へ海へ伸びていったいう事はよくわかったが、それと今の大阪市のおバカなベイエリア乱開発は全く意味が違う。

先人が築き上げた都市の財産を役人どもの勝手で壊し、産廃で埋め立てた無駄な人工島の上に容赦なく建てられた赤字遺産でぐるりと囲まれた、現在の大阪港の姿を見たら、大阪の発展を願い都市を築き上げた往時の開拓者たちの魂も浮かばれない。

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2階は「和船の変遷と菱垣廻船の沿革」。ここからあの「浪華丸」に乗ることができる。追加料金不要だが、乗船者名簿に名前を書いて、ヘルメット着用の上での乗船となる。別に船が動いたりすることもないが、船そのものは物凄く立派である。江戸時代の造船技術そのまんまで作ってるからなぁ。

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ついでに、そんな菱垣廻船をバーチャルで動かしてみようという「バーチャルクルーズ菱垣廻船」(一回300円)というのがあったのだが、なんとこれが廃止されてしまっていた。代わりに、笑福亭仁鶴師匠の声で菱垣廻船を紹介するビデオがエンドレスで流されていた。んー、なんだか末期的。これじゃ四角い仁鶴もまあるく収まるはずもない。

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ちなみにこちらが往時の「バーチャルクルーズ菱垣廻船」。この頃はゲームプレイ中のお子様も居たりしていたが、100円玉を入れる穴まで封じられてしまいご覧の有様。次に来たらプレイしたろかと思っていたら、こんな風になっていたので、残念無念。もうグダグダである。

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「時空館」で遊べるのはまだまだこれだけではない。1階に下りると、さらにご自慢の体験型アトラクションが控えているのだ。

その名も「海の映像館」&「海の冒険館」。テキトーすぎるネーミングにB級スポット感全開。もはやパラダイスである。桂小枝が出てきて「たーすけーてくれぇ~」と叫ばれても何の不思議もない。助けてもらいたい気持ちなのは税金をドブに注ぎ込まれてばかりの大阪市民の方だ。

海の映像館の紹介ビデオがエンドレスで流される。館内スタッフのお姉さんが早回しでしゃべりたくってました。たまらなくB級臭がする。建物の豪華さは超A級なのになあ…

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「激しく動くシート!」の赤文字にそそられます。ラブホテルかここは!バーチャルシアター海の冒険館!中世の大海原にタイムスリップして、荒れる海を見事に激しいシートの揺れで再現しちゃっている乗り物だ。だが、受付の係員は完全に居眠りこいてた。

もう一つの「海の映像館」は、別にシートが動く訳でもないが、3Dメガネをかけて、イタリアの世界遺産・水都ヴェネチアの街を行く船の旅をヴァーチャルで体験できるアトラクションだ。同じ水都だからと言って道頓堀川3Dクルーズの大阪バージョンは存在しないので悪しからず。

どっちも1回400円です。貸切状態なのは間違いありません。まあ、結局体験せずに帰りましたが。

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再び海底トンネルをくぐり受付棟に戻ると、エレベーターを出たところにあるレストランとお土産店はそれぞれ休憩室と展示室になっていた。おそらく食堂にでもするつもりだったのだろうが、置いてあるのは自販機だけで、テーブルと椅子が大量に並んでいた。うーん、なんと無計画な。

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こんなダメポ全開の「なにわの海の時空館」。2013年の閉館後、「浪華丸」はずっとこの場所に置きっぱなしになっているらしく、移設費用に5億円、解体費用に3500円掛かる事が分かり、引受先を探しているものの全く名乗り出る者もおらず、何とも浮かばれない状態である。橋下徹氏や維新に好き嫌いはあるだろうが、橋下以前の大阪市はこんな事をやっていたのである。という訳で皆様、「なにわの海の時空館」の事を忘れないで下さいね。


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